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DeViL 悪魔生転物語  作者: オクラ
 3章 『黒腕』
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 48 哀れに非情


 地獄・???


 ここは荒野に佇む、人口100程度の村。

 街からの距離も遠く、一見土地は乾燥している。ではなぜ立地、アクセスともに悪いこんな街で村を作って悪魔たちが生きているのか。 

 それはこの村の下に使い尽くせぬほどの大きな水源があり、乾燥を好む植物の栽培や家畜の養殖で街との良好な交易を築くことができたからだった。


 そんな村にある、他よりもほんの少し大きな家にとある1人の悪魔が帰ってきた。

 少し痩せており、着ているオーバーオールにはうっすらと土が残り、クワを持って帰って来た悪魔は、玄関にそのクワを置くと玄関の扉を開けた。


 「あら!おかえり。」


 男が家に入ると、その先には灰色の肌に緑の目をした悪魔が料理を作っていた。


 「いやぁ、疲れたよ。」

 「お疲れ様。」


 男は奥オーバーオールを脱ぐと木製の洗濯カゴにバサっと脱ぎ捨ていた。

 そして、部屋の椅子に座った。


 「体調はどうだい?」

 「大丈夫。」

 「あの子は?」

 「奥で寝ているわ。」


 男は座っていた椅子から立ち上がると、奥の部屋の扉を開けた。そして、『ファイア』で小さな火を天井にぶら下がっているランプに放つと、部屋が柔い光で照らされた。

 その明るくなった部屋には男の赤ちゃん悪魔が寝ていた。


 「ははは、相変わらず可愛いな我が子よ。」


 旦那は寝ている赤ちゃんを高い高いした。

 絶好の睡眠を邪魔された赤ちゃんは、男の手の中で暴れるように泣いた。


 「うぉ。ど、どうすれば、どうしよう、どうしよう。」


 突然泣き出した赤ちゃんの対応にどうするればいいか、あたふたあたふたする旦那。


 「あら、あら、貸してください。」


 旦那が持っている赤ちゃんを女がヒョイっと奪うと、赤ちゃんはすぐに泣き止んだ。


 「す、すごいな。流石はだ、ポベロ。ごめんな、お父さん赤ちゃん扱いが下手くそで、許してくれリンド。」


 この赤ん坊こそ幼き、生まれたばかりのリンド。

 そしてこの女の悪魔はリンドの母、ポベロ。男はその旦那だった。


 ーーーーー


 リンドを再度寝かしつけ、2人は夕食をとっていた。


 「村で、土地の争いがあったそうだ。」

 「そう…少しみんな気が立っているようね。」

 「無理もない。ここのところあまり収入がいいとは言えないからな。」

 「明日、行ってくるの?」

 「そのつもりだ。」

 「争いは…もう、うんざりです。」


 ーーーーー

 

 次の日


 「いってくるよ。」

 「はい、いってらっしゃい。」


 仕事に向かう旦那をポベロは送り出し、腕に抱えたリンドと共に手を振った。旦那はそれに手を振り返すと仕事に向かった。


 「さぁ、リンド。私たちも買い物に行きましょう。」


 ーーーーー


 地獄・サランカス(過去)


 「さぁ、何を買いましょうかねぇ。」


 今日も今日とてサランカスは大賑わい。悪魔たちが買い物という買い物をしていた。


 「あら、このお野菜いいわね。リンドはどう思う。」


 リンドはこの野菜が気に食わなかったらしく、そっぽを向いた。


 「嫌なのね。」


 なんの野菜を買おうか悩んでいるポベロの耳に何やら、ヒソヒソ話が聞こえてきた。


 「見て、あの肌の色。大魔族よ。」

 「ほんとだ。何を企んでいるんだか。もしかしたら殺されちゃうかも。」

 「いや、怖い怖い。それに見て、赤ん坊もいるわ。あの子もきっと何か企んでいるに違いないわ。」


 自分だけならまだしも、子供であるリンドの悪口を言われたポベロは、我慢の限界。足早にその場を後にした。


 ーーーーー


 地獄・サランカス・バベニ湖


 サランカスの市場から出てきたポベロとリンドは、湖の辺りに座り、昼食をとっていた。今日は風がなく、湖には美しき星空が、映し出されていた。

 リンドはぽべろの足の上で少し汚くご飯を食べていた。


 そんな綺麗な湖とは対照的にポベロの顔はどこか浮かない様子だった。


 「ねぇ、リンド。あなたは私の子。もしかしたら、将来は私たちの祖先と同じで、良くない事をしてしまうかもしれない。でもね、私はあなたにそうなってほしくないの。他者を救って、他者を思って欲しいの。だからあなたが生きやすいようにお母さんは頑張る。いっぱい愛するし、いっぱい助ける。幸せに生きて欲しいの。」


 言葉を口にしたポベロの目からは涙が溢れていた。


 「ただ…ただ…誰の命も奪わず…幸せに生きてほしい…」


 リンドは泣いている母親の姿を見て、首を傾げた。


 ポベロは自分の種族、大魔族がよくない目で周囲から見られていることを知っていた。大魔族の過去の行いから、何千年も経ったいもでも、大魔族という存在が悪い存在であると皆は決めつけた。


 誰よりも心優しく、誰よりも心の弱いポベロは、自分1人だけなら耐えることができた。でも子供であるリンドに対して言われれば、自分が母親だから、と責め始め悲しくなって涙が出た。


 他より優しいという、素晴らしき個性が、周囲に押しつぶされてしまっていたのだ。


 涙が頬を伝いリンドの顔に落ちた。


 「あら、ごめんなさい。」


 ポベロはリンドの顔に落ちた涙を服の袖で拭いた。


 ーーーーー


 地獄・???


 「行ってくるよ。」

 「えぇ、行ってらっしゃい。」


 毎朝と同じようにポベロは仕事に向かう旦那を見送った。


 まだ昨日の忘れきれていないポベロだったが、ハリボテの元気でリンドと共に買い物に出かけた。


 ーーーーー


 そして時は、リンドが立つことを覚え始めて頃に進む…


 この年、この村はかなり遠くで行われていた戦争に何故か巻き込まれた。その被害により、村としての機能をしにくくなり、不景気を迎えていた。


 そして、この状況がリンドの運命を捻じ曲げることになる


 ーー終ーー

 

 

 

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