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DeViL 悪魔生転物語  作者: オクラ
 4章 『復讐の毒花』
66/225

 63 解毒


 地獄・???


 「オレの名はライダー。ガンスミスをしている。」

 「ありがとうございました、ライダーさん。」

 「敬語はよせ。」

 「ありがとう、ライダー。ところでここは?」

 「オレの住処の洞窟だ。」

 「で、僕は今どう言う状況?」

 「超強力な毒に侵されている以上。」

 「やっぱり…」


 エクサーは自分の内面に目を向ける。

 エクサーのハッキリとした最後の記憶はセルベロによる毒の攻撃。毒に自身が侵されているのはなんとなくだが理解できた。


 「治ったのかな?」

 「完全とはいかずとも治ってはいる。一時はどうなるかと思ったがな。手当がもう少し遅ければ確実に死んでいた。」

 「そうかぁ…」


 だが、エクサーにここで一つの疑問が思い浮かぶ。


 「ねぇ、ライダー。僕最近、自動で回復魔法が使えるようになったんだ。なのになんで、すぐに毒が回復しなかったの?」

 「…その歳でか、大したものだな。」


 ライダーはポケットから葉巻を取り出すと、親指の先に火を生み出すと、葉巻に火をつけた。ライダーが葉巻を吸うと、洞窟の中の空気が一瞬にして焦げ臭くなった。


 「うん。最近使えるようになったんだ。」

 「なるほどな。」

 「で、なんでなの?なんで、回復魔法が作用しなかったの?」

 「ふぅ〜…いいか?毒っていうものは構造が難しいんだ。だから回復魔法に時間がかかる。」

 「うん…?」


 「切り傷、火傷、四肢欠損、臓器破壊、風穴。このあたりの怪我は、怪我の原因を認識しているから自動的に回復魔法が使える。治し方もなんとなくだが体が理解しているからな。だが、毒やウイルスなんかの自身が関与していない”外部的要因”によるものに関してはそうもいかない。これらは、自身の体が原因を判明させるまでは、回復魔法が使えない。だから、自身に宿った肉体の自然治癒しか使えないというわけだ。」

 「う〜ん、ということは、毒の成分を体が解析しきれていなかったから、使えなかったっていうことか。」

 「そうだ。というかその考え方が一番しっくりくるということだ。」

 「なんで?はっきりしたことじゃないの?」

 「魔法全体に関してはまだ研究途中だ。だから、この回復魔法に関しても、最も有力な()というだけだ。」

 「ふぅ〜ん、まぁ、とりあえず、僕は毒が完全に治るのを待っていた方がいいんだね。」

 「あぁ。暇ならできる範囲でいい、銃の解体を手伝ってくれ。」

 「わかった。」


 エクサーはライダーに教わりながらできる範囲で銃の整備を始める。

 まだ毒に侵されているエクサーは、少しだけ震える手を使ってなんとか手伝いを始めた。


 「どのぐらいで治るかなぁ?」

 「早くて、後3日か万全に戻すなら5日も見積もっておけばいいだろ。」

 「5日かぁ…」

 「なんだ?早く治したい理由でもあるのか?」

 「実は、ペペルの住人の一部が『ベレノ』っていうギャング組織に囚われちゃって、それを解放しなくちゃいけないんだ。あと一歩のところまで行ったんだけどね。」

 「アジトに乗り込んだのか?」

 「うん。ボスのセルベロとも喋ったんだけど、どうやら虎の尾踏んだらしくて…」

 「なるほど、この毒はセルベロによるものか。」

 「セルベロを知ってるの?」

 「いや知らん。ただ、ガンスミスとしていろんな奴らと触れ合っていれば、情報も入ってくるってもんだ。」

 「そうなんだ。」

 「セルベロ。奴の情報は限りなく少ない。多分全くと言っていいほど表に出てくることはないんだろう。他の幹部の奴ら、ボッカ、オクチオ、オレッチオ、ナソについてはたまに話には聞くが。そういえば、最近、幹部の中でも一番表に出てくるナソって奴の姿を見ないって誰かが言ってたな。」

 「そうそう!そのナソって名前の悪魔を僕が殺したとかでセルベロが怒ったんだ。」


 エクサーは”ナソ”という言葉をセルベロが口にしていた事を思い出した。だが、記憶力の良いエクサーが誰かの名前を忘れる事は限りなく、ナソと言う言葉には全く心当たりがないのは事実だった。


 「ほう。心当たりは?」

 「それが全く。そのナソって名前も初めて聞いたし。」

 「あの組織は立ち回りが上手い。勝てる敵をしっかり殺る。安定タイプの組織だ。だが、情報を聞く限りでは、博打を仕掛けても十分勝てるとは思うが。」

 「なんか僕、結構やっちゃった感じ?」

 「そうかもな。依頼をやめるか?」

 「いや、やめない。だって困ってるんだもん。」

 「なんとも幼いな。」

 「大人になって誰かに優しくできなくなるなら、大人になんてなりたくないね〜だ。」

 「ガキがよ。」


 エクサーの言葉にライダーは孫の戯言を受け流すように笑って流した。

 エクサーとライダーの関係は初動としては良好なものであった。


 「あぁ…エクサー。」

 「何?」

 「ちょうどいいから結界術を覚えていけ。」

 「結界術?『バリア』じゃなくて?」


 エクサーは語感でなんとなく意味は分かるが初めて聞く『結界術』という言葉に疑問符を浮かべる。


 「結界術はバリアの素だ。本来広範囲を防御する事しかできなかった結界術を自分を守ることや、局所部分を守る事に改良し、魔力消費を抑えたのがバリアというわけだ。」

 「へぇ〜。どうやってやるの?」

 「教えるのはオレじゃない…」


 ザッザッザッザッザッ


 「ちょうど来たな。結界術を教えるのはこいつだ。」


 足音と共に姿を現したのは、白い肌にボサボサでクルクルの長い髪、目元に濃いクマがあり、胸と下半身の大事なところがよれた包帯でギリギリ隠れている女の悪魔が現れた。


 「やっと帰ってきたなI,B…」

 「何?ライダー。」


 I,Bは髪を掻きながら冷たく、無気力な声でライダーを見つめた。

 エクサーはI,Bの姿に少しばかり気が引けたのだった。


 ーー終ーー


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