53 黒腕終幕
あれから約1週間、『バブルス』は抗体の影響により完全に消滅。この一連の出来事の首謀者はヴァットであり、この窮地を救ったのはグガットの息子であるケレットであると、報道された。
結果、ケレットは救世主のような扱いを受け、上りに上がった好感度を武器にグガットの会社とヴァットの会社を合併し、統括者に就任。まだまだ不安定を解消しきれない経済界の穴埋めを行ない、全土の復旧作業にも尽力した。
ヴァットの死体は天国へ輸送。地獄全土を混乱に陥れたとして『大罪人』としての判断のもと、完全消滅。リンドに関してはヴァットと共に天国に輸送されたが、魂がすでに肉体から切り離された状態であったため、ケレットの元に返還され、その後はケレットが受け取った。
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地獄・クリスト城
「あぁ〜〜。おはよう。」
「あら、おはよう、エクサー。随分寝たわねぇ。」
「うん。」
大体の事態が収束し、一旦平和な日々が戻ってきた。
「あれ?ピアノは?」
「フォルテと一緒に買い物に行ったわ。」
「なるほど。僕も後で行こうかな。」
「いいじゃない。行ってきなさい。」
「うん!」
なんやかんやあって、いつもの日常に戻ったようだった。
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天界・ミカエル宮・庭園
「地獄は大変なことになっているようですが、いいんですか?」
「なんとかなるさ。」
庭園に置かれた机の上には2つのティーカップ。1つのティーカップの前にミカエルが座り、もう一つの前に座っていたのはA2だった。
「では、しっかりと答えていただきましょう。あの子、エクサーとは何者ですか?」
「ハハハハハ〜!」
A2は高らかな笑い声を庭園に響かせた。
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自身の和風建築の豪邸で、お茶と和菓子をレンは楽しんでいた。
この落ち着く空間こそ、歳を多く重ねたレノには心地よかった。
「ん?」
レンは部屋から見える庭に気配を感じ、目をやると、そこにはゴツい体の男の悪魔と、パンクな風貌の女の悪魔、そして、140cmほどの身長のバサバサのまつ毛に大きな目を備えた少年(?)のように見える悪魔の3人がいた。
「おい、爺さん。邪魔するぜ。」
ガタイのいい悪魔がズカズカとレンの方に歩み寄った。
「これはこれは、今話題沸騰のギャングたちがどうしたのだ?」
「ボスがよぉ、聞きたいことがあるようでなんでな…」
ガタイのいい悪魔が親指で後ろの少年(?)のような悪魔を指差した。
ーー終ーー
これでこの章は一旦終わりです。
リンド、結構可哀想な人生でしたね。もう少し報われる路線で書いた方がよかったかな、なんて思いましたが、まぁこれはこれでいいかぁ、と思ったり。