60 ナソとロイド
ー 時はエクサーが悪魔になるより前に戻る。 ー
「ナソ、説明をしろ。」
「説明も何もねぇよ。そのまんまだわ!」
『ベレノ』のアジトのとある一室は不穏な空気を作っていた。
この部屋にいたのは、ボスである『セルベロ』とパンキッシュな髪型と格好をした男の悪魔。かつて、エクサーがトバルカイン魔法学校で戦った『ロイド』だった。だが、ここではロイドではなく、ナソと言われていた。
2人は長机の端同士に座りながら喧嘩をしていた。
セルベロは怒り、ナソはそれを逆撫でするようにヘラヘラと怒りを見せていた。
「なぜ、逃したりした。1人残らず殺れと言わなかったか?」
「だぁ〜か〜ら〜〜〜〜〜。しょうがなかったって言ったろ?俺も殺った2つもりだったんだ。でもまさか、地下通路で逃げるとは思わなかったんだよ。」
セルベロとナソの2人の喧嘩は平行を極め、両者ともに怒りを溜めていった。
「ナソ、お前を信用していたんだ。だからこそ、今回の失敗にはがっかりしている。」
「失敗〜?聞き捨てならねぇなぁ。任務は終わらせた。ただちょっと見落としがあっただけだろ?」
「それがダメだと言うんだ。最初に言ったはずだ。今回は全ての住人を殺せと。」
「もちろん忘れてなんてねぇよ。でもしょうがないだろうが。逃げられちまったもんは。」
「なぜ、追うと言う選択をしなかった。」
「チッ、めんどくさかったんだよ。逃げたのはガキ1人に老婆だけだぜ?こんなのに追う必要を見つける方が難しいってもんだ。」
「ナソ。最近のミスの多さは、前にも増している。頭を冷やせ。」
「冷え冷え冷え冷え、キンッキンのカッチカチだぜ。なんならここで冷やしてやろうか?」
「お前から、無期限でベレノ幹部の地位を剥奪する。」
「はぁ?」
「以上だ。これからオレッチオの連絡が来るまでお前は、『ベレノ』を名乗ることを禁止する。」
ナソの額から、汗が流れる。
まさか、ここまでの罰が来るとは思っていなかったからだ。
「おいおい、なんかの冗談か?」
「いや、冗談ではない。」
「俺が担当している収益部はどうする。俺の権限で動かしてるんだぞ。」
「なんとかする。それよりもお前はしっかりと反省しろ。」
「あ”ぁぁ、わかったよ。クソが。どっか行ってやっるよ。お望み通りな。」
セルベロの言葉に理不尽さを感じ、ヤケクソになったナソは勢いよく外に出ていった。
もちろん、言うことを聞かなかったナソにセルベロを怒りを見せていた。
ーーーーー
「チッ、あ〜あぁ。」
ベレノの名を奪われ、一般となったナソは適当な街の裏路地を歩いていた。
ナソは心の中で考えていた。どうすれば『ベレノ』に戻れるのかを。
そこに偶然、浮浪者とは考えずらい容姿と身なりの子供の悪魔を見つけた。これは何かあると直感的に踏んだナソは、話かけて見ることにした。
「おいおい、しけてんなぁ。」
ナソは、その悪魔に睨まれた。
ここから、ナソは話を進めた。
「名前がまだだったな。俺の名はロイド。」
取ってつけた適当な名前。
『ベレノ』として行動できなくなったナソは名を捨て、ロイドと名乗った。
ーーここから第一章の『エクサー襲撃』に繋がる。
ーー終ーー
ナソ=ロイドです。
セルベロもナソのことが嫌いなわけではありません。なので、ベレノから除籍させることもなく、一時的に権利の剥奪のような形を取りました。