91 ボーパロット
地獄・最終監獄
「『サタンの頭部』。第2次天満戦争、唯一にして最大の戦果。まさかそれを見せてくるとは。」
「だから問題が多発すると見越して、お前に話を持ちかけたんだろう。」
「お目にかかれるチャンスが公表されていないとは言え、火のないところに煙は立たない。十中八九確定事項と言えるな。」
「はっきり言って、ここ数十年、ボーパロットの権力の衰えが感じられた。だからここで『マザーシップ』を開催し、それが開催できるだけの資金力と権力があると知らしめ、存在感を放ちたいという腹の中だろう。」
「さらに、『サタンの頭部』をサプライズで公開することで効果を上乗せと。…なんとなくわかった。」
「まぁ、めんどくさくなることは確定事項みたいなものだ。子供と久しぶりに会えるんだろ?」
「…そうだ。…そうだな。依頼も職務も真っ当する。そして、パパの強さを教える。」
「お…おう。楽しめるところはしっかり楽しんでこい。」
「そうさせてもらう。」
すると、ログロードに誰かから連絡があった。
「はい…はい…わかりました。F,D様、S,B様が『早く帰ってきて』とおっしゃっております。」
「やれやれ、わかった。では、これでお暇させてもらう。楽しんでこい、バーナボー。」
「あぁ。じゃあな。」
「ログロードもすまないな。」
「問題ありません。引き続き職務に努めます。」
F,Dは、足早に部屋を後にした。
ーーーーー
地獄・マザーシップ機内
『マザーシップ』ボーパロットが数十年にかけて作り上げた超巨大な空中船。船とは言ったもののその大きさは小さめの島ぐらいの大きさと広さがあり、娯楽施設や商業施設など様々な施設が建設されていた。この規模はある意味、街として認識されてもおかしくなく、それどころか一定の街よりもよっぽど街だった。
「へいへいへい!準備は順調かな?」
マザーシップ中央に高くそびえ建つ司令本部。その司令部の屋上に位置する『英雄室』と名付けられた超一級の部屋の中。ジャグシーやバーなど望む物が全てある部屋の中でフカフカのソファに寝転がっている悪魔がいた。
この悪魔こそボーパロットだった。宝石が至る所に装飾されたギラギラの服に身を包み、チャラチャラした少しだけ小太りの悪魔。その容姿はまさに『金の権化』のような悪魔だった。
「順調でございます。」
「ハハハハ!予定通りかぁ!素晴らしいぞ!」
ボーパロットは手を軽く叩き、即座にお付きの部下の1人が、ワインの入ったグラスをボーパロットの手に置いた。
「まったく楽しみだ!」
ボーパロットはワインを一口。
「だが…この中にサプライズであったはずの『サタンの頭部』の公開をリークしたものがいる。」
ボーパロットのテンションは180°回転すると、唸るような低い声で話を始めた。これと共にボーパロットからは莫大な魔力が一気に放出。この威圧感に部下たちは冷や汗を流した。
「この情報を知る者はかなり限定したつもりだったが、それでも漏れ出ることは仕方がない。この世に絶対という言葉が存在しない以上、可能性は0に限りなく近づくだけだ。だが!残念ながら、それ許しきれない私もいるのだ!」
ボーパロットは勢いよく持っていたワイングラスを1人の部下に向かってノールックで投げた。部下はギリギリでグラスを避けた。
「いい時計をしているな。昨日まではしていなかったようだが?」
ボーパロットはこの部下の昨日までつけていなかった時計を見逃してなかった。
「…」
「さぞ、いい時計なのだなぁ。お前たちには多くの給料を払っているとは言え、到底買うことのできる代物とは思えんなぁ。」
「そ、祖父の形見で…」
「それは、それは。大事にしなくてはなぁ。」
ボーパロットはスナップをした。すると、天井が開き、そこから透明なケースが降りてきて、中には、女と少年、少女が入っていた。
「「パパ!」」
どうやら、ケースの中にいるのは、いい時計をつけている部下の妻と子供だった。
「分かってる。お前が情報を売って、大金を得たのは知っている。私はお前を信用して情報を共有したのだぞ?それを簡単に踏み躙ったのだ。今、私の心は初恋に亀裂の入った乙女の気分だ。」
「「パパ!助けて!」」
「あなた!」
子供達と妻の目には涙が浮かんでいた。
「そんな私にお前に慈悲をかける余裕はない。自分の傷を癒すのに精一杯だ。だから、悔め。選択のミスを、過ちを!」
「うっ!」
すると、ケースの中に入った少女はいきなり腹部に強烈な腹痛を覚えた。
「あ”あ”!あぁぁっ!あ”あ”あ”あ”ーーーー!」
痛みにもがく少女。
「い”た”い”!い”た”い”!あ”あぁぁぁぁぁ!!」
高く響き渡る声で泣き叫ぶ少女の様子にボーパロットを除くこの場の全員は恐怖を感じていた。
「た”す”け”て”!や”た”!や”た”!!」
するといきなり少女の腹を食い破って、夥しい数の虫が滝のように腹の中から勢いよく飛び出してきた。腹を食い破られた少女は無論死亡。妻と少年はこの状況をうまく飲み込めていなかった。
少女の体から飛び出した虫は少女の死体を食べ始め、さらには放心状態の2人を食べ始めた。捕食のスピードはすぐに骨を剥き出しにさせるほどで、ケースの中の3人はあっという間に食べられてしまった。
家族を食い殺された部下は、その場に膝から崩れ落ちた。そんな様子にボーパロットはにこやかに笑った。
「後悔は終わったかな?せっかくいい時計をつけているのだからもう少しいい顔をしたらどうだ?では、引き続き仕事を頑張ってくれよ。これから忙しいのだからな。ハハハハハハハハハハ!!!!」
ボーパロットの笑い声は『マザーシップ』に響き渡った。
ーー終ーー
たまにちょっとグロチックなものを描きたくなる衝動に駆られます。
別になくても支障はない表現なんですけど