第2話 ー 封じられた本
ハルトは新しい部屋に足を踏み入れ、目を輝かせた。
何世代もの間、誰も入ったことがないはずの場所――その事実が彼をさらに興奮させる。
一方、ダイチはまだ状況を理解していなかった。
彼の頭の中は、階段を上ってくるユノの足音でいっぱいだった。
扉の隙間から覗き込み、冷や汗を流しながら震えている。
ハルトが声を上げて笑った瞬間、ダイチは慌ててその口を塞いだ。
「静かにしろってば!」
廊下にいたユノは、三階の扉がすべて鍵で閉ざされていることを知っていた。
だが、奥の扉の下から影が揺れるのを見てしまい、顔を青ざめさせて叫びながら逃げ出した。
「ダイチーー! 静かにしろって言ったでしょう! もう許さないからね! 家に帰りなさい、あとでしっかり叱るから!」
ダイチは肩を震わせ、歯をガチガチ鳴らしながらハルトを揺さぶった。
「ど、どうしようハルト! ユノさんが僕の母さんに言ったら、絶対にお仕置きされる!」
ハルトはその必死な声を無視し、部屋の中を見回した。
「気にするなよ。母さんはすぐ忘れるって。見ろよダイチ、この埃まみれの古いものたち。
何年ここに置かれてると思う? 絶対に秘密が隠されてるはずだ。」
ダイチは恐怖と興奮の入り混じった顔で辺りを見渡した。
「ハ、ハルト……ここって、おじいさんが言ってた“扉の下に影が見える部屋”じゃないのか?
早く出ようよ! 幽霊に捕まるぞ!」
後ずさりしながら逃げようとしたダイチは、突然大きな甲冑の像にぶつかった。
金属の冷たさに息を呑み、叫びかけた瞬間、ハルトが再び口を塞ぐ。
「ダイチ、もうやめろ! また大声出したら、母さんに絶対忘れられなくなるぞ!」
ハルトは彼を放し、埃の匂い漂う部屋を歩き回った。
古びた本棚、床に散らばる破れた紙。
そして机の上には、傷跡だらけの表紙を持つ一冊の本が置かれていた。
「……これは……」
ハルトの目が釘付けになる。
ダイチも近づいたが、背筋に寒気を覚えた。
「ハ、ハルト……触らない方がいいと思う。」
その言葉に逆に駆り立てられ、ハルトは慎重に本を開いた。
最初のページは印刷ではなく、手書きの文字だった。
『ページの中には秘密が眠る。物語は生きている。
悪役も、英雄も、すべて現実に存在する……』
その下には、慌てて書き殴られたような文字が続いていた。
『捨てろ……燃やせ……破壊しろ……!
悪は再び解き放たれる……勝てる望みは、もうない……!』
ダイチは慌てて本を閉じ、震える声で叫んだ。
「や、やめようハルト! この本はなかったことにしよう! 読んだだろ、危険だって!」
しかしハルトは怒りを込めて本を奪い返した。
「読んださ。でももっと知りたいんだ。
何十年も誰にも触れられず、ここに眠っていたんだぞ!」
ダイチは歯を鳴らしながら答えた。
「き、きっと理由があるんだ……。僕は知りたくない……。
もし本から幽霊が出てきたらどうするんだ……!」




