37 訪問
地獄・グランパス
グランパスとは、グガットの運営していた薬物会社の社名。
「一体どういうことだ?急にヴァットが来るなんて。」
「どうせよからぬことやら。」
グガットの幹部たちは、ヴァットが直接訪問すると言うことを聞き、会社の会議室に集まっていた。
この場にいる全員がヴァットに対する大きな不信感を抱いていた。
皆は机に置かれた人数分の誰かが置いた飲み物を口にして待った。
「あと数時間で発令だと言うのに、この後に及んで何をしようというのだろうか?」
勢力停止令の発令は皆の耳にすでに届いており、この状況でヴァットが来ることになんの意味があるのか、それが不思議で君が悪かったのだ。
ザワザワする会議室。その扉をコンコンと誰かがノックし、扉が開くと、ヴァットがトットを引き連れて入ってきた。
悠々と歩を進め、皆の前を堂々と通りすぎるヴァットを皆は、不信の目で睨んだ。
そして、皆の方を振り向くと、開口一番に発した言葉は、
「申し訳なかった。」
謝罪の言葉だった。
幹部たちも予想だにしないヴァットの行動に表にこそ出さないものの内心は驚いていた。
「私はもう少し、君たちのことを考えるべきだった。この混乱は皆で乗り越えなくてはならないもので、混乱に乗じて利益を出そうと考えた私がバカだった。申し訳ない。大変申し訳ない。」
ヴァットは深々と頭を下げた。
このヴァットの様子に、幹部たちの心がどこか緩んでしまった。
ここである1人の女悪魔の幹部が手を挙げた。
彼女の名前はマニス。真面目で冷静で仕事ができ、その腕をグガットに買われ最年少幹部として地位を据えた悪魔。メガネをかけて、ビシッとスーツを着て、キャリアウーマンの体現とでも言うべき悪魔だった。
「どうぞ。」
トットが手を挙げたマニスに発言の許可を与えた。
「なぜ、ただ謝罪をしにここにきたんですか?」
「なぜって、私が申し訳ないと思ったからだよ。私の情を否定すると言うのかね?」
「いえ、そう言うわけではありません。ただ、私の見てきたあなたの性質上、それが真意だとは到底思えません。」
ヴァットの経営者としての非道さは経済業界の中では周知の事実であり、若かりしヴァットの行っていた完全な奴隷として社員を扱った無賃労働。これはヴァット本人が権力で握りつぶし、大衆に知れ渡ることこそ無かったものの、業界の中ではもみ消すには至らなかった。
しかし、武力的戦争や争いの際に必ずと言っていいほど武具は必要なものであり、そのすぐ後、落ちた名声を拾い上げるように戦争が勃発し、業績は右肩上ががりを始めた。
マニスの問いにどう答えるか注目がヴァットに集まった。
「皆さん。お茶は美味しかったかな?」
「真面目に答えてください!」
マニスはなぜか関係ない話を始めようとしたヴァットを逃すまいと、元の軌道に話を戻そうとした。
「このお茶には致死量の薬物と毒が入っている。」
「!!!」
何を言い出すかと思えば、とんでもないことをヴァットは言い出した。
「でも大丈夫。回復魔法を使えばすぐに治せます。」
死ぬかもしれない状況にマニス含め幹部たち全員は回復魔法を使った。
焦りを全開にする幹部たちとは打って変わって、この状況にヴァットは笑みを浮かべた。
「どう言うことだ、ヴァット!!何が目的だ!」
「これが目的…ですよ。」
すると、会議室の窓を誰かが勢いよく突き破って、中に侵入してきた。
その誰かは机の上に堂々と着地をした。
皆が見つめる先で、その誰かはゆっくりと立ち上がると、着ていた黒装束のフードを取った。
リンドだった。
皆の脳裏に『なぜ』と言う言葉がよぎる前に、リンドは幹部全員を瞬殺した。
およそ3秒にも満たないほどの殺生に会議室は血で染まった。
「よくやった。リンド。」
全てはヴァットの思惑通りだった。ヴァットは自然な形で幹部分のお茶を用意して、そこに毒を仕込み、回復魔法を使った者を殺害せよと命令を与えていた。
だがそれよりも、なぜここにリンドがいるのかと言う話だった。
ーー終ーー
もうなんかごめんなさい。私、あんまり頭が強くないので矛盾だったり、?ってなるところがあると思いますが、本当にごめんなさい。できるだけ、そうならないようにしているのですが、ごめんなさい。