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DeViL 悪魔生転物語  作者: オクラ
 3章 『黒腕』
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 43 会話の無い戦い


 エクサーの目には、名も知らぬ青年から流るる緊張感が鮮明に見えていた。

 リンドはエクサーを見るや否や、鋭い眼差しで強く睨みつけ、緊張をさらにもう一段上へと押し上げた。


 2人の思いはここで共通を見た。倒さねばならない者であると。


 そう思って真っ先に動いたのは、リンドの方だった。ヴァットより、この階の侵入者は全員排除しろとの命が下っていたリンドは一撃でエクサーを仕留めにかかった。


 だが、エクサーもこれに反応できないほど感覚が鈍っていることはなく、『バリア』を展開するのに遅れはなかった。


 しかし、ここでエクサーに誤算が生じた。それは『バリア』がいとも簡単に破られたことだった。


 魔力量の多いエクサーとて、必要以上の強度の『バリア』を展開することは、無駄な魔力消費を起こすため避けたいことだった、そのためリンドの体型から威力を予測し、おおよそ事足りる強度で『バリア』を展開し攻撃を防ごうとした。しかし、リンドは体型からは想像のできない威力の攻撃を与えてきた。


 『バリア』を介して威力が少し落ちた打撃は、エクサーの腹部に直撃。そしてこの怯んだ隙に、さらにリンドは一発また一発と攻撃を叩き込んだ。


 がこの猛攻の中でエクサーは『テレポート』を使い、この状況を脱した。


 移動したエクサーは真っ先に回復魔法を使い、ダメージを癒した。


 そして、エクサーは右手を前に出すと、炎を溜め出した。この隙をリンドが逃すわけもなく一気に距離を詰め仕留めにかかるが、エクサーは『テレポート』で別の場所に移動した。


 リンドは移動したエクサーに追いつくが、またエクサーは移動をした。その繰り返しだった。その間に着々と炎は威力を溜め、ある程度のためが完了したエクサーは『テレポート』をやめた。


 また移動すると考えたリンドは、この場所にエクサーが留まるという考えを捨て、次の移動先を確認するためにリンドが後ろを振り返った時、


 「『インフェルノ』。」


 移動をあえてしなかったエクサーはリンドのガラ空きの背後に『インフェルノ』を叩き込んだ。


 ドーーーーン!!


 廊下に貼られたガラスは、エクサーの攻撃により1枚残らず吹き飛んだ。


 『インフェルノ』。『ファイア』の上位互換であり、多くの魔力、大きな溜めを必要とするが、それと引き換えに高威力である。エクサーは、これをドラギナに教えてもらっていた。だが、練習の段階で成功したことはなく、いきなり本番で成功させていた。


 辺りに渦巻く黒煙。視界の悪い中、エクサーが呼吸を置いたのも束の間、リンドは『インフェルノ』を耐え、黒煙を利用し、エクサーに奇襲を行った。


 だが、この可能性をエクサーが見落とすはずもなく、エクサーに届いたかと思われたリンドの拳は、何かに削られ血だらけになっていった。これに気づいたリンドはすぐにエクサーとの距離を離した。


 ガラスのなくなった窓から風が抜け、黒煙が晴れると、廊下は明瞭さを見せた。


 自分の手が削られ血だらけになっているのを確認したリンドは、エクサーの方を見ると、エクサーは体に風を纏っていた。


 エクサーの使用した魔法は『ウィンド』。一般的には風魔法と呼ばれるもので、風を発生させ、相手を攻撃する技だった。


 しかし、エクサーはこの技を防御へと応用を効かせていた。普通の風魔法は相手に向かって飛ばす魔法だったが、エクサーはこれを自分の体の周りで維持させて、来るであろう攻撃に対しての備えとしていた。


 リンドの傷はすぐに元に戻った。


 エクサーは次を模索し、また『テレポート』をし始めて撹乱を行った。


 地道に攻撃を続け、きっといつか現れる隙にトドメを決めるという算段をつけていたエクサー。自分すら予測不可能な位置に移動を続け、魔法を溜め始めた時、エクサーの目の前にリンドの拳が現れた。


 「!?」


 回避しようにもできない予想外の攻撃にエクサーはもろに攻撃を喰らった。


 リンドはほとんど魔法が使えない。それはリンドが長い時間を奴隷として世間知らずで過ごしてきたためだった。では魔法の使えないリンドがどうやって予測不可能な移動をするエクサーに追いついたのか。


 (見て動いた!?)


 エクサーの予想は大当たりだった。リンドはエクサーが移動したのを確認すると、次に移動する前に追いついていた。


 魔法の使えないリンドにこれを可能にする術を一つだけあった。


 それは『潜在解放(バースト)』だった。


 『潜在解放(バースト)』自分の能力を一部の能力に偏らせる術であり、グガットとは違い、リンドはこれを限界までスピードに偏らせていた。リンドはグガットが使った一度を見ただけで会得していたのだった。


 圧倒的なスピードを手に入れたリンドは高速の連打を始めた。これになんとか防御を合わせることができていたエクサーに対し、リンドは直線的な連打をやめ、多角な攻撃へと移行。蹴りを混ぜた四方からの攻撃にエクサーは追い詰められる一方だった。


 そして、『潜在解放(バースト)』を一瞬、スピードではなくパワーに切り替えると、強烈な一撃をエクサーに叩き込んだ。


 一撃をもらい壁に飛ばされ、動く気配のないエクサーを見て、リンドは勝ちを確信した。


 だが、勝利はまだリンドにその身を委ねる気はないようだった。


 ーー終ーー



 ちなみにリンドは魔法が使えないだけで、魔力はあります。なので自己強化の魔法など本当にし初歩ぐらいなら使えます。

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