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DeViL 悪魔生転物語  作者: オクラ
 1章 『エクサーと侵入者』
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 7 他を思う心


 「いらっしゃい、A2。待っていましたよ。」

 「やぁ、トバルカイン。」


 無数のコウモリたちは1体の悪魔になった。


 「エクサー、彼の名はトバルカイン。吸血鬼で、この学校の校長だよ。」

 「やぁやぁ、まずは握手を。」


 エクサーはトバルカインの手を握った。その手はひどく冷たかった。


 「それでは案内を。A2、君はどうする?お菓子を用意しているよ。」

 「おっとそれは」興味深い。」

 「それでは、談話室に。」

 「悪いね。」


 そう言ってA2は足取り軽く、談話室のある方に向かった。


 「まずは、魔法基礎の授業に行きましょう。」


 ーーーーー


 「ねぇ、昨日の練習した?」

 「してなーーーーーーーーい。昨日帰って寝ちゃった。」

 「おい起きろよ。」

 「わかってるって。」


 教室はエクサーと変わらないぐらいの子供悪魔達で賑わっていた。


 悪魔の容姿はさまざまで、肌が赤かったり、ツノが生えていたり、いなかったりしていた。


 バンッと居室のドアが勢いよく開くと、大人の悪魔が教室に入ってきた。授業担当のフールル先生だった。先生は言葉の喋り出しが詰まってしまう癖はあるが、信頼の厚い先生だった。


 「さ、さぁ、じゅ、授業を始める前に、きょ、今日は見学者がきます。で、でも、き、気にしないでください。」

 「はーい。」


 ーーーーー


 「今から見る授業は、魔法基礎<攻>戦闘の際の基礎的なことを教えています。」


 教室の前に着くと、トバルカインがドアを開けた。すると生徒達の目線は一気にこちらに向いた。


 次の瞬間、生徒達は雪崩のようにこちらに来ると、校長先生の周りに集まった。ある一人を除いては。


 「校長先生、起きてるのー?」

 「先生遊んで〜。」


 トバルカインは生徒から引っ張りだこだった。


 「コ、コラ、みなさん、校長先生を困らせないでください。」


 しかし、フールル先生の説得虚しく子供達は聞く耳を持たなかった。


 すると、ある一人の生徒がエクサーに話しかけて来た。


 「あなたがもしかして見学の子?」

 「あ、うん。」

 「え〜、なになに見学?」

 「どこどこ。」


 先ほどまでのトバルカインへの興味は、一瞬にしてエクサーに押し寄せてきた。


 そこからは怒涛の質問責め。皆が酔ってたかって質問するため、エクサーはパンク寸前だった。


 すると、それを見かねたトバルカインは、少し低めの声で叱るように言った。


 「コラコラ、その辺にしておきなさい。」


 生徒達は静かに言うことを聞いた。


 「みなさん、授業が終わったら、中庭にいますよ。」


 そう言って、エクサーとトバルカインは教室を後にした。


 ーーーーー


 「うるさかったですか?」

 「そんなことないですよ。」

 「皆、エクサーと同じぐらいの子達です。あのくらいの子達は少し元気すぎて、少し困ってしまいますね。」

 「それにしても、大人気ですね。」

 「そうですね。私は今は起きていますが、大半は寝ています。なので、会った時、皆の印象に残るように接することを心がけています。その甲斐あってですよ。」

 「なんで、そんなに寝るんですか?」

 「種族の特性みたいなものです。吸血鬼の。」

 「なるほど。」


 エクサーは、自分は悪魔であることを再認識した。


 「次は魔法応用<守>です。皆、少しエクサーより大きいですが、リラックスですよ。」


 そこから2人は魔法基礎<守>、魔法応用<攻>、植物基礎、機械実技、音楽理論など多くの授業見て回った。トバルカイン曰く、これはまだカリキュラムの1割にも見ていないらしいと言われ、そのことにエクサーは驚きを隠せなかった。


 「楽しめましたか?」

 「はい。とっても。」

 「入学するかはゆっくり決めてください。急ぎません。」

 「はい。それにしても色々な人がいますね。」


 エクサーの言った通り、真面目に授業を受けている者がいれば、何時間も話しているだけの者、ずっと寝ている人、スポーツをしている者など、やっていることは多様だった。


 「学校という場所で大事なことは、可能性、チャンス、選択肢を与えることです。学校に来たからといって、授業を必ず受けろとは言いません。大半寝ている私ですが、教育において『強制』することは、最も行なってはいけないことだと思っています。その者の主観で強制をしてしまうと、どうしてもその者に影響された、行動から似たような価値観が形成されてしまいます。それでは、面白くありません。だから、私は子供達の個性を伸ばす、いや爆発させることをスローガンに、我々は日々尽力しています。ただ生きるだけではつまらない。私は、生徒達が、自分たちの才能を不朽の才能で彩れるようにしたいのです。」


 エクサーは、他を思うことの本気の本当の素晴らしさを初めて知り、ひどく感銘を受けた。


 「僕は、ここに入学します。」


 ーーーーー


 トバルカイン魔法学校 応接間


 「ん〜、美味しいキャンディだ。」


 A2はソファに座りながら、鼻歌を歌い、用意されたキャンディを食べていた。


 そこに、トバルカインと、エクサーは入って来た。


 「おやおや、お2人ともおかえり。」

 「ただいまA2。」

 「どうだった?」

 「ここに決めたよ。」

 「お!」


 流石のA2もこれには驚いたようだった。


 「まさか、これほど早いとは、本当にいいのかい?」

 「うん、ここで学びたいんだ。」


 エクサーの本気の目に、A2も気持ちをしっかりと受け取っていた。


 ーーーーー


 トバルカイン魔法学校 正門


 学校の前には馬車が到着しており、トバルカインが2人を見送っているところだった。


 「手続きは、ある程度進めておきます。入学に準備が出来次第、また一報ください。」

 「わかった。さぁ帰ろうか、エクサー。」


 A2が馬車の扉を開け、エクサーが先に乗りこもうとした時、トバルカインが話しかけて来た。


 「それでは、楽しみにしていますよ。」

 「はい!」


 トバルカインも思わずニッコリのいい返事だった。エクサーは先に馬車に乗り込んだ。


 「じゃあね、トバルカイン。」


 そう言ってA2はトバルカインに手を振った。


 「お気をつけて。」


 トバルカインも控えめに手を振りかえした。


 2人が馬車に乗り込むと、馬車が動き出し、学校を後にした。


 ーー終ーー


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