92 嫌な予感
地獄・ペペル
「ってことで、何かお土産欲しい?」
エクサーは学校の帰りの足でペペルを訪れていた。もちろん、ペペルに用があるといえば、サンドウィッチとセルベロ達。
「いきなりだね、エクサー。」
「ほんとだな。」
店の閉店後。大きく成長したレストランの中で、エクサーは成長した元『ベレノ』の4人と机を囲んでいた。
「そうねぇ、何か置物をお願いしようかしら、レストランの玄関に置くような。」
「確かに。少し寂しい気がするね。」
「置物かぁ、センスあるかなぁ。」
「まぁ、変な物でも飾れば様になる。」
「そうだね。」
すると、レストランの店主の奥さんがサンドウィッチを持って店の奥から出てきた。少しシワが増えたように見える奥さんだったが、前とは変わらず確かな優しさは健在していた。
「どうぞ〜。」
「ありがとうございます。うん!美味い!」
サンドウィッチが届くや否やすぐに口に運ぶエクサー。店が大きくなろうとも味は一切落とすことない一品。思考の瞬間をエクサーは堪能した。
「そういえばセルベロ。体調はどんな感じ?」
「体調?どうなんだろうか。どんな感じオレッチオ?」
「安定はしている。エクサーとの戦いで一回、魔力切れと毒切れを体が体験したおかげで、それ以前に比べて安定している。でもいつ侵食が早まるかはわかんないって感じ。」
「まぁ、元気ではあるからね。」
「そうなんだ。」
セルベロは、机に置かれたコーヒーを一口飲んだ。
「でも、エクサー。その『マザーシップ』気をつけたほうがいい気がするよ。」
「やっぱり、セルベロもそう思う?」
「ってことは、エクサーも何かを感じているんだね。」
「うん…なんか、ムズムズするというかなんていうか。」
「数日前に感じた圧倒的な気配。誰の気配かはまったくわからないけど、この『マザーシップ』という大きな話題がある時、タイミングが噛み合っているような感じがする。」
「だよねぇ、準備万端で行かなきゃ。」
「まぁ、楽しんでこい。」
「うん!」
エクサーと4人は仲良く談笑を楽しむと、楽しい時を過ごした。
ーーーーー
地獄・???
男は崖に座り、肉を食べていた。
今日の天気は曇り。周囲は薄暗く、湿気を含んだ少し生暖かく、優しく吹く風に男は靡いていた。
「久しぶりに上がってきたが、奈落に比べればマシな空気をしてたんだな。」
手に持った肉を全て食べ終わると、男は立ち上がった。
「天よ。待っていろ。『王』の帰還もそろそろだ。」
この瞬間、雲に隠れていた月が姿を見せた。まるで、男の発言に天が言葉を返したように。
ーー終ーー