74 邸宅侵入
地獄・デロス・テンペルト邸
「よし、準備いいかい?」
「うん。」
「おう。」
3人はテンペルト邸へと歩を進めた。邸宅の門の前には門番が2人構えていたが、セルベロを囮にナソとボッカが静かな不意打ちで気絶させ、3人は門を飛び越え、玄関へ向かった。
「確か、地下牢に行くには鍵が必要で、鍵は父さんの部屋にあったはず。まずはそれを取りに4階に行こう。」
「わかった。」
3人は扉を勢いよく開いた。すると、邸宅の玄関ロビーにいる使用人たちの目線が一斉に3人の元に集まった。
「どうする?」
「決まってるだろ。」
ボッカとナソは目を合わせた。
「「強行突破だ!!!」」
ボッカとナソは勢いよく走り出し、少し遅れてセルベロも走り出した。
使用人たちも行方不明と聞いていたセルベロと侵入者を見るや否や急いで捕まえようとしてきたが、子供が故の身軽さで3人は難なく突破し、階段を登り始めた。
3人が階段を登って行くとその先には、実践の鍛錬を積んでいそうなガードマンが道を塞いで待っていた。これには少しスピードを落とすセルベロだったが、ナソとボッカは闘牛のようにスピードを上げて突っ込んで、ガードマンたちを倒して行った。
「えぇ…」
この2人の物怖じのなさに流石にセルベロもびっくり。2人はバッタバッタとガードマンを薙ぎ倒し、4階に着いた。
いかにも高級なドアを開け、昔の記憶を頼りにセルベロは鍵を探した。
「これだ!はい、ナソ。」
「わかった!」
セルベロは地下室の鍵をナソに手渡した。
「そんじゃあ、下まで降りようか。」
3人は息を整えもう一度下まで降りようとしたその時、
「どこに行こうというのか?」
「「!」」
「…と、父さん…!」
部屋の扉の前にテンペルトが姿を現した。3人はテンペルとの放つオーラに後退りしてしまった。
「息子よ、帰ったのなら一言、挨拶ぐらいはしてもらいたいね。」
テンペルトの顔は確かに笑っていた。だが、3人はそれを素直には受け取れない。あの笑顔の裏には狂気が隠れていることも知っていたからだ。
「ナソ、ボッカ。後ろにある窓の下には庭園が広がっている。だから…」
「突き破ってジャンプしろと…まぁ、それが一番可能性が高い。」
「行くよ、ボッカ。」
2人は勢いよく後ろの窓に向かって走り出し、窓を突き破って下へと降りていった。
「追っては来ていないっぽいぞ。」
「よ、良かったけど、ボッカ着地決めてなかった。」
「あっ…」
ドカッ! ドカッ!
「痛ってぇなぁ。」
「もうちょっと、防御魔法かけとくんだった。」
2人が最終的に考えた着地の仕方は、防御魔法をかけて生身で落ちることだった。
「よし、行くぞ。」
「うん。」
2人は地下牢の入り口まで走って行った。
ーーーーー
「父さん…追わなくていいの?」
「ふっ、別に構わんさ。ところで、なんの目的で帰ってきた?素直にというわけでもないようだが?」
「ぼ、僕は、この数日で本当の家族を知ったんだ。一緒にご飯を食べて、遊んで、寝て、そんなことを僕は求めていたし、みんなは与えてくれた。ここにいる時とは違って、みんなが僕をしっかりと見てくれた。だから、父さん、僕にこれ以上関わらないで欲しい。」
「そんなことだろと、思ったさ!!!!!」
テンペルトはセルベロの言葉を聞くや否や猛スピードでセルベロの顔面を掴むと、勢いよく部屋にある本棚までぶん投げた。
「ガハッ!」
セルベロは頭がら血を流し、吐血。
「私は、願いや理想を述べるだ・け・の奴が大嫌いだ!願いや理想は実力が伴って初めて実態を帯びる。だが、お前には到底それができる実力が伴っているようには見えない。そんなお前が易々と願いや理想を口にするとは…」
テンペルトは倒れるセルベロに手をかざした。
「甚だ滑稽!!!!!!!!!!!!!!!」
テンペルトはかざした手から衝撃を放ちセルベロを3つ隣の部屋まで吹き飛ばした。
「だが、もしかするとたまたま今までの2発が交わせなかったという可能性もある。散々理想だけを口にするなと教えてきたのだ。実力をつけてきたから来たのだろう。きっとそうに違いない。相手をしてやる。立つのだ、息子よ。」
テンペルトは壁に空いた穴をヒョイヒョイっと通り、セルベロに近づくが、いるはずのセルベロがそこにはいない。
「ん?」
すると、テンペルトの顔面にセルベロの拳がヒット。そのままテンペルトは部屋のドアを突き破り、廊下まで吹っ飛んだ。
「よし!」
拳が命中したことに手応えを感じたセルベロ。
「一発だ、一発。たったの一発。」
すると、セルベロの右腕に何かが絡みつくと、一瞬にして、部屋の外に引っ張り出され、そのまま階段にぶつかりながら1階まで落ちていった。
1階にいた使用人たちもこれには驚いた。
ドカーーーン!!
上から降ってきたセルベロにワラワラと集まる使用人たち、その上からまた1人誰かが降ってくると、大きな衝撃が走る。
「だ、旦那様!」
降ってきた正体はテンペルトだったが、その様子はさきと大きく異なり、背中から生える3対6本の大きな蜘蛛の足で、テンペルトは浮いていた。
市長・テンペルトが権力を維持できるのはグガットの影響だけでなく、確かに握られた実力があった。それの大きな割合を占めるのが魔術であり、その能力は『蜘蛛』。セルベロが引っ張られたのはその能力の一部の蜘蛛の糸だった。
「息子よ、俺を倒してみろ。」
ーーーーー
「すごい数の子供だな。」
「子供だけじゃない、若い女もいる。」
地下牢の入り口から侵入に成功した2人は、オクチオとオレッチオを探して地下牢の中を探し回った。地下牢の中は想定の何倍も広く、そこには攫われたであろう多くの幼い悪魔や女の若い悪魔が怯えながら身を寄せ合っていた。
「オクチオーーー!!」
ボッカは大きな声でオクチオを呼ぶ。すると遠くで微かに返事が聞こえた。それを見逃さず2人はその方に走って行った。
「見つけた。」
「ボッカ…」
2人はなんとかオクチオとオレッチオを見つけることができた。
「ちょっと、待ってろ!今、今助けてやるからな。」
「違うの!まずは私たちじゃない。」
「「?」」
「クーパーが、クーパーがどこかに連れて行かれたの!多分、あのままじゃ殺されちゃう!」
「オクチオ、落ち着いて。」
「昨日、私が目を覚ました時、牢屋の前を血だらけで足枷のつけられたクーパーがあの2人組に連れて行かれたの!」
「わかった。」
ナソは2人を牢屋から出すと。来た道を戻って地下から上がっていった。
ーー終ーー
色褪せない物ってすごく魅力的に感じます。世代を超えて『知ってる!』ってなる物、100年経っても『すごいよね』って言われる物。目指したいよですねぇ〜。
『トムとジェリー』なんかいい例ですね。大半の人が通る道です。19の私が今見ても、面白さを見出せる。しかも歳を重ねてみると、さらに面白くて。なんで動きだけでこんなに面白いのかとか、なぜ、主要キャラ数も少ないのにこんない面白いとか、色々な着眼点で見れて面白いです。シンプルでありながら、だからこそ、歳や成長で培った価値観で変わった視点で見れる。これってすごいことだよなぁって思います。
『Nirvana・Smells Like Teen Spirit』もすごいと思います。音楽に関してはあんまり知識がないので詳しくは言えませんが、これも今でもとてつもないパワーを持っていますよね。60s〜90sのロックが大好きで基本的に保育園の頃から車で流れていて聞いていたのですが、それと比べてもこの曲はロック(グランジ)の到達点に感じます。もちろん、今流行りの曲を聞きます。それと比べてもこの曲はジャンルの概念を超えて、Topを走る気がします。
他にも、私の大好きな『バスキア』の絵とか『シェイクスピア・4大喜劇』とか近しいところだと、『ポケモン』とか……あげればキリがないですね。
これらに一貫しているのは製作者が、作品という子供達に命をかけて没頭していたからだと思います。見習わなきゃですね。もっと真剣に書きます話を。私も命をかけなきゃですね。