94 『マザーシップ』の中
地獄・マジーシップ入場口前
眼前に広がる悪魔の海と『マザーシップ』。これにはエクサーも目をまん丸にした。
「ほぇぇぇぇ〜〜〜。」
一通り驚きに浸ったエクサーは大半の視線がエクサーの方に向いていることに気づいた。一旦、なぜか考えたが、結論はすぐに出た。エクサーたちの乗って来た馬車が明らかに他の物よりも目立っていたからだ。それに気づいたエクサーは少し恥ずかしくなっていた。
「エクサー。どうしたの?」
「いや…すごい見られてるから。」
「少し気張っていけばいいのよ。ほら行きましょ!」
フォルテに押され、エクサーは皆が向かって行っている入り口へ向かって行こうとした。
「2人とも。」
そんな2人をA2は呼び止めた。
「ん?」
「そこはそっちは一般入り口だよ。私たちは少し向こうのゲートだ。」
どうやら、ここにいる悪魔達の向かっているのは一般入り口で、エクサー達は別の入り口らしい。
「ついて来なさい。」
「「は〜い。」」
エクサーは首の無い馬をご苦労様と撫でると、3人は悪魔達を掻き分け、奥へ進んで行った。
「おい、あれA2じゃないか?」
「ほんとだ。」
「怖ぇぇ。」
A2を先頭に進んで行くエクサー。その耳にはヒソヒソ声で自分達の会話が聞こえてきた。A2が進む方向にいる悪魔はA2と目を合わせないように道を開けていた。この場に来れる悪魔達でありながらA2は恐怖の対象として見られていたのだった。
さらには、その後ろに少年がいること、その後ろにまぁ美人のメイドがいることが注目をさらに集める要因であった。いつも一緒にいるので完全に忘れていたが、ピアノとフォルテは結構な美人であり、一緒に買い物にいけば周り目を引いていた。慣れ過ぎて完全にエクサーは忘れていた。
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悪魔を掻き分け進んで行くと、次第に人数は減って行き、その代わり異様なオーラを纏う悪魔達が現れた。エクサーがパッと見た感じ、全員が生きることに対し尋常ではない余裕を持っているように見えた。
A2はその大半と、A2と顔見知りのようで、入り口に向かう途中、軽い挨拶を交わしたり、少し話をしたりしていた。こうやって見ると、人間と違って様々な特徴を持つ悪魔達がいることをエクサーは改めて知った。
そして、ついに3人は『マザーシップ』の入り口についた。大柄のガードマンが確認を行うと思いきや特にそんな事はなく、A2の顔を見るや否やすぐに通してもらった。演出なのか少しの蝋燭の光で照らされた廊下を進んでいく3人。先にとても明るい光が現れ、その光を進むと、眩い光で溢れかえった場所が現れた。
3人のいる場所は、他よりも高い場所にあり、下を見下ろすと、下ではパレードが行われていてそこには一般悪魔達がそれを見るために群がっていた。
「ほぇぇぇぇ、すっご!」
「ハハハハ。少し眩しいほどだね。」
「でもA2。すごい不思議だね。」
「ん?何か感じるかい?」
「いや、だってこんな大きな部屋があるのに、さらに遊園地とか色々な場所があるんでしょ?さっき外から船を見たけど、全部が入るようには到底思えないんだ。」
「ハハハハ。いい疑問だ。素晴らしい。これは『結界術』と構築魔法の合わせだろう。この規模感だからもちろん1人でやっているわけでは無いが。よーく感覚を研ぎ澄ませてみるとなんとなく『結界術』の魔力を感じるはずだよ。」
「ほんとだ!」
「という事で、2人とも。荷物を預かるよ。私が持って行くよ。」
「いいの?」
「まぁ、厳密に言うと私ではなく、使用人達だが。一応手荷物検査のようなものがあるんだ。」
「わかった。」
「2人は色々見てくるといい。」
「「は〜い。」」
「それとこれを。」
A2は2人に粉のようなものをふりかけた。
「何したの?」
「私の魔力を粉にして体につけた。これで2人に何かあれば気づけるし、何より一般かそうで無いかを他に判断してもらえる。私たちは、特別枠のようなものだからね。」
「ふ〜〜ん。」
「とりあえず、楽しんできなさい。」
「フォルテ、パレードに行こう。」
「いいわよぉ。」
エクサーとフォルテはとりあえず下のパレードを見に行くことにした。
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地獄・遊園地エリア
「やふーー!」
楽しむフォルテ。
「ほぁぁぁぁぁ!」
叫ぶエクサー。
2人はパレードを見終わると遊園地エリアに来ていた。最高速度200kmと書かれたジェットコースターの看板に目を光らせたフォルテはエクサー手を無理矢理引いて、乗った。
「はぁ、はぁ。」
「楽しかったーー。」
フォルテはすごくご満悦のようだった。他にもありとあらゆる乗り物があるがあるのでフォルテはいろんな物に乗る気満々だった。
いきなりの絶叫ですでに疲労困憊のエクサー。飲み物が欲しくなったので飲み物を買いに行った。
直感で選んだ店を選んだエクサーは店の前に立った。初めての飲み物ばかりが並んでいて、何にしようかと長考していた。
「う〜〜ん。」
種類が多いが故に悩むエクサー。まぁまぁ長いこと悩むエクサーはそれなりに周りから目立っていた。そんなエクサーの後ろを通り過ぎる1人の少女とその母親。少女はエクサーの後ろ姿に気づくと、はっとした顔をしてエクサーの方に向かっていった。
「う〜〜ん。」
「オススメはこれです。」
少女は後ろからエクサーにオススメを教えた。
「あっ、ありがとうございまs……ん?」
すごく聞いたことのある声。エクサーは勢いよく振り返ると、そこにいたのはクーだった。
ーー終ーー