42 個人の戦い
マネキスへと向かうF,Dだったが、その道のりは険しく、高低差のある山を越えなくてはいけないため、かなりの時間がかかってしまっていた。
「クソッ、仕方ない。」
このままでは時間がかかり過ぎてしまうと考えたF,Dは、一番右側の頭部で歯を食いしばって、力を貯めると、遠吠えと共に一気に力を解き放ち、山に一直線の風穴を開けた。
そこをF,Dは颯爽と通り抜けマネキスに向かって走っていった。
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ピアノとエクサーの2人がビルの前にたどり着くと、ドアを開けようとしたが、ドアは固く少し引っ張った程度では開く様子はなかった。
「ねぇ、ピアノ開かないんだけど。」
「私がやります。」
バキッ!!
ピアノのが引っ張ると、ドアが取れた。
「エクサー、開きました。」
「え、でもバキッって。」
「開きました。」
「でもドア取れてるし。」
「開きました。中に入りましょう。」
エクサーはピアノは怒らせないようにしようと心に決めた。
ビルの中に入ると、中には感染者と思わしき悪魔たちがこぞっていた。
「あ”ぁぁぁぁぁ。」
うめき声をあげ、悪魔たちはエクサーとピアノに襲いかかってきた。
「エクサー、奥にエレベーターがありますね。それに乗って上まで行きましょう。」
「わかった。」
2人は、悪魔たちを掻い潜ってエレベーターまで走った。軽快にエレベーターに向かうピアノとは対照的にエクサーはなかなか苦戦をしていた。
悪魔たちに道を塞がれ八方塞がりのエクサーに気づいたピアノは悪魔たちをかわすようにジャンプし空中で体を捻り、エクサーの周りの悪魔たちに狙いを定めた。
「『ショック』!」
『ショック』相手を気絶させる魔法。魔力量に大きな差があると効かない。
ピアノは悪魔たちを気絶させ、エクサーの前に進む道ができた。
何とか先にエレベーターについたピアノが上の階に行くボタンを押すと、エレベーターが来た。
「エクサー!早く!!」
エレベーターが到着したことを知ったエクサーは急いで、エレベーターに乗り込んだ。
「あっぶな〜い。ありがとう、ピアノ。」
「いえいえ、大丈夫です。」
チーン!
エレベーターがどこかの階についたようだった。
ドアが開くと、その階にいた感染した悪魔たちがこっちを見るなり雪崩れ込んできた。
「エクサーは先に行ってください。」
ピアノは、エレベーターに入ってこようとしている悪魔を防ぐためにこの階で降りることにした。
「後で必ず追いつきます。」
ピアノがそう言い残してエレベーターの扉は閉まった。
上へと上がっていくエレベーター。不思議なことにエクサーは上に行くにつれどんどん謎の緊張感を感じ始めていた。
チーン!
エレベーターが最上階に着くと、悪魔たちが雪崩れ込んでいることを見越して身構えたが、扉の先には、長い廊下とそこには『リンド』がいた。
エクサーは、エレベーターから降りた。
ーーーーー
ドーーーン!!
マネキスに向かうF,D。近づけば近づくほどその方向から爆発音が鮮明に聞こえてきた。
全力で走るF,Dはついにマネスキへと到着した。
地獄・マネスキ
「アハハハハハハハ〜〜!!」
街に着いた瞬間、街中に響く誰かの笑い声。この声を聞いた瞬間、F,Dは一発で誰の声かを理解した。
ドーーーーーーン!!
F,Dは爆発のする方向に向かって走っていった。
地獄・マネスキ・中央広場
大きな噴水の目立つマネスキの中央広場では、ある1人の悪魔が笑いながら暴れ回っていた。
「アハハハハハハハハ〜〜!」
フォルテ(バブルス感染)だった。
フォルテは魔法を使い建物を破壊し、地面を抉り、街をめちゃくちゃにしていた。
「やりすぎだ。」
F,Dの声にフォルテは振り返った。フォルテの容姿は大きく変化していた。戦いによって服がボロボロなのはもちろん、白目の部分は黒く、白目の部分は赤く、右頭部から角が生えていた。
「ンフンフ、アハハハハハ〜!!」
フォルテはF,Dを見つけると一目散にF,Dに殴りかかってきた。
F,Dは左の口を開け『バリア』を展開し、『バリア』でフォルテをそのまま吹き飛ばした。
が、めげずにフォルテは再度向かってきて、両手にメリケンサックを構築した。
ピアノとフォルテは構築魔法と錬成魔法に優れていた。構築魔法は魔力を材料にして物体を生成する魔法で、錬成魔法は近くにある存在する物質を元に物体や現象を作り上げる魔法。
『バブルス』に感染したことによる凶暴化と、なりふり構わない自己強化により底上げされたメリケンサックの打撃はF,Dの『バリア』を簡単に打ち砕いた。
そして、F,Dの左の頭に強烈な一撃を加えた。だが、F,Dもやられるだけではなく、すかさず右の頭で咆哮をしてフォルテを勢いで押し飛ばした。
スピード、攻撃力ともに大きく強化されたフォルテにこのままでは分が悪いと考えたF,Dは黒い霧を発生させ、体を縮めていった。そして、黒い霧の中に赤い光が二つ現れると、その霧を晴らし、中から人型よりも少し大きな体に獣型を合わせたような姿の『人獣型』のF,Dが姿を現した。
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地獄・サランカス
「もう流石に疲れるです〜。」
精神的な辛さが2人には目立ち始めてきた。
「あぁぁぁ、殺さなきゃいいよな?」
「そうです。」
「ハァァァァァ!!」
ドラギナが力を込めると、炎炎たる竜の姿へと変身した。
「『炎海』!!!」
変身した途端にドラギナを中心として、炎の海が地面に充満し、触れた者たちを燃やし始めた。
「あ”ぁぁぁぁぁぁぁ。」
絶妙な火力で悪魔たちを燃やしたドラギナは死の五歩手前ぐらいまで悪魔たちを焼いた。
「これ死んでたらどうするです?」
間一髪、クーのドラギナの『炎海』を空中に飛んで避けた。
「まぁ、その時はその時だ。」
ーー終ーー