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DeViL 悪魔生転物語  作者: オクラ
 3章 『黒腕』
52/208

 50 哀れに非情3


 地獄


 村長の目の前にいる2人の男はヴァットとグガットと名乗った。村長はこの2人を目の前にするや否や、とてつもない強者のオーラを感じた。グガットの方はガタイも相まって戦闘向きに見えるが、ヴァットはそうではない。だが、それでも2人は同じ匂いがしたのだ。本当に2人のオーラが単純な経営者の手腕によるものなのか分からなかった。


 村長は、今の自分の村の状況とお金に困っていること、なかなか貸してくれるアテが見つからないことを伝えた。

 もちろん、これに2人はいい顔を示すわけもなかった。


 「他でも言われているように村長さん、あなたに金を貸すメリットは残念ながら全くない。」

 「私もグガット同様にそう思います。」


 あっさりと断られた。だが、ここで食い下がるわけにはいかないと感じた村長は、お金を貸してもらえれば、村一丸となってなんでも協力する事を伝えようとした。


 「もし貸して頂ければ「ではこういうのはどうですか?」


 村長の言葉にヴァットが被せてきた。


 「私たちもこの薬物事業はまだまだ不安定です。協力の数はいくらあっても余りません。なので、お金を貸す代わりに私たちを手伝ってください。」

 「その手があったかヴァットよ。」


 またと無いチャンスがヴァットに降り注いできた。この提案を断るという選択は村長にはできなかった。食い気味に村長は頭を下げた。


 「お、お願いします!」

 「わかりました。では、お金を貸します。これで復旧に励んでください。ある程度復旧したところで協力をお願いしますね。


 お金を借りることに成功した村長の村への帰りはいつもより足取りが軽かった。


 「()()に、いい場所を手に入れましたよ。グガット。」

 「どこだ。」


 ヴァットの指はビルの屋上から見える村長を指差した。


 「あの者の土地。」


 ヴァットは尊重を見て不適に笑った。


 ーーーーー


 数日後 


 お金を手にし、村の復旧は順調に進んでいた。


 というか順調に進みすぎていた。その理由はヴァットとグガットが親切に復旧作業の手助けの斡旋をしてくれたからだった。


 「いやぁ、ありがとうございます。お2人とも。」

 「構わん。」


 今日の分の復旧作用を終え、3人は村を出て、バーに来ていた。


 「ところで、村長さんのパートナーの方は、もしかして大魔族ですか?」


 ヴァットが村長に聞いた。


 「やはり、気づいていましたか。そうなんです。」

 「でもよ、なんで大魔族がここに?」

 「ポベロは大魔族である自分を嫌っています。だから、いつかの内戦の最中に大魔界から命懸けで、ここに来たんです。これぐらいしか、私にも教えてはくれません。なので私も深くは詮索しないようにしています。」

 「そうなんですね。」


 ーーーーー


 村の復旧は想定の何倍も早く終了。村長は契約を守るべく、2人の事業に協力をした。


 村は薬物産業の元となる植物の栽培を始めた。


 だが、薬物というものが皆々に浸透するのは、まだ先の話。薬物への不信感の強い村人にそれを直に伝えず、野菜の生産と題して、村人たちは薬物とは知らず植物を栽培した。


 そんな時、村長にある知らせが入った。


 「村長大変です!」

 「どうした?」

 「土地を開拓していたら、水源とは別に小さな魔石の源脈を見つけました!」

 「何!?」


 この頃の魔石は大変高価に取引をされていた。そのため、魔石の原脈を当てることは、金が大量に懐に入ってくるということだった。


 このことをすぐにヴァットとグガットにも報告。しかし、これに関しては契約外の話だったために2人が干渉をすることはなく、村の長である村長は大変に裕福になった。


 ーーーーー


 「あなた、今夜は…「今日も仕事だ。」


 そう言って村長は家を出て行った。


 金が多く手に入ってからというもの、村長は仕事と言って家を空けることが増えた。ポベロは寂しさを感じながらも必死に頑張る旦那を心の中でいつも応援していた。


 ーーーーー


 「お、来た来た。こっちだぜ〜!!」


 仕事と言って家から出てきた村長の向かった先は、仕事でもなんでもない可愛い女悪魔たちがたくさんいる、会員制クラブだった。


 魔石の原脈を見つけてからいうもの潤いに潤いまくった村長は、金遣いがどんどん荒くなっていった。


 暗い部屋に目がチカチカするほどのライトアップ、爆音の音楽、客の吸うたばこ煙、まさにクラブという空間。飲み仲間であろう悪魔達の座るソファに村長は座った。


 「いやいや、遅れた。嫁のやつが飯は食えって最近うるさくて。」

 「そうかそうか、おーい!ねぇちゃん達〜、懐が熱々のお父さんが来たぜぇ〜。」

 「「「「「キャーーーー!」」」」」


 露出度の高い服を着た、ねぇちゃんたちが、走ってこちらに向かってきた。


 そして、ソファの空いた場所に座り始めた。


 「おい、ゴミ箱をとってくれ。」


 村長は隣に座った、ねぇちゃんにそう言った。


 「どうぞ。」


 手渡されたゴミ箱を受け取ると、村長は喉に指を突っ込むと、ゲボをゴミ箱に吐いた。


 「おいおい、何やってんだよ〜。」

 「不味い飯が腹に入ってたら、美味い酒が台無しだ。」


 ポベロがせっかく旦那を思って作った夕食を村長は簡単に吐き出した。


 「ヒュ〜、いかれてんねぇ〜!」


 ーーーーー


 それから数時間後…


 酔いも回ってきた頃、自制のリミッターの外れた村長は赤裸々に自分語りを始めた。


 「おい、嫁さんとは最近どうよ。」


 村長に向かって飲み仲間の1人が聞いた。


 「鬱陶しい、鬱陶しいだけだよ!!」


 村長は急に飲んでいたグラスを壁に向かって投げると、激昂した。


 「やっぱり、結婚なんてするんじゃなかった。」


 そう言うと村長はペチャクチャペチャクチャ喋り出した。


 「大魔族と結婚なんて、リスクの塊だ。街中に行けば指を刺され、俺まで悪者扱い。大魔族と結婚した俺をみんなすご〜いって持て囃すと思ってた俺がバカだった。」


 村長が大魔族であるポベロ結婚した理由は、自身の株を上げるためだった。

 大魔族と結婚できるほどの大きな懐を持っていると皆が思い、自分に尊敬の目を向けると村長は思っていた。だが、現実はそうはいかず、村長の考えとは逆の方向に現実は進んでいった。


 「最近気づいた。幸せとは何か…幸せってのは、自分の欲に100%忠実に生きることだ。今、俺は生を実感してる。生まれて初めて泣いた時と同じように!今の俺には嫁も子供もいらない。金と俺がいればいい!!!」


 正真正銘のクズの極み。だが、大金も持つことで評価と権力の得られるこの社会では、それが許されてしまう。もしこれにポベロが涙を流して怒りを現しても、ただのノイズとして一蹴されしまう。これが社会の形だった。


 それからポベロに対する愚痴を散々喋り続けた。そんな村長の隣にある女の悪魔が座った。


 村長はその隣に座った女の顔を見ると、目を見開いた。

 体型、容姿ともに村長のどタイプの女だった。


 その女は、村長に顔を近づけると、村長の頬を触った。


 「私を見てどう思う?」

 「美。」


 村長は女から目が離せず、そのまま抱きついた。


 「ふぅ〜、あっついねぇ。ちょっとトイレに。」


 そう言うと、飲み仲間が1人立ち上がり、トイレに向かった。

 トイレに入った飲み仲間は、誰かに連絡をした。


 「もしもし、社長。もうそろそろ、頃合いに思います。」


 飲み仲間の声は別人の声へと変わっていた。


 それから数分会話のキャッチボールを続けた。


 「では失礼します。」


 男はもう一度、喉を触り咳払いをし声が元に戻ったことを確認すると、席に戻った。


 ーーーーー


 同時刻


 グガットとヴァットは高級なレストランで食事を摂っていた。

 薄暗い個室でうっすらと流れるオーケストラの生演奏と2人の微かな食器の当たる音。


 「グガット。」

 「なんだ。」

 「()()をはじめようか。」

 「もういいのか?」

 「えぇ。」


 何やらヴァットは不敵に笑った。


 ーー終ーー

 

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