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DeViL 悪魔生転物語  作者: オクラ
 4章 『復讐の毒花』
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 56 『level 666』


 地獄・ペペル


 地獄の海辺に位置する街『ペペル』。

 漁業が発展しているこの街は海鮮が名物で観光地としても賑わいを見せる活気あふれる街だった。


 しかし、観光客がいなくなり、時刻が夜を刻み始めると、この街は地元民が酒を飲み歩くなんともローカルな街へと変化し、観光客がいる時とはまた違った賑わいを見せていた。


 「えっと、とりあえず、言い訳でいいんだっけ?とかってあります?一応酌量の余地があるかもしれないので。」


 皆の盛り上がった声がかすかに聞こえる距離にある一軒の家。電気の付いていない家を月が赤く照らしていた。その家の中には床に座る、顔がパンパンに膨らんだと見下ろすように椅子に座るエクサーがいた。


 「いいんですか?何か最後に喋っておかなくて?」

 「…………」

 「はぁ…とりあえず、あなたがこの12年の間に盗んだ魔石の数は256個、そのうち回収できた数は118個。ん〜。他はどこにやったんですか?」

 「………」

 「まぁ、大丈夫です。名義を毎回変えて、少しずつ小出しにして競売に出したことも調査でわかっています。回収はできませんが。」


 エクサーの前に座る悪魔は意地でもエクサーと顔を合わせる気はない様子だった。


 そんな悪魔を見たエクサーは少し呆れた顔をした。


 「でも、これだけで殺せって言うのもなんかおかしな話ですね。なんていうか生きるためにお金が欲しいって言うのは当たり前のことでわかるんですよ。お金に困ったあなたが盗みを働いてしまうのもある種、同情の余地があるというか…、もしあなたが盗みを働かなくては、その時死んでしまったのであれば仕方がないと言えば仕方がない。中途半端にくたばるために誰も生まれてはこないから。」


 急に同情を見せた悪魔は、エクサーとやっと目を合わせた。


 「でも、これはエクサーという側面の考えです。エクサーとしては殺すほどではないんじゃないかと思います。ですが、そうもいかないようです。僕は、エクサーだけでなく、level 666の一員としても判断しなくちゃいけなくなったんです。なので、ごめんなさい。」

 「う、うあ”あ”あ”あ”あ”!!!」


 エクサーが悪魔の顔の前に手を出すと、悪魔の体は崩壊を始め、散り散りになった。


 悪魔の体が髪の毛一本も残さず散ってしまうと、部屋にはエクサー1人だけが残された。


 「あぁ〜、疲っかれた。」


 エクサーは椅子から立ち上がり、伸びをした。


 ーーーーー


 数日前


 「一体どこに行ってたんだ!」


 朝起きて一発目のF,Dの怒号はなかなか効くものがあった。


 「どこって、とても有意義な時間を…」


 怒鳴られているのはいつものことのようにA2。怒るF,Dを軽々と(あし)らう様子にF,Dもいつものことのようにブチギレていた。


 「何が有意義だ!この際どうでもいいんだよ!!」

 「まぁまぁ、なんとかなったじゃないか。」

 「結果論だ。そんなものは。」

 「まぁまぁ、いいじゃない。その結果論がなんとかなったんなら。」


 エクサーは聞き流しながら朝ごはんのパンをちぎって食べた。


 「おやおや、ここに座っていらっしゃるは今回の騒動のMVPであるエクサー君ではないか。」

 「コラ!話は終わってないぞ!!」


 A2はF,Dをガン無視してエクサーに近づいてきた。


 「よくぞ、ヴァットを倒した。素晴らしいことだ。」

 「ありがとう。」

 「そんな君にこれをあげよう。」


 A2はエクサーにそっと666の形をしたバッジを差し出した。


 「「「「!」」」」


 エクサーは何も考えずにとりあえず受け取った。


 「もうそれあげちゃっていいの?」

 「あぁ、もう大丈夫だろう。自分の身を自分で守れるぐらいには成長した。」


 エクサーはバッジを手にした感想は小さい見た目からは想像できないほど、どっしりとしていた。


 「エクサー、いいかい?これは私たちのチーム『level 666』の一員としての証だ。」

 「あぁ〜、なんか最初に会った時に言ってたね。」

 「そう。我々『level 666』の仕事は…なんでも屋だ。」

 「なんでも屋?」

 「そんなふうに言われれば聞こえはいいが、なんでも屋の前に『裏の』が必要になってくる。」

 「裏のなんでも屋ってこと?」

 「そう。地獄といえども社会を形成できるぐらいにはモラルもプライバシーもある。人間に比べたらそれほど煙たくはないが。そんな地獄で表立って依頼できないことをここに持ち込んで、それを我々が処理する。と言うことだ。」

 「じゃあ、殺しも?」

 「もちろん殺しも。」


 なぜかウッキウキのA2。


 「っと言うことで、エクサー。君にはこれから『level 666』として頑張ってもらう。依頼を任された時にはこのバッジをつけておくといい。」

 「わかった。」

 「と、言うことでいきなりだが、今日フォルテに依頼が入ってるのでそれをエクサーに振って初仕事にしよう。いいかい?フォルテ。」

 「いいよ、いいよ〜!」

 「ありがとう。」

 「エクサー頑張るのよ。」

 「うぅ〜〜ん。」


 ーーーーー


 てな感じでエクサーはいきなり『level 666』の一員となり初仕事を終えた。


 順序としては、S,Bが依頼を受け取り、内容に応じてA2が決める(A2がいない時はF,Dがやる)と言うことになっていた。大体の依頼はフォルテかピアノで事足りるが、大きな依頼になれば、多人数編成などの形をとっていた。A2は戦わないのかとエクサーが聞いたところ、A2は誰も勝てない時にしか出ないらしい。


 「あぁ〜〜、疲れたなぁ〜。」


 今回の依頼は盗まれた魔石の在り処の調査(残っていれば回収)と犯人の抹殺だった。


 ぐぅ〜〜〜〜


 「お腹すいたな。」


 エクサーは自分のお腹のSOSを受信すると、適当なご飯屋に行くために家を出た。

 子供が1人で悪魔達が騒いでいるところに行くのは少し気が引けるため、なるべく静かな店に入ることにした。

 大通りの少し裏に入った道にある小さなレストランを見つけ、エクサーはこの店に入った。


 「いらっしゃい。おやおや、お子様1人ですか?」

 「ダメですか?」

 「構いませんよ。」


 店の中は薄暗く、エクサーの他には誰もいなかった。


 席についたエクサーは、机の上のメニューを見て、店長おすすめの一品なる物を注文した。

 注文から3分ほど経って、店主が料理を運んできた。


 机に置かれた皿の上に乗っていたのは、溶けたテーズの塊だった。


 「?」


 ぱっと見なんだこれと言ってしまいそうなエクサーだったが、調理と一緒に運ばれてきたナイフとフォークを見るに切って食えと言うことだと解釈した。


 湯気が踊るほど熱々のチーズにナイフを入れると、サクッと言う音が鳴り、中身を見ると2枚の食パンに炒められたトマトと肉が挟まっていた。


 一口サイズに切り分け、口に入れた瞬間、チーズとトマトの香りが鼻を通った。


 そしてエクサーに衝撃が走る。なんとトマトが主役を張っていた。普通の料理では味の大半を占めるであろうチーズと肉がまさかのこの料理では脇役という事実。あくまでも主役はトマトで、それを引き立てるための役割。


 絶対にトマトが主役を張ることはないという思い込みの意識外から殴られたエクサーは、この衝撃を受ける準備ができておらず、目を今までにないぐらい開いた。


 さらには、このトマトと肉の炒めたものはなんと凍らないぐらいに温度が調節されているぐらいに冷えていたのだ。トマトが冷えているのは許容範囲だが、肉が冷えているというのは食べる側としては脂などの観点からあまり望むべき調理法ではない。だが、この料理ではそれが許されるのだ。


 なぜか?


 理由はチーズとパンが火傷手前ぐらいアツアツだったからだ。


 中は冷え冷え、外はアツアツ。時間の経過とともにお互いが調和し合い、結果的に適正温度へと昇華。肉を冷やすことの懸念点である脂はパンとチーズの熱でちょうど良く呼吸を始めていた。


 至極の一品。食事の際の時間すら計算されたこの一品に打ちどころなど存在せず、満足満足大満足の食事だった。


 店主のサービスでコーヒーをサービスしてもらったエクサーはそういえば宿がないことを思い出した。


 お会計と一緒に店主に2日ほど泊めてくれる宿はあるかと聞くと、家の一室が空いているからそこに泊まって行きなさいと言われお言葉に甘えた。


 店の2階の言われた部屋に入ると、中は誰かが住んでいるのかと思うほどに綺麗にされていた。


 幸福度の高いエクサーはとりあえず寝ることにした。


 ーー終ーー


 

 やっと出ましたね、『level 666』。一番最初にA2が喋ってたものはこれでした。


 この章は、一章を考えた時に書きたいなぁ、と思ってました。そんな大層なバックストーリーは書けませんが、精一杯自分の頭の中を形にしたいなぁと思います。

 多分、ラーバルとロイドが出会った時の会話に『ベレノ』とは明言されていないもののギャングとは言ってあったんじゃないかなぁ、と思います。後付けではないです。

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