60.5 ナソとロイド
タッタッタッタッタッ!
息を切らし、運動神経が絶対に悪い走り方で、白衣を着た、気の弱そうな女の悪魔がどこかに向かって精一杯に走っていた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、」
途中、何回か壁にもたれかかって休憩をしたが、またすぐに走り始めた。
女の悪魔が急いで走っていったその先の扉を勢いよく開け、そこには、3人の悪魔がいた。
「オレッチオ、どうした。いくら今日、ナソが帰ってくるとは言え、そんなに息を切らす必要はないぞ。」
この部屋に向かって走ってきた、女の悪魔の名は、オレッチオ。ギャング『ベレノ』の幹部であり、担当は『全領域計画管理者』。
そして、オレッチオに話しかけた、ガタイのいい男の悪魔の名は、ボッカ。『ベレノ』の幹部で、担当は『戦闘』。
この部屋には女の悪魔がもう1人。名をオクチオ。気の強そうな見た目をした『ベレノ』の幹部で、オレッチオの姉。担当は『全任務補佐』。
最後に、『ベレノ』のボス、セルベロ。担当は『絶対者』。
「た、大変!ナソの生命反応が消えた。」
「「「!」」」
ボッカは勢いよく席を立った。
「どう言うことだ!」
ボッカの怒声が部屋中に響いた。この怒声に恐怖を感じたオレッチオはびっくりして、少し涙が出てしまった。
「大丈夫?オレッチオ。落ち着いて何があったかわかるところまで言ってみて。」
そんなオレッチを姉であるオクチオは優しくなだめた。
「うぅ…、生体反応が途切れた…。場所は、トバルカイン魔法学校。これ以上の情報はわからない。」
「そうか…。」
流石に大きな声を出しすぎたと反省したボッカは、オレッチオの話を聞くと、静かに腰を椅子に下ろした。
「ありがとう、オレッチオ。座って。」
オレッチオは椅子に座った。
「どちらにせよ、確認しないとわからない。だから、なんとか確認を。」
「俺の部下を行かせる。確認が失敗しても尻尾を切ればいい。今、ナソがどういう状況か、それを知るのが第一優先事項だ。」
「そうね。それでいいかしら、セルベロ。」
「あぁ、」
「だ、大丈夫?」
セルベロの顔には力がなかった。深い絶望に沈んでいるような、そんな顔をしていた。
「とりあえず、確認を。」
「そうね。」
ーー終ーー
ナソ(ロイド)が瞬間に何故、生体反応が消えたことがわからなかったの?と思うかもしれませんがこれには理由があります。
あの時にエクサーが魔強化(暴走)をして、とてつもない量の魔力が放出され、その影響で生体反応の確認が鈍っていました。例えると、部屋の中に煙が充満して、何が何だか確認できないような状態みたいなものです。