64 I,B
「I,Bだ。」
抜群のスタイル、整った顔に濃いクマ、クルクルでボサボサの長髪に、胸と局部に気持ち程度に巻かれたヨレヨレの包帯。
いくら悪魔とは言え、このほぼ裸のような服装にエクサーは何やら見てはいけないようなものを見ている感覚になり、目を手で隠した。
「おい、I,B。お前、それで外に出たのか?」
「うん、悪い?」
I,Bの声は細く、覇気は全くないが透き通るような声をしていた。
「あのなぁ、誰かに会うかもしれないんだから服は着ろ。マナーだ。」
「やだ。服なんて邪魔。それにこんな場所なら誰にも会わない。」
「はぁ…そうか。」
「ちょっと、あなた。そこ私の場所なんだけど。」
そう言うと、I,Bはエクサーに近づいてきた。
「そこ、どいてくれない?」
エクサーは顔を隠している手を離すことができなかった。
「何、恥ずかしがってるの?」
「い、いや、だって。は、裸…。」
「裸じゃない。包帯巻いてるでしょ。」
「いや、そう言う問題じゃ。」
「なんでもいいから、その丸太どいて。」
「I,B、一緒に座ればいいだろ。」
「そうか。じゃあ隣に。」
「ふぁぁぁぁぁぁぁ!!」
I,Bが隣に座ると、思わずエクサーから変な声が出た。
ーーーーー
「エクサー、スープだぞ。ほんとに食わなくていいのか?」
「まだ、食欲はなくて。」
「おかわり。」
「はぁ、わかった。」
毒のせいでまだ食欲の湧いていないエクサーと対照的にもりもり食べるI,B。ライダーの作った具がゴロゴロ入ったスープをほとんど1人で食べ切ってしまった。
「I,B、エクサーに結界術を教えてやってくれ。」
「別にいいけど。」
「エクサーの体調が戻り次第、教えてやってくれ。」
「わかった。じゃあ、私、お風呂行ってくるから。」
「えぇ!お風呂あるの?」
「あぁ、洞窟の地下にある。入るか?」
「入りたい。」
「じゃあ一緒に入ればいい。」
「え!」
I,Bからのまさかの提案。ただでさえ、I,Bの方を向けないエクサーが一緒に風呂。エクサーの恥ずかしさはマックスに。
「え、遠慮します!」
ーーーーー
カポーーーン
「ふぅぅぅぅぅ。」
拒否したつもりのエクサーだったが、結果として、2人で入ることになってしまった。
この場所は、お風呂というか、地下から湧き出た天然の温泉のようなもので、壁にはクリスタルや宝石などが剥き出しており、なんとも贅沢なお風呂に入っていると感じた。
入ってしまえば、この空間の雰囲気と少し暑いぐらいの湯加減の気持ちよさで、恥ずかしさなどどこかに行ってしまい。エクサーは温泉を十分に堪能した。
「あっ、そうだ。僕、エクサーと言います。始めまして。」
「私は、I,B。よろしく。」
「ん?」
エクサーはここで、ある疑問に気づいた。
(I,B…I,B…I,B…)
「あの、もしかして、A2知ってます?」
「うん。」
「じゃあ、」
「私も『level 666』。」
「やっぱり。」
名前からしてまさかとは思ったが、名前の通り、I,Bは『level 666』の一員だった。
「あなた、元人間なんでしょ?」
「なんで知ってるんですか。」
「A2が共有伝達で教えてくれた。この前、2回も魔強化で暴走したんでしょ。」
「そうらしい。」
「あなた、魔強化ができるってことは筋はいい。結界術もすぐにできるようになる。」
「魔強化できるの?」
「無理。私はただ、結界術が得意なだけ。」
「あぁ、そうなんだ。」
「魔強化は、魔力を使うものの中で一番難しい。誰でもできるわけじゃないし、魔強化を完成されるためには条件が多い。」
「条件?」
「サタンの魔強化に関する本を一回、A2に見せてもらった。そこには魔強化には3つの要素が必要になると書いてあった。多分これは確定的なもの。」
「3つって?」
「1つ目は、『自分の魂の認識』。命あり生まれてくるものには、何かやるべきことを1つ持って生まれてくる。これをサタンは運命と呼んだ。自分はどういう存在で、何をするために生まれてきたのか。自身の役割を知った時、『魂の認識』が完了する。これがまず1つ。
2つ目は、『身体の成長』。悪魔は長い寿命を持つことから、肉体の全盛は人間に比べてとても長い。だから、肉体の全盛をしっかりと維持することが大事。でもこれは『魂の認識』が完了している場合、ある程度老いても使えるとも言われている。
3つ目、『魔力回路の開放率』。これが一番の難所。魔力回路は知ってる通り、魔力を通す血管のようなもの。これは血管と同じで、太いものから細いものと色々ある。でも違うところは魔力回路には少なからず、使わない回路があるということ。魔法は太い回路にさえ魔力を流すことができれば、基本的には発動する仕組みになっている。だから、細い回路に意識的に流す必要はない。その結果、地獄に住む悪魔たちは細い回路を使わずに魔法が使えるように進化をした。でも、エクサーに進化関係ない。エクサーは人間だから進化のプロセスには関与していない。だから安心して。ただ、使えていないだけ。」
「なるほど。」
「今までの話は完全な魔強化の話。エクサーは魔強化で暴走ができるってことは、3つとも何となく形としては掴めているということ。一番できているのは、『魔力回路の解放』。さっきも言ったように元と人間だったから。一番できていないのは『身体の成長』見るからに子供だし。魔力解放率が高いってことはいいこと。結界術だって本当に使おうと思ったら太い回路だけでやろうとすれば、魔力回路が壊れる。」
「そうなんだ。」
「とりあえず、今は体を治すことが一番の優先事項。」
「よし。」
「じゃあ、そろそろ。」
勢いよく立ち上がったI,B。ついにエクサーの目に裸体が映り、エクサーはその場に鼻血を吹き出しぶっ倒れた。
ーー終ーー
I,Bは貧乳です。至高ですね。
I,Bは、基本的に『level 666』のメンバーたちも会うことはありません。なぜかというと、放浪しているからです。なので、集合をかけてもI,Bだけ集まらないみたいなことがあります。皆も集まらないことを理解しているので強要することもないです。I,Bがほぼ全裸に近いのは、理由があって、インキュバスのハーフだからですね。インキュバスは他に比べて、服を着るのを嫌がる傾向にあります。