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DeViL 悪魔生転物語  作者: オクラ
 4章 『復讐の毒花』
88/207

 85 大切な


 ー I,B ー


 「好きな人…いるから。」


 I,Bは顔を赤め、恋する乙女の顔をした。これには流石にオレッチオも驚いた。


 「な、なに?悪い?」

 「いやいや、そんなことはない…ただ…意外だっただけ。」

 「あなたと同じよ、言葉が違うだけで私にも大切な人はいる。それを守れるぐらいには強くなったの。ちょっと成長曲線がおかしくて、過剰になったけど。」

 「じゃあ、私はあなたが目標ってわけね。」

 「目標なんて設定しなくても、思ってれば体が勝手に動く。ねぇ、包帯ある?」

 「ほ、包帯?」

 「戦ったらボロボロになっちゃった。早く変えたい。」

 「服着たら?」

 「いや!絶対に。包帯つけて隠してあるから大丈夫。」

 「うふふふふふふ。」


 戦闘中は焦りも何も見せないI,Bが見せた意外な一面にオレッチオは思わず笑顔を見せてしまった。


 ー ライダー ー


 「ハハハハハ!もっとだ!もっと!」


 久しぶりの戦闘に血がたぎって仕方のないライダーは、乱雑に弾を何発も打った。ライダーはその弾の全てを反射させ、一発も外すことなくボッカとオレッチオに命中した。弾が当たればそこをすぐに治すために回復魔法を使う2人。これでは気が逸れる一方、加えて、家族思いが逆に悪く働き、すぐに互いを気にしてしまう。結果、2人は戦闘に100%集中することが難しくなっていた。


 その時、2人の脳を弾丸が貫く。脳を傷つけられた2人はその場に倒れ込む。


 「クッソ…」

 「歳を取ってしまったと後悔していたが、現役顔負けにできるならまだまだ自分は捨てたもんじゃない。」


 ライダーは1つの銃をワープホールの中に入れると、代わりに、さっきより長めの銃を持ち出した。


 「ハハハハ、いつまで寝ている。こんな状態では命がいくつあっても足りないぞ?」


 なんとか傷の回復を終わらせた2人はゆっくりと立ち上がった。


 「随分と頑張ることだ。」

 「あぁ…悪いな、諦めが悪いんだ。それに…」

 「それに?」

 「隣で家族が傷ついてんだ。動かないわけにはいけねぇんだ。」

 「私も、隣で家族が傷ついてるの。ぐずぐずするなら、終わってからでいい。」

 「フンッ。お互いのピンチがお互いの原動力ってか。でも心配性が過ぎて、足を引っ張りあってるようだがな。」

 「よく見てるな、ジジイ。」

 「それだけ、余裕があるってことだ。」


 ライダーは銃を構える。


 「次で終わりにしよう。脳みそと心臓には気をつけておけ。」


 2人は薄々気づいていた。ライダーに勝つことはできないと。でもお互いはそれを理解していることも理解していた。


 「勝つわよ、ボッカ。それでまたみんなとご飯を食べましょう。」

 「あぁ!」


 バンッ!!


 ライダーの銃声から互いの攻撃は開始された。


 新しく持ち出したライダーの銃は音が大きく、銃弾もかなりの大きさだった。そのため反動も大きく、発射の衝動で少し後ろに後退するほどだった。

 だが、対照ではない銃の性質は2人を悩ませた。弾丸の速度、重さ、さまざまな違いが反射により不規則に入り乱れ、2人はまるでもう1人のライダーがいるように錯覚するほどの弾幕を受けた。反射と銃の違いを反射でさらに錯乱させる技をライダーは『2vs,バレット』と呼んだ。


 だが、ただでは終わるつもりは全くない2人は残りの力を全て使ってジリジリに前に進んで行った。そして、2人は一瞬、目を見合わせ、ボッカは全力で走り込んだ。2人で残りの魔力で強化魔法をボッカに使い、ライダーも予想しないほどの爆発的な速度で突っ込むと、上りに上がった攻撃力でライダーを爪で切り裂いた。


 ライダーは目や胸に大きな傷を負った。


 「ハハハハハ、やるな!」


 無理やりだったとしても予想外の一撃にライダーは喜んだ。そして攻撃で千切れたポンチョを引き千切ってその辺に捨てた。


 そして、銃を投げると、ライダーはガトリングを構築魔法で作り出した。ライダーはピアノとフォルテの構築魔法・錬金魔法の師である。そのため、ライダーはその2つをほとんど使うことができる。このガトリングは確実に2人を倒すためにこの一瞬で作り出した、最適機械。銃弾も装填するという選択を捨て、魔力を使って構築魔法で作ることにしたライダーは装填の必要がなくなり、より戦闘に集中できるようになった。つまり、このガトリングが止まる時、それは、ライダーの魔力がなくなる時だった。


 ライダーは無数の弾丸を高速で打ち乱れた。もはやこの数の反射で不規則な弾幕を避けることなど不可能。さらには2人の魔力が少なくなっている結果、2人は無力にも全ての弾幕を受けた。魔力が無くなるまで続く弾幕。その手数の多さから『∞vs,バレット』と呼んだ。


 そして、最後にライダーはガトリングの形状を変化させ、レーザー砲を作った。


 「最後だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 そして一瞬でチャージを終わらせると、2人をレーザーで飲み込んだ。


 巻き上がった砂ぼこりは次第に晴れ、ライダーの見た光景。跡形もなくなっていると思っていたライダーは驚いた。ボッカがオクチオを守るように背中でレーザーの全てを受け止めていた。


 「…大丈夫か?オクチオ。」

 「うん…でもボッカあなたは…」

 「ちっと…まずいか。」

 「今治す。」

 「おい!最後に言葉は残すか?」


 オクチオが急いでボッカを回復させようとしたが、そこにライダーは槍を入れた。


 「あぁ…やるなら、しっかり殺してくれ。オクチオに汚い死を見せたくないんだ…」

 「フンッ。そうか。」


 ライダーは銃をボッカに向けて、バンッと一発を打ち込んだ。


 「ん?」


 目を瞑って覚悟を決めたボッカだったが、銃声がなったにも関わらず、痛みがまったくなかった。不思議に思ったボッカは、目を開けた。すると、体力や魔力がどんどん回復していっていた。


 「な、なんだこれは?」

 「ジジイの優しさってやつだ。お前たちは殺すには惜しい。それに殺せという依頼じゃない。力の差がわかったのならそれでいいだろ。まぁ、もしお前が襲いかかってきても負ける気はしないがな。」

 「認めねぇぞ、こんなの。」

 「認めたくないなら認めなくていい。だが、認めなくては先へは進めんぞ?」

 「チッ、」

 「フンッ。勝者の慈悲は受け取っておけ、いやでもな。」

 

 ボッカは回復魔法でオクチオを癒した。


 「ボスの場所はどこだ?」

 「最下層。」

 「では、案内を頼む。一番厄介なボスを無力化しなければ依頼もクソもなくなってしまう。」

 「素直にするとでも?」

 「懸命な方を考えた方がいい。家族とこれからも過ごしたいのなら。」

 「ボッカ、言うことを聞きましょう。」

 「…」

 「ボッカ!」

 「あぁ、わかったよ。ジジイついて来い。」


 3人はセルベオのいる最下層まで進んで行った。


 ーー終ーー


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