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九十九の輝き —バーチャルと妖怪が交わる、魂の共鳴—

作者: 星空モチ

東京の雑踏が煌めく夜、九十九つくもハルカの部屋だけが異質な静寂に包まれていた。窓際に座り、どこか遠くを見つめる17歳の瞳には、誰にも見えないものが映っている。


「また、来てるんだ…」


ハルカは小さくつぶやくと、カーテンを引いた。部屋の隅に佇む影のような存在は、彼女にしか見えない「お客さん」だった。


生まれた時から、ハルカには「見えてしまう力」があった。人の目には映らない霊的な存在が、彼女の周りにはいつも集まってくる。


「九十九さんってさぁ、また独りで帰るの?気持ち悪いよね〜」


教室の片隅で聞こえてくる陰口。「霊感少女」「幽霊と話す変な子」というレッテルは、小学生の頃から変わらない。


唯一の逃げ場は、オンラインゲームの世界だった。現実では孤独なハルカだが、バーチャル空間では「ツクヨミ」という名のプレイヤーとして、心を解放できた。


特に熱中していたのは、「イノチノカゲロウ」というeスポーツ。キャラクターを操作して戦うこのゲームで、ハルカは不思議な才能を発揮していた。


「何かが…私を呼んでる」


あの日、ハルカはゲーム内のショップで古びた木製の櫛を見つけた。データ上は単なる「レア装備」だったが、画面越しに彼女の心を掴んで離さない何かがあった。


「このアバターアイテム…バグってるんじゃないの?」チャットで他のプレイヤーが言う。確かに、その櫛は時々画面上で勝手に動き、予期せぬエフェクトを放っていた。


「わたしは…櫛の九十九神。百年の時を超えて、あなたを待っていた」


画面から聞こえた声に、ハルカは驚愕した。しかし、霊感の持ち主である彼女には理解できた。これは単なるゲームのバグではなく、本物の九十九神が宿った櫛だということを。


九十九神—道具に百年の時が流れると魂が宿るとされる存在。忘れ去られた日本の古い信仰の一つ。この櫛の九十九神は、「コモリ」と名乗った。


「あなたにしか見えない世界、感じられない存在。それを恐れず、受け入れる心があるから、わたしはあなたを選んだの」


初めて、ハルカの「異質さ」を否定せず、むしろ価値あるものとして認めてくれる存在に出会った瞬間だった。


「君とコモリのコンビ、最近急に強くなったよね」チームメイトが不思議そうに言う。


確かに、ハルカとコモリの絆が深まるにつれ、通常ありえない動きやスキルの発動が可能になっていった。普通のプレイヤーには単なるラッキーバグに見えるが、実はハルカの霊感とコモリの力が融合した結果だった。


そして今日、彼女は「イノチノカゲロウ」高校生大会の予選に進出していた。会場に足を踏み入れた瞬間、ハルカは凍りついた。


選手席に座る他のプレイヤーたちの背後に、様々な形の影が見える。人ではない何か—鬼、天狗、河童…日本の妖怪たちが、プレイヤーに寄り添うように存在していた。


「これが…eスポーツの真実?」


震える手でコントローラーを握りしめるハルカ。コモリの声が心に響く。


「怖くないよ、ハルカ。あなたは一人じゃない。わたしたちの絆は、どんな強大な妖怪よりも純粋で、だからこそ強いの」


対戦相手の少年が不敵な笑みを浮かべる。彼の背後には巨大な鬼の影。画面上のバトルが始まると同時に、ハルカの脳裏で別の戦いの予感が走った。


これは単なるゲームではない—人間とともに生きる古の存在たちの、魂をかけたバトルだった。


「コモリ…一緒に戦おう」


ハルカは初めて、自分の異質さを武器に変える決意をした。これが、九十九ハルカと櫛の九十九神・コモリの物語の始まりだった。


挿絵(By みてみん)


会場のモニターに「BATTLE START」の文字が煌めき、ハルカの指先がコントローラーを躍らせる。対戦相手の鬼を宿したプレイヤー「アカオニ」は、ランキング上位の実力者だった。


「くっ…速い!」


画面上のキャラクターが赤い閃光に包まれ、ハルカのアバターは一瞬で体力を半分削られる。観客から歓声が上がった。


「どうだ?オレの背後にいる鬼の力、感じるか?ただのゲームじゃねぇんだよ、これは」


相手の声がヘッドセットから聞こえる。冷笑を浮かべる彼の背後に、ハルカには鬼の赤い姿がはっきり見えていた。


しかし、ハルカの手は止まらない。コモリとの絆が生み出す、予測不能な動きで反撃を開始する。彼女の指先から、淡い青い光が漏れ出していた。


「わたしの力を、あなたに」


コモリの声が心に響く。その瞬間、ハルカの視界が変容した。画面の向こう側—デジタルの奥に広がる霊的な次元が見えた。


そこでは、キャラクターたちの背後に妖怪たちの本当の姿が闘っていた。コモリは櫛から美しい少女の姿に変わり、赤鬼と対峙している。


「な…何だ?お前のアバター、システム上存在しない動きをしている!」


相手が動揺の声を上げる。確かに、ハルカのキャラクターは、ゲームの物理演算を超えた動きで赤鬼の攻撃をかわしていた。


「力じゃない…大切なのは心の絆だよ」


ハルカの声は静かだったが、確かな意志が宿っていた。百年の孤独を経て彼女と出会ったコモリの思いが、彼女の霊感と共鳴し増幅していく。


コントローラーから放たれる光が強まり、モニターの映像がわずかに歪んだ。それは現実とバーチャルの境界が曖昧になる瞬間だった。


「これが…九十九神の真の力?」


観客席から誰かが驚きの声を上げる。ハルカのキャラクターの周りに、現実の彼女には見えているコモリの姿が、幽かに他の人の目にも映り始めていた。


「終わりだ!」


アカオニの必殺技が放たれる。画面が赤く染まり、会場が湧く。だが—


「まだ…終わらない!」


ハルカとコモリの声が重なった。櫛から放たれた光の帯が、赤鬼の攻撃を包み込み、反転させる。理論上ありえない逆転が起きた瞬間だった。


「WINNER: ツクヨミ」


会場が静まり返る。予選最下位からの予想外の勝利。しかし、ハルカには分かっていた。これはただの予選突破ではなく、彼女とコモリにとっての真の戦いの始まりだということを。


「これからどうなるの?」と、震える手でコントローラーを置きながらハルカは心の中でコモリに問いかけた。


「わたしたちの物語は、まだ始まったばかり…eスポーツの世界に潜む妖怪たちの真実、そして、あなたが生まれ持った力の意味を、一緒に探していこう」


舞台裏で、謎の人影がハルカを見つめていた。唇の端を上げ、「いよいよ見つけたか…九十九神と共鳴できる能力者を」と呟く。新たな試練が、彼女を待ち受けていた。





予選突破から一夜明け、準決勝の会場はさらに熱気に包まれていた。大型スクリーンに「ツクヨミ VS ミズチヒメ」の文字が躍る。


対戦相手は、水の精霊を宿した「ミズチヒメ」—全国大会常連の実力者だ。彼女の周りには青く揺らめく霊気が漂っていた。


「あの子、ただ者じゃない…」


ハルカの背筋に冷たい感覚が走る。コモリも緊張している気配だった。


試合開始と同時に、ミズチヒメの猛攻が始まった。画面上のキャラクターから溢れ出す水のエフェクトは、単なるグラフィックではなく、現実の霊的な力を帯びていた。


「くっ…息ができない!」


バーチャル空間での攻撃が、現実のハルカの呼吸を奪っていく。見えない水の力が彼女の霊体を締め付けていた。


画面上の体力ゲージが急速に減少していく。会場からはため息が漏れる。


「どうした?昨日の調子はどこへ行った?」ミズチヒメが冷たく微笑む。彼女の背後に渦巻く水の精霊が、勝利を確信しているかのように揺らめいていた。


コモリの声が遠くなっていく。「ハル…カ…」


霊的な繋がりが水の力で阻まれ、ハルカとコモリの絆が希薄になっていく恐怖。画面上のキャラクターの動きが鈍り、残り体力が10%を切った。


「ダメだ…溺れる…」


現実と仮想が溶け合う感覚の中、ハルカの意識が朦朧としてきた。全身が冷たい水に沈んでいくような感覚。


その時、過去の記憶が脳裏に浮かぶ。幼い頃、川で溺れかけた彼女を救った祖母の手。「ハルカ、あなたの名前は『春の香り』。冬が終わり、新しい命が芽吹く季節の名前よ」


「そうだ…私は…」


ハルカの胸の内で、何かが目覚める。祖母から受け継いだ霊力、そしてコモリへの純粋な想い。


「コモリ!私はここにいる!」


全身の力を振り絞った叫びが、水の結界を突き破る。その瞬間、彼女のコントローラーから桜色の光が溢れ出した。


画面上のキャラクターが変容する。コモリの力を全身に宿し、桜の花弁のようなエフェクトを纏ったアバターに。会場から驚きの声が上がる。


「これは…予測されていなかった進化形態!?」解説者が興奮気味に叫ぶ。


ミズチヒメの表情が凍りつく。「あり得ない…アイテムの九十九神が、こんな力を…」


「コモリ、行くよ!」


息を合わせて繰り出す連続技。櫛の力で水を切り裂き、精霊の攻撃を跳ね返していく。逆転の狼煙が上がった。


「櫛風・百花繚乱!」


ハルカとコモリの声が重なり、画面上のキャラクターが最後の一撃を放つ。桜吹雪のような光の渦が相手を包み込み、ミズチヒメの体力ゲージがゼロになった。


「WINNER: ツクヨミ」


信じられない逆転勝利に会場が沸き立つ。ハルカは深く息を吐き、震える手でコントローラーを握りしめた。


「やったね、ハルカ。私たちの絆が、この勝利を生んだんだよ」コモリの優しい声が心に響く。


舞台袖では、謎の男が冷ややかな目でハルカを観察していた。「面白い…決勝では、本物の恐怖を見せてやろう」


明日の決勝戦。さらなる強敵と、そして謎の男の正体が、ハルカを待ち受けていた。





決勝戦前夜、ホテルの一室でハルカは窓際に座り、星空を見上げていた。コモリの櫛を静かに撫でる指先に、微かな光が宿る。


「明日の相手は…誰になるんだろう」


準決勝の別ブロックでは、謎の選手「オロチ」が圧倒的な強さを見せていた。彼の周りには不吉な黒い霧が渦巻いているのを、ハルカだけが見ていた。


「ハルカ、気をつけて。あの選手には、ただの妖怪ではない何かが宿っている」


コモリの声には珍しい緊張感が漂っていた。「古い時代から、禁忌とされてきた存在…」


その時、スマホに知らない番号から着信が入る。恐る恐る出ると、意外な声が響いた。


「九十九ハルカさん?私、準決勝で負けたミズチヒメこと水野千尋です。明日の決勝前に、どうしても伝えたいことがあって…」


深夜の公園。風が冷たく頬を撫でる。ベンチに座る水野千尋—ミズチヒメの素顔は、思ったより普通の女子高生だった。


「私の水の精霊は、ずっと私の家系に伝わる守護霊なの。でも、オロチは違う…彼は『憑霊商人』と呼ばれる組織と契約して、強大な妖怪を利用しているの」


彼女の話によれば、eスポーツの舞台裏では、妖怪や霊的存在の力を競技に利用する秘密の世界があるという。多くのトッププレイヤーは、その力を借りていた。


「でも、ハルカさんとコモリさんの関係は特別。純粋な絆で結ばれた九十九神の力は、彼らにとって脅威なんだ。だから…明日は本気で潰しにくるわ」


夜明け前、ホテルへ戻る道すがら、ハルカは空を仰いだ。「コモリ、私たちは間違ってない…よね?」


「ハルカが感じることを信じて。わたしたちの絆は、誰にも壊せない」


決勝戦当日。会場は満員の観客で埋め尽くされていた。大型スクリーンには「GRAND FINAL: ツクヨミ VS オロチ」の文字。


対戦相手のオロチは、無表情な少年だった。だが、その背後にハルカが見たものは、恐ろしい八つの頭を持つ巨大な影。古来より伝わる大蛇の妖怪「ヤマタノオロチ」の姿だった。


「あんな強大な存在と戦えるの…?」


不安が胸をよぎるが、決意の表情でコントローラーを握る。


試合開始と同時に、オロチの猛攻が始まった。八つの技を同時に操るような、常識外れの動きにハルカは押され気味になる。


「弱い…あまりに弱い。お前のような自然発生の絆なんて、計算され尽くした我々の力の前では無力だ」


オロチの冷たい声がヘッドセットから聞こえる。画面上のキャラクターが複数の攻撃に押され、ハルカの体力ゲージが急速に減っていく。


しかし、ハルカは諦めなかった。「コモリ、みんなの前で、私たちの本当の力を見せよう!」


櫛から放たれる光が、会場全体を包み込み始めた。観客たちも、霊的な光景が見えるようになってきている。


「行くよ、私たちの…最後の力!」


コモリの姿が、櫛から飛び出し、ハルカの背後に美しい少女の姿で現れた。現実とゲームの境界が完全に溶け合う、決戦の瞬間が訪れようとしていた。


挿絵(By みてみん)


会場を震わせるような歓声の中、ハルカとオロチの決戦が本格化していた。スクリーン上のバトルと、目に見えない霊的次元での戦いが同時に進行している。


「無駄だ」オロチの冷酷な声が響く。「九十九神など、所詮は道具の魂。我が背にあるヤマタノオロチは神をも恐れさせた存在だ!」


八つの頭を持つ大蛇の影が、コモリを取り囲む。霊的な空間では、オロチの背後に立つ巨大な黒い蛇が、美しい少女の姿のコモリを飲み込もうとしていた。


「くっ…!」


突然の痛みにハルカが顔を歪める。オロチの攻撃はもはやゲーム内に留まらず、彼女の精神そのものを蝕んでいた。体力ゲージは残り20%を切り、会場からはため息が漏れる。


客席の中に、あの謎の男の姿。スーツに身を包み、冷ややかな笑みを浮かべている。「憑霊商人」の首領だ。彼の指示に従い、オロチは最後の一撃を放とうとしていた。


「これで終わりだ、ツクヨミ」


画面上では、オロチのキャラクターが究極技を発動。八つの頭を持つ蛇のようなエフェクトが、ハルカのアバターに襲いかかる。


その瞬間、時が止まったかのような感覚。ハルカの脳裏に、走馬灯のように記憶が駆け巡る。


幼い頃、おばあちゃんに聞いた言葉。

「ハルカね、あなたの霊感は呪いじゃない。見えるということは、繋がれるということ。大切なのは、その絆をどう育むか」


学校で孤立していた日々。eスポーツという逃避先で見つけた居場所。そして、コモリとの出会い。


「そうだ…私の力は…」


ハルカの目に決意の光が宿る。彼女は息を深く吸い込み、全身の霊感を解放した。


「コモリ!みんなの心も借りるよ!」


彼女の声が響いた瞬間、驚くべきことが起きた。会場の観客たちが持つスマートフォンやデバイスから、微かな光が溢れ出し始めた。


「何だこれは…?」憑霊商人の男が動揺の表情を見せる。


ハルカには見えていた。人々の道具にも、微かながら九十九神の魂が宿り始めていたのだ。現代の電子機器たちが、コモリに共鳴して力を貸そうとしていた。


「道具を使い捨てにする時代だからこそ、大切にされる心がある」ハルカの言葉が、会場中に響き渡る。「九十九神は、そんな想いの結晶なんだ!」


画面上のキャラクターが変容する。コモリの姿が、千の道具の霊気を纏って輝き始めた。スマートフォン、ゲーム機、イヤホン—現代の「九十九」たちの力が一つになる。


「ありえない…計算外だ…!」オロチの焦りの声。


「行くよ、コモリ!九十九の奇跡!」


ハルカとコモリの渾身の一撃が、八岐大蛇の影を打ち砕く。画面上では光の嵐が相手のキャラクターを包み込み、体力ゲージがゼロに向かって急降下していった。


「WINNER: ツクヨミ」


会場が割れんばかりの歓声に包まれる。奇跡の逆転勝利。オロチ役の少年は呆然と立ちすくみ、やがて彼の背後の黒い影が消え去った。


試合後、ハルカは憑霊商人の男と向き合っていた。


「なぜ、eスポーツを妖怪バトルの場に?」


男は苦い笑みを浮かべる。「デジタル化が進む世界で、忘れられていく古の存在たち。彼らに新たな居場所を与えたかったんだよ。だが、方法を間違えた」


男の姿は風のように消えた。そして数日後、「イノチノカゲロウ」のシステムアップデートが発表された。公式に「九十九神モード」が追加され、プレイヤーと道具の絆を育むことで特別な力が発揮できるようになったのだ。


ハルカの部屋。窓から差し込む夕日に照らされながら、彼女はコモリの櫛を優しく撫でていた。


「これからどうするの?」コモリが問いかける。


「一緒に行こう、新しい世界へ。eスポーツの頂点を目指しながら、九十九神と人間の絆を世界中に広げよう」


ハルカの周りには、もはや怯えるべき"お客さん"ではなく、様々な道具の九十九神たちが集まり始めていた。彼女の部屋は、かつてない温かい光に満ちていた。


窓の外では、デジタルと霊的なものが交差する新しい時代の幕開けを告げるかのように、満月が輝いていた。


異質な自分を恐れていた少女は、今や自らの力を誇りに思えるようになっていた。そして、忘れられかけていた古の存在たちに、現代という新たな居場所を与えていた。


九十九ハルカと櫛の九十九神・コモリの物語は、まだ始まったばかり。彼女たちの前には、無限の可能性が広がっていた—デジタルと霊的なものが交わる、新しい絆の世界が。


挿絵(By みてみん)

あとがき 〜デジタルと妖怪の境界線で〜


みなさん、「九十九の輝き」を最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます! この物語は私の中で長い間温めてきた「eスポーツ」と「日本の妖怪文化」という二つの大好きな要素をブレンドした作品です。


ハルカとコモリの絆の物語を書きながら、私自身もまるでゲームの世界に入り込んだような没入感を味わいました。eスポーツの魅力って、ただ画面の向こうで起きている戦いではなく、プレイヤーの魂が宿る場所だと思うんです。キーボードを叩く指先、集中する瞳、緊張と興奮が混ざり合う心拍—これって、まるで現代の「憑依」のようではありませんか?


私が妖怪、特に九十九神に魅了されたのは、「モノを大切にする心」という日本古来の価値観があるからです。使い捨て文化が進む現代だからこそ、長く使った道具に魂が宿るという考え方に、なんとも言えない郷愁と憧れを感じます。コントローラーやスマホにも、いつか魂が宿るんじゃないかな〜なんて考えたり。(でも、毎年新型に買い替えてたら無理かも…。)


執筆中、最も苦労したのはeスポーツのバトルシーンです。実際のゲーム展開をリアルに描きつつ、霊的な異空間での戦いを織り交ぜる表現は、何度も書き直しました。 「デジタルなのに霊的」という矛盾を魅力に変えるため、自分自身もプレイ中に「ゾーン」に入った経験を思い出しながら書きました。あの不思議な集中状態って、ある種の「憑依」に近いですよね?


ハルカの孤独と成長は、実は私自身の経験も少し投影されています。私もゲームを通じて大切な仲間と出会い、自分の居場所を見つけました。「異質な自分」を肯定できる場所としてのゲーム世界—それがeスポーツの持つ素晴らしい可能性だと信じています。


ここだけの話、オロチ戦のクライマックスは締切日前夜に一気に書き上げたんです! 眠気と闘いながら、まるで自分が憑依されたかのようにキーボードを打ち続けた夜…翌朝読み返すと「これ、本当に自分が書いたの?」と驚くほどでした。きっとコモリが手伝ってくれたのかもしれません。


もし皆さんの身の回りの大切な道具があれば、今日からちょっと違った目で見てみてください。スマホやキーボード、お気に入りのマウスやヘッドセット—彼らも少しずつ魂を宿しているかもしれませんよ。そして、オンラインでプレイする時、画面の向こうにいるのは単なるアバターじゃなく、魂を込めたプレイヤーたち。その繋がりの神秘と温かさを、これからも大切にしていきたいですね。


次回作もどうぞお楽しみに! 皆さんからのコメント、いつも元気をもらってます。ハルカとコモリのその後の物語も、いつか書けたらいいなと思っています。それでは、またデジタルの海でお会いしましょう!

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