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44 プライド(異国の王太子視点)

「ねぇ、アヴァロンお兄様!あの聖女とやらはどんな様子だっんですの?」


「あらそんなの、王太子であるお兄様に取り入ろうとすり寄ってきたのでしょう?」


「あのみっともない桃毛を見まして?それにあんな短い髪で堂々と人前に出てこれる図太い神経の持ち主ですもの!王太子に近付けるチャンスを逃すまいと必死になるに決まってますわ!」


地下牢からひとり戻ってきた途端、3人の妹をたちが群がるように目の前に現れた。せっかくジーンルディの暗い顔を見れて気分が良かったのに、ゲラゲラと笑い合うその姿に思わずため息が出そうになる。側室が産んだとはいえ可愛い妹たちだが、どうにも王女としての気品がかけている気がした。淑女教育はしてきたはずなのだがな。と、うんざりもする。ハッキリ言えばあの聖女の方が気品があるだろう。


「人の顔を見るなりやかましいな。もう少し静かに出来ないのか」


「あらやだ、お兄様ったらなにをピリピリしてますの?やっと聖女が手に入ったんですから、もっと喜ばなくちゃ!」


「そうですわ、やっとあの出来損ないを始末出来るんですもの。これでラスドレード国は安泰ですわ!」


「あぁ、どんな方法がいいかしら?どうせ聖女が殺してくれるのだからわたくしたちは高みの見物といきましょう!せっかくだからものすごく惨たらしい方法がいいわよね!」


「あんなみっともない桃毛でもわたくしたちの役に立てるんだからきっと喜んでいるでしょうね!」


「それでお兄様、もちろん聖女はあの出来損ないを今すぐ殺してくれるのでしょう?もしかして殺して欲しければすぐにお兄様と結婚させろとか騒ぎましたか?そうだとしたら惨めね~」


「どうせ聖女のお勤め期間が終われば捨てられるのに、みっともない女は必死でしょうね」


「まぁまぁ、あの不吉な出来損ないを始末してくれるんですもの!少しくらいは夢を見させてあげましょうよ~!」


次々と口早に捲し立ててくる妹たち。その口は閉じることはなく、興奮したように聖女に対する悪口を言い合っていた。


それにしても、さっきから「みっともない桃毛」と聖女を馬鹿にしているが、この妹たちは“聖女”の意味を本当に理解しているのだろうか。確かに《《今は》》まだ不気味な桃毛かもしれないが、占星術師が「神聖な髪」と言った以上、これからはラスドレード国ではあの桃色の髪は平民たちの羨望の的になるだろう。この国での占星術師の言葉は絶対だ。その「神聖な髪」を持つ聖女を馬鹿にしたなんて誰かに聞かれたらそれこそ王族であれ罰せらてしまうだろうに。


「……残念だが、聖女は僕に興味がないようだ」


「「「?!」」」


僕が肩を竦めてそう言うと、驚きのあまり言葉を失ったのか妹たちがやっと静かになった。困惑の表情が3つ並ぶが、どうやら僕との結婚を餌にして聖女を操る算段だったようだ。だが、それは僕も同じだった。


僕にあんな態度をとった女は初めてだ。その行為がどれほど愚かな事だったかは、思い知らさせてやらねばなるまい。それに傲慢だからこそ心を折ってやるのも楽しそうだとも思っていたのだ。


「安心しろ、妹たちよ。すでに宰相には伝えてあるが、三日後、出来損ないの処刑と共に聖女と王太子()の結婚式を行おうと考えている」


「まぁ、お兄様!なにをなさる気なの?さっき、聖女はお兄様に興味ないって……」


さっき見た聖女の姿が脳裏に浮かぶ。


力強い瞳と余裕にも見える微笑み。髪の色や長さなど関係ない、まさしく聖女そのものの姿に一瞬だが僕が見惚れてしまったのだ。だからこそ王族に取り込んでやろうとしたのに、まるで僕など眼中にないようなあんな態度など許されるはずがないじゃないか。


それに聖女を妻に娶れば国民からの支持も上がり、ラスドレード国はさらに発展を遂げるだろう。


────なによりも、僕にあのような態度をとったことを後悔させて泣かせてやりたい。無理矢理にでも関係を結んでしまえば、後は洗脳でも調教でもしてやればなんとでもなるだろう。


「なぁに、聖女はなにか誤解しているようだったから、少し《《話し合い》》をするだけさ。そうすればお前達の言う通り、すぐにでも聖女の方から僕に娶ってくださいと懇願してくるだろうさ」


泣いて謝って、僕の許しを請うためにあの出来損ないを殺させてくれと嘆願する聖女の姿が目に浮かんだ。


残念だな、聖女よ。せっかく優しく接してやろうと思っていたのに、この僕にあんな態度をとったせいで自分の運命が変わってしまったのだ。僕に興味を持たずに、あんな出来損ないなんかに会いたいなどと言った事を後悔するがいい……!



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