8 魔力について、魔法について
ヴァンパイアの校長、トバルカイン校長。校長先生の他者を思う心にエクサーは感化され、早々と入学を決意する。
学校見学から帰宅したエクサーは、体の疲れを感じながら部屋に戻ると同時に寝てしまい、次の日を迎えていた。まだ完全に疲れが取れたというわけではなかったが、それでも幾分か体は軽かった。それよりも圧倒的空腹感がエクサーを襲っていた。
部屋を出て、毎度のことながらエレベーターに乗り、最上階まで向かった。
最上階に着くと、A2、S,B、フォルテ、そして帰ってきたF,Dがいた。しかしピアノの様子はどこにもなかった。
「おや、おはようエクサー。」
「あら〜、エクサーおはよう。よく寝たわねぇ、お腹空いてない?夜ご飯食べてないからお腹空いてるでしょう?準備はできてるわ。さぁ、食べましょう。」
A2とS,Bの歓迎から全員が席につくと料理が運ばれてきた。
「F,Dさん、帰ってきてたんですね。」
「あぁ。割と早く終わったんでな。」
「そうなんですね。ところでピアノは?」
「きっと寝坊ねぇ。あの子たまにするのよ。」
「いっくら私が呼んでも起きやしないんだから、でもそこが可愛いのよねぇ。」
フォルテは相変わらずのシスコンっぷりを発揮していた。
「そういえば、エクサー。もう学校決まったのねぇ、早いわぁ、もっとゆっくり考えなくていいの?」
「多分、他を見たらもっと悩むと思うんです。それに校長先生がいい人でした。」
「校長?あ〜あぁ、そういえばあそこはトバルカイン校長だったわねぇ。トバルカイン寝てばっかりだけど結構凄腕よぉ。」
「へぇ〜結構、有名なんですね。」
ここでA2がエクサーに話しかけてきた。
「エクサー、ご飯が終わったら基礎を教えるから18階に行くよ。」
「基礎?」
「魔法についての基礎を教えるよ。」
エクサーは念願の魔法について教えてもらえると聞いて満面の笑みを浮かべた。
全員が食べ終わり、2人はエレベーターに乗り、A2が18階のボタンを押した。
18階に着き、エレベーターから降りるとその先は教室だった。教室はほこり臭く、机と椅子がいくつかあり、何かの生物の標本や剥製が飾られていたり、本棚には古い本がギチギチに並べられている。
「適当な席についてくれ。」
エクサーはとりあえず一番前の席についた。
「さてと、じゃあまず、魔法について説明しよう。」
エクサーは小さく頷いた。
「とその前に魔力だ。前も言ったように魔法を使うためには魔力を消費しなくてはならない。だから魔法を使う時は自分の魔力総量を考えて魔法を使わなきゃダメだ。魔力を使い切ってしまうと魔法は使えなくなってしまう。もちろん魔力総量は皆一定ではなく個人差がある。わかったかい?」
「じゃあ魔力量を100とすると魔法を使うと100からどんどんマイナスされていくんだね。」
「そうそう。飲み込みが早いなぁ。」
「へへへ。」
エクサーは照れくさそうにした。
「では次。魔法についてだ。魔法には一般魔法と固有魔法がある。一般魔法は誰でも使える魔法のことで、例えばこんな感じのフレアだ。」
A2は人差し指の先から火を出した。
「フレアの上位互換としてファイアがある。」
A2は人差し指の火が威力を増した。
「ファイアの方が火力は高いが消費する魔力が多いから、用途に応じて使い分けが大切だ。これらを一般魔法という。」
「なるほど、なるほど。」
「そして次は〜、固有魔法だ。又の名を魔術という。固有魔術と言われるように個人だけが使える魔法のことを固有魔法と言うんだ。そしてこれは先天的なものなんだ。」
「先天的?」
「生まれながらにして決まってしまってるもののことだ。」
「A2も使えるの?」
「個人情報は無闇に話すものじゃないよ。」
「A2使ってよ〜。」
「次は、魔力回路についてだ。」
A2は強引に話を変えた。
「魔力回路とは、魔力を流す血管のようなものだ。」
「へぇ〜。」
「しかしここで話は終わらない。戦闘時において注意しなくてはならないことは、魔力切れと回路欠損の二つだ。このオーバーフローは短時間に魔力を使い過ぎてしまうことで、魔力回路が壊れてしまうことだ。この場合、回路の修復には魔力切れと比べ物にならないほどの時間がかかってしまう。でもよっぽどのことが無茶をしなければ壊れることはないから頭の片隅に置いておいてくれ。」
「わかった。」
「と、いうことで、次は実践に移るとしようか。」
ーー終ーー
魔法について長々と書いてしまいました。わかりにくかったらごめんなさい。多分次回、入学です。
トバルカインと、S,BとF,Dは同じ学校卒業です。関係は学校にいた時より、卒業した後に仕事で深まりました。たまに3人でご飯を食べるぐらい仲がいいです。