82 嫌いじゃない
ー I,B ー
「ふっ」
小さな息を吐いて、大きな蹴りをガーディアンに叩き込んだI,Bは、ヒットしたガーディアンの体を粉々に打ち砕いた。
「グアァァァァァ!!」
倒れるガーディアンの側にスタッとI,Bは着地した。
「で、次はあなたでいい?」
I,Bの話す方向にはオレッチオがいた。
「戦闘特化のガーディアンにさらに強化を加えたのに…あなたには手ごたえにすらならなかったかしら?」
「申し訳にけど。」
「そう…作るの大変だったからちょっと悲しいけど。じゃあ私が相手。」
オレッチオの手は鳥の翼へと変化し、足は鉤爪の鋭利な足へと変化した。
「あら、あなた鳥族だったの?鳥族は随分前に滅んだはずじゃ?」
「違う、これは魔術。」
「じゃあ、変化ってことね。」
「そんなところ、『鳥化』ってところ。」
オレッチオは大きく羽ばたき、空中へと飛び始めた。
「『裂風』」
オレッチオは大きな翼でI,Bに向かって突風を放った。
この攻撃をI,Bは棒立ちでもろに受けると、身体中に浅い切り傷が大量に発生した。
「あら、不思議。『バリア』を貼るほどでもないかと思ったらちゃんと攻撃なのね。」
I,Bは攻撃されたことにはふ〜んぐらいの感覚で、傷は治ってしまった。
「じゃあ、やりましょうか。」
I,Bは、オレッチオにそこそこの期待をしていた。
ー ライダー ー
「ボッカ、私もやる。」
オクチオは、ボッカの側まで近寄ってきた。
「いいのか?」
「流石に支援だけってわけにもいかないでしょ?この状況じゃあ。」
「できるのか?」
「もちろん。今ピンチなのはあなただけじゃない。私も同じ。守り合うの。お互いがお互いを。」
オクチオの足は発達した鳥の足へと変化した。
『鳥脚』オクチオに備わった魔術。陸上に特化した鳥の脚を顕現させる能力。
それに応えるように、ボッカも魔術『強爪』を使い、自身の手を発達させた。
「もういいか?ガンマンの癖で勝負ははっきり行きたいんで待っちまった。」
「いいぜ、ジジイ。言っとくが、家族のための俺たちは強いぜ。」
「家族…ね、」
家族という言葉にライダーは何かを想起した。
子供の頃の小さな記憶。まだ兄と一緒に生活していたあの時の…
ーーーーー
「弟よ!家族とは永遠の絆!だからお前を一途に愛するんだ!無条件で!永遠に!!」
ーーーーー
これを思い出したライダーはフッと笑った。
「家族ね。意外と嫌いじゃないんだよなぁ、その関係。」
拳銃二丁を構えるライダー。
「来い!ジジイにその関係を断ち切らせたくなくば、全力で来い!」
バキッ
地面にヒビが入るほどの脚力でライダーの腹部を蹴るオクチオ。
「うぐっ、」
蹴り飛ばしたライダーをさらに追い越し、蹴りボッカの方に蹴り飛ばした。ボッカはもちろんこれを見逃さず、ライダーに連斬を叩き込んだ。
が、そんな中でもライダーに諦めなどなく、連斬の中で無理やり銃をボッカの脳天めがけて打ち込んだ。これによりボッカは攻撃をやめざるをえなくなった。
「ボッカ!」
ライダーは向かってくるオクチオに対して、何も考えずに銃弾を打ち込んだ。もちろんそんなものが当たるはずもなく、オクチオを限界まで引き付け、『テレポート』で移動。
オクチオはボッカに寄り添った。
「大丈夫?」
「あぁ、でも脳天をやられたせいで上手く動けねぇ。」
「私がなんとかする。」
オクチオはボッカに回復魔法をかけてあげた。
「過保護なことだな、それじゃあいつか身が滅んじまうぜ!!」
ライダーは、銃弾を乱れ打った。
「99…さっきのと合わせてちょうど100!」
空中で無数に反射する銃弾。その50発はボッカへ、もう50発はオクチオへと送られた。
反射回数を重ねた銃弾の痛みはもはや尋常ではなく、傷痕こそ綺麗なもののとても無表情で飲み込めなかった。
「ではでは、ジジイ、今から本気で行かせてもらうぞ!」
ーー終ーー