63 解毒
「俺の名はライダー。ガンスミスをしている。」
「ありがとうございました、ライダーさん。」
「敬語はよせ。」
「ありがとう、ライダー。ねぇ、ライダー。僕は、どういう状態なの?」
「超強力な毒に侵されている以上。」
「でも感覚的には治ってるように感じるけど。」
「あぁ、治ってはいる。一時はどうなるかと思ったがな。手当がもう少し遅ければ確実に死んでいた。」
「そうかぁ…。」
だが、エクサーにここで一つの疑問が思い浮かぶ。
「ねぇ、ライダー。僕最近、自動で回復魔法が使えるようになったんだ。なのになんで、すぐに毒が回復しなかったの?」
「おぉ、すごいな。フルオートの回復魔法がその歳で使えるのか。」
「うん。最近使えるようになったんだ。」
「やるなぁ。」
「で、なんでなの?」
「毒っていうものは、構造が難しいんだ。だから回復魔法に時間がかかる。」
「うん?」
「切り傷、火傷などなど、このあたりの怪我は、怪我の原因を認識しているから回復魔法が使える。だが、毒やウイルスなんかの自身が関与していない外部的要因によるものに関してはそうもいかない。これらは、自身の体が原因を判明させるまでは、回復魔法が使えない。だから、自身に宿った肉体の自然治癒しか使えないというわけだ。」
「う〜ん、ということは、毒の成分を体が解析しきれていなかったから、使えなかったっていうことか。」
「そうだ。というかその考え方が一番しっくりくるということだ。」
「なんで?はっきりしたことじゃないの?」
「魔法全体に関してはまだ研究途中だ。だから、この回復魔法に関しても、最も有力な説というだけだ。」
「ふぅ〜ん、まぁ、とりあえず、僕は毒が治るのを待っていた方がいいんだね。」
「あぁ。暇ならできる範囲でいい、銃の解体を手伝ってくれ。」
「わかった。」
エクサーはライダーに教わりながらできる範囲で銃の整備を始めた。
まだ毒に侵されているエクサーは、少しだけ震える手を使ってなんとか手伝いを始めた。
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「どのぐらいで治るかなぁ?」
「早くて、後3日か万全に戻すなら5日も見積もっておけばいいだろ。」
「5日かぁ。」
「なんだ?早く治したい理由でもあるのか?」
「実は、ペペルの住人の一部が『ベレノ』っていうギャング組織に囚われちゃって、それを解放しなくちゃいけないんだ。あと一歩のところまで行ったんだけどね。」
「アジトに乗り込んだのか?」
「うん。ボスのセルベロとも喋ったんだけど、いきなりブチギレたんだ。」
「なるほど、この毒はセルベロによるものか。」
「セルベロを知ってるの?」
「いや知らん。ただ、ガンスミスとしていろんな奴らと触れ合っていれば、情報も入ってくるってもんだ。」
「そうなんだ。」
「セルベロ。奴の情報は限りなく少ない。多分全くと言っていいほど表に出てくることはないんだろう。他の幹部の奴ら、ボッカ、オクチオ、オレッチオ、ナソについてはたまに話には聞くが。そういえば、最近、幹部の中でも一番表に出てくるナソって奴の姿を見ないって誰かが言ってたな。」
「!。そうそう、そのナソって名前の悪魔を僕が殺したとかで、セルベロがキレたんだ。」
「ほう。心当たりは?」
「それが全く。そのナソって名前も初めて聞いたし。」
「あの組織は立ち回りが上手い。勝てる敵をしっかり殺る。安定タイプの組織だ。だが、情報を聞く限りでは、博打を仕掛けても十分勝てるとは思うが。」
「なんか僕、結構やっちゃった感じ?」
「そうかもな。依頼をやめるか?」
「いや、やめない。だって困ってるんだもん。」
「なんとも幼いな。」
「大人になって誰かに優しくできなくなるなら、大人になんてなりたくないね〜だ。」
「ガキが。」
ーーーーー
「そうだ。エクサー。」
「ん?」
「セルベロと戦うなら、ちょうどいい。結界を覚えていけ。」
「結界術?『バリア』じゃなくて?」
「『バリア』は結界術の結界をより低コストにより簡易的にしたものだ。本来の結界はさらに広く、さらに強固なもんだ。魔力消費は『バリア』に比べて大きいがな。」
「へぇ〜。どうやってやるの?」
「教えるのは俺じゃない。」
ザッザッザッザッザッ
「ちょうど来たな。結界術を教えるのはこいつだ。」
足音と共に姿を現したのは、白い肌にボサボサでクルクルの長髪、目元に濃いクマがあり、胸と下半身の大事なところがよれた包帯でギリギリ隠れている女の悪魔が現れた。
「名前はI,B。」
ーー終ーー