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DeViL 悪魔生転物語  作者: オクラ
 4章 『復讐の毒花』
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 54 訪問


 地獄・レンの屋敷


 この日の風は穏やかで、それでいてどこか不穏さを感じるものだった。


 『バブルス』が収束し、それでも経済への影響はまだまだ残ってはいたが、あとは時間と共に解決するという結論のもと、レンは自宅でゆっくりと茶と和菓子を堪能していた。


 「ホホホホ。老いるとこの味を欲してしまうわい。」


 茶と和菓子の組み合わせに舌鼓を打つレン。落ち着きを感じるこの時を何も拒まず真正面から堪能していると、その耳に、自身の自慢の日本庭園の地面を歩く音が聞こえた。


 「お〜、いたいた。爺さん。」

 「なんじゃ、お主()?わしの自慢の庭に土足で入るとは。」


 庭にいたのは、1人のガタイがよく、横にデカく筋骨隆々の男の悪魔だった。


 「ちょっと用があってよ。」


 ガタイのいい男の悪魔が一歩横にずれると、その後ろに2人の男女の悪魔がいた。

 1人は気の強そうなスラッとした体格の女の悪魔。

 もう1人は黒いコートを着た、杖をついた少年だった。


 「その顔は…」


 レノは少年の方に見覚えがあった。


 「誰かと思えば、今話題のギャング『ベレノ』のボス・セルベロではないか。」


 少年のような悪魔の名前はセルベロ。

 ここ2年で地獄のギャング界の頂点に立ったギャング組織『ベレノ』のボスだった。


 セルベロは杖に重心をかけながら、レンの方に向かって歩き始めた。


 「あっ、セル。」


 女の方がセルベロの腕を掴もうとしたが、セルベロはそれを振り払った。


 「必要ない…」


 セルベロの一言はその容姿と体格からは想像できないほどに、ずっしりと内臓全体に響いた。


 「ねぇ…爺さん。仲間の”ナソ”が誰かに殺された。何か知ってるかな?」

 「さぁ、お前さんたちは最近勢力を付けたんじゃ、知らぬな。」

 「顔はこれだ。」


 セルベロがズボンのポケットから取り出した写真に写っていたのは、なんとエクサーが殺したロイドの顔だった。

 だが、そんなことはレンからしてみれば知りもしない情報。レンは写真に全くと言っていいほどに心当たりがなかった。


 「さぁ〜やっぱり知らんのぉ〜。」

 「そうか……」


 レンの全く知らないという発言に偽りがないと直感的にセルベロは感じると、写真を丁寧に折りたたみ、ポッケに入れた。そして、レンに背中を見せ、その場を離れようとした。


 「待て、お主ら。」

 「「「?」」」

 「わしの自慢を荒らして帰宅か?いいご身分者のぉ。」


 レノの声色がいきなり少し荒く、重く変化し、セルベロ達を呼び止めた。

 レノは膝を支えにゆっくりと立ち上がると、セルベロ達に向かって歩き出した。

 その()は、人間の何十倍もの時を生きたとは思えないほど力強さを感じるものだった。


 「なんだ?爺さん。やる気か?」


 だが、男の悪魔と、女の悪魔はこれに怯みを見せなかった。それどころかレンの変化に応じる戦闘体制を示して見せた。セルベロを足こそ止めたが、また再度レンに背を見せて歩き出した。

 その態度を見たレンはいきなり額に血管を浮かび上がらせた。


 「(わっぱ)ども、跪けいィ!!!」


 レノの怒りの怒号は体を震わせるほどの力強さがあった。

 するといきなり、男と女の悪魔はその場に跪いたのだ。


 「ク…クソッ…」

 「なんなの…これ…」


 2人はなんとかこの体制から戻ろうと、体を動かそうと試みる。

 しかし、どう(りき)んで見たところで動かせる気配は一切なかった。


 レンに宿し魔術『命令』

 自身の能力の一つを基準として、その能力が相手を上回った場合、強制的に命令を実行させることができる。


 ただ、この状況でレンの魔術が効かない者が1人存在した。


 「やはり、新進気鋭のリーダーには効かんか…」


 ーーーセルベロだった。


 「お前さん、今のワシの魔力量を超す魔力量を備えとると言うわけじゃな…」

 

 レンの魔術は無条件で命令に従わせる事ができるほど便利なものではない。対象者に対して魔術が効果を持つ条件があった。

 それはレンのステータスと相手のステータスを比較して、自分がそれを上回った場合、魔術が成功するのだった。

 今回レンが基準としたステータスは自信のあった魔力量。しかし、レンは見誤った。

 セルベロはレンが想像しているよりも遥かに膨大な魔力を有していた。そして結果、魔術はセルベロにのみ不発となったのだった。


 「爺さん…さっさと2人を解放しろ…早く…」


 セルベロは内臓に響く声で、顔を半分振り返らせてレンに忠告をした。


 「ホッホッホッ。わしは今、お主らの無礼のおかげで虫の居所が悪くてのぉ〜。」


 顔は笑ってセルベロに言葉を返した。

 しかし、額から一滴の汗が滴り落ちた。


 (セルベロ…少し甘く見ていたかもしれんのぉ…少し気取られてしまいそうじゃわい…)


 レンの目にはセルベロがとても大きな存在に見えていた。

 きっと元のセルベロの体が小さいと言うギャップも相まってだろう。背格好からは想像できないほど強大な敵を目の前にしているのではないかと思い始めたのだ。


 ジャリッ…


 すると、セルベロは庭の石を踏んだ音をその場に残し、レンに蹴りを入れた。

 レンは後ろに蹴り飛ばされると、屋敷の奥に飛んで行き、壁を何枚も突き破った音と倒壊音が聞こえた。


 セルベロが2人の様子を見るとさっきと変わりなし。

 命令が解除されないということはレンにまだ意識があるのだと認識した。


 それも束の間、屋敷の奥からセルベロに向かって魔力砲をが放たれると、セルベロを庭を囲う壁に叩きつけた。


 「お返しじゃよ。」

 「ゴフッ…」


 セルベロは思わず口から血を吐いた。


 「ホッホッホッ。贈り物には礼儀で返さんとなぁ。」


 レンは自慢の長い髭を摩り、笑って言った。


 「『毒鳥』…」


 ただ、セルベロも黙っていなかった。

 セルベロは、自身の体から作り出した毒で大きな鳥を形作ると、一直線にレンに向かって飛ばした。


 「まずいっ!」


 レンは一直線に向かってくる毒の鳥を紙一重で交わす。

 毒の鳥はそのまま屋敷に突っ込んだ。さらにこれでは終わらず、毒はレンの屋敷の床や壁、屋根や柱に飛び散ると、急速に屋敷を溶解し始めたのだった。


 「なんたる攻撃。」


 流石のレンも冷や汗をかいた。

 自分が避けきれなかった事を想像すると恐ろしい毒の強さをしていたのだ。


 冷や汗をかいているレンだったが、自身の真正面から追い討ちをかけるように、4匹の龍の形をした毒が迫ってきていた。


 レンはこれを限界まで引き付けて『テレポート』そして距離を取った。

 だが、毒の龍は軌道を変え、レンを襲った。


 「追尾性能がついておるのか。」


 レンは風を切って毒の竜を避け始めた。


 「!?」


 (まずい、挟まれた。)


 避けることに夢中になっていたレンはついに四方を毒の龍に挟まれてしまった。


 その瞬間、レンの意識が一瞬遠退いた。


 四方から挟み撃ちをするはずだった龍は体を捻り、上空へ登ると絡み合い1匹の龍へと姿を変え、レンを上から飲み込み、一緒にセルベロの前へと落下した。

 

 セルベロがその様子を見ると、レンは毒に侵されてもなお、若干の意識が残っていた。


 「なんじゃ…もう命令は解除したわい。」


 セルベロは見下すようにレンを見ていた。

 すると、レンにまとわりついていたどくがセルベロの元に帰って行った。


 「お前さん…なんともバケモノじみておるな。」


 レンは地面に寝転がりながら掠れ声でセルベロにそう告げた。

 セルベロは立ち止まり、そんなレンにトドメを刺すようにセルベロは毒の触手を一本、レンに突き刺した。


 「爺さん…もし”ソナ”を殺したやつを見つけたら教えろ。そいつは殺さなくちゃいけないんだ。」


 セルベロは、動けるようになった男と女を連れてこの場を後にした。


 ーー終ーー



 お久しぶりです。ごめんなさい、時間が空いてしまって。この先の話を練っていたらちょっと時間がかかりました。

 今回の章はなるだけ、投稿が止まらないようにします!頑張ります!

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