62 ライダー
ーーーーー
「ねぇ、A2。本当にエクサー1人だけで大丈夫かしら。」
「ハハハハハ、心配はないさ。エクサーならきっと無事に帰ってくる。例え、道がどれほど崩れていても。」
ーーーーー
(体が重い、痛い、呼吸がしにくい)
エクサーは少しずつ意識を取り戻し始めてきた。だが、状況としてはお世辞にも良好とはいえず、むしろ、ちょっと無理をすれば、死んでしまうような気すらしていた。
とてつもなく重い瞼を開けたエクサーのいる場所は、多分洞窟のような場所だった。
エクサーの上には、誰かがかけてくれた少しホコリくさい毛布が乗っていた。さらには、目の前にある焚き火、そして荷物。自分のほかに誰かがいるのは明白だった。だが、毒に侵されているエクサーにこれより先を考える力はなく、ただ、ボーッと弱々しい目つきで焚き火を見た。
ザッザッザッザッ
エクサーの耳に足音が聞こえた。この足音は毒に侵され、生命機能の鈍っているエクサーの耳にも確かにこちらに向かってくるように聞こえた。
ザッザッザッザッ
足音はもうすぐそこまで来ていた。エクサーは頑張って足音のする方を見ると、現れたのは、カウボーイボンチョ、カウボーイハット、革のブーツを身につけた男のおじさん悪魔だった。
「なんだ。起きてたのか。」
男は、焚き火を挟んで、エクサーの対面にある丸太に腰を下ろした。
体の全てが痛むエクサーに出る声もなく、ただただ、そのおじさんを見ることしかできていなかった。
すると、おじさんは、ハットを脱ぐと、マルタの後ろから石のすり鉢と棒を取り出した。そして、ポータルからいくつかの草を取り出し、水を加え、それをすり潰し始めた。
ゴリゴリゴリゴリ
かなりの力で削っているらしい、エクサーの耳にはその音と薪の燃える音が聞こえてきた。
一通り、擦り終わったおじさんは、すり鉢をエクサーの元に持ってきた。
「上を向け。」
エクサーは頑張って横に向いていた顔を上に向けた。
「苦いぞ。辛ければ吐き出せ。我慢できるなら我慢しろ。」
エクサーが口を開けると、おじさんはすり鉢の中身を流し込んだ。
エクサーは飲み込み始めた。感覚が鈍っていても感じるほどの苦さ。でもエクサーはしっかりと最後まで飲み切った。
「やっと、飲んだか。」
意識を失ってる間にもこのおじさんは、エクサーに何度も飲ませようとしていたが、エクサーはその度に、吐いてしまっていたのだった。
エクサーの意識はまた遠くに言ってしまいそうだった。
「寝れるなら寝ろ。生きているかは賭けだが。」
エクサーの意識はシャットダウンしてしまった。
ーーーーー
次にエクサーが目を覚ました時、それは意識を失ってから、そう時間が経っているわけではなかった。
この前よりも少しだけ体は楽に感じた。それでも寝返りをするのも一苦労な状態だった。
この前と同じようにエクサーが目を覚ましたぐらいで、おじさんが帰ってきた。
そして、また同じ一連の動きをし、エクサーにすり鉢の中身を飲ませると、エクサーは寝てしまった。
ーーーーー
あれから数回、同じことを繰り返し、エクサーは、だいぶ良くなって、カサカサだが、声が出せるぐらいにはなっていた。
「腹、減ってるだろ。これを食え。」
おじさんはエクサーの前に緑色をした麺を、エクサーに差し出した。
震えてしまう手でなんとか器を持ち、エクサーは麺を啜った。
少し苦いが上手い具合に旨みも感じる一杯。
「体調はまぁ、ぼちぼちというところだな。できたらでいいが、寝てる時に魔力を意識的に多く流しながら寝ろ。」
エクサーはなんのこっちゃわからなかったが、とりあえず言われた通りにして寝た。
ーーーーー
次に目を覚ました時、エクサーの状態は、ちょっと重めの風邪を引いた時と同じような状態になっていた。
「あの、ありがとうございます。助けてくれて。」
「見つけたのは、俺じゃない。馬の散歩中、たまたまあいつらがお前を見つけて、拾っただけだ。だが礼は受け取っておく。」
「あの、僕、エクサーといいます。」
「そうか、俺の名はライダー。ガンスミスをしている。」
ーー終ーー
ライダーが出てきましたね。特にこの能力に優れてるってことはないんですが、ガンスミスってことで、銃の使い方は負け知らずです。早撃ち速度は生身で0.2秒です。魔法強化ありでもっと早くなります。
もしかしたら明日、お休みもらうかなぁと思います。