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DeViL 悪魔生転物語  作者: オクラ
 3章 『黒腕』
38/207

 36 発令まで


 2日後


 地獄・ガルガの丘


 今日は、S,Bが忙しいということで、エクサーは一人で来ていた。

 相変わらず、『アレクトーン』努力は続けて入るが…到底、いい結果が得られているとはお世辞にも言えぬ状況だった。


 パァーン!


 『アレクトーン』に拒否され、弾かれてはまた挑む。その繰り返しだった。

 

 エクサーは完全に甘く見ていた。

 数を重ねれば抜けるとばかり思っていたが、そんな甘い世界ではなかったのだ。

 それでも、これだけ時間と労力を注いだのだ。エクサーはこれに負けず嫌いを発症し、絶対に引かないという確固たる意志が形成されてしまっていた。


 めげずにエクサーは剣を握った。「よし!もう一度!」エクサーは心の中でそう言い、魔力を流し始めようとした。その時、風に乗って花粉か何かがエクサーの鼻の粘膜を刺激。


 「ハ…ハ…ハグシュン!」


 エクサーは我慢できずに大きなくしゃみをした。

 と同時に一瞬だけ意図しない力みが体に入ると、『アレクトーン』にドワッと魔力を流してしまった。


 「あ…」


 パァーーーーーン!


 もちろん、『アレクトーン』は流された魔力量に相当する拒絶をすると、エクサーを吹っ飛ばした。

 いつもなら何もない場所に倒れたエクサーだったが、今回倒れた場所には運悪く大きな石があった。エクサーは大きな石に頭をガンッ!とぶつけると、これまた当たりどころが悪く気絶した。


 ーーーーー


 エクサーは瞼を閉じていながらも強い光を感じた。というか開けているのと変わらないぐらいの明るさを感じていた。

 地獄は基本的に赤い夜。そのため、このような強い光は余程の事が無いと触れることは無い。だから、この明るさはエクサーには不自然なものだったのだ。

 だから、エクサーはこの原因を探るべく、すぐに目を開け、体を起こしてあぐらをかいた。


 すると、エクサーの目の前には真っ白で何も無い、どこまでも続く空間が広がっていた。


 「何ここ?」


 エクサーには全く検討がつかなかった。

 まず、何かを推測するだけの材料がない。物は無ければ誰もいない。そもそも目線の先には白一色とそれがどこまでも続いているだろうと思わせる地平線。

 こんなにも無い空間では、ここがどこかを知るどころか推測することすらも、ままならなかった。


 周囲をキョロキョロするエクサー。とりあえず座っていても拉致が無いと言うことで動いてみることにした。

 ウロウロしてみたり逆立ちしてみたり、側転してみたりヘッドスピンをしてみたり、いろいろやってみた結果、1つ分かった事があった。魔法は使えないと言うことだった。つまりは、エクサーはこの場所ではお久しぶりの『大生身生活』を強いられているということだった。


 別にこれに不満があるわけではなかったが、いきなり魔法が使えないと言うのもなんというか不思議な感覚に感じた。だからこそ、魔法というものが今の自分を作る上で大事な要素であるのだとひしひしと実感した。


 「ん?」


 と、エクサーは遠くに何かを見つける。

 目を窄めてじっと見るがそれでもそれを認識するには至らないぐらいには遠くにあるらしい。

 ということで、エクサーはそれに向かって歩いた。


 テクテクテクテク、エクサーがそれに近づいて歩いていくと、そこにあったものは白く燃える火の玉だった。


 「ん?なんだこれ?」


 エクサーは好奇心でそれを触ろうとした。だが、いきなりその火の玉はエクサーを調べるように隈なくエクサーの周りを周回し始めた。

 そして、満足したのだろうか。エクサーの前で動きを止めた。


 「やっと来やがったな。」

 「!」


 エクサーの脳内に直接、誰かの声が聞こえた。

 声質からして男。それも年老いている。


 いきなりのことに動揺を隠しきれないエクサーは目をまんまるにした。


 「まぁ、座れ。」


 と、いきなり火の玉はエクサーに座れと言ってきた。エクサーはさらに動揺しながら、その場に座った。

 そして、なんとも言えない静寂が続いた。


 (えぇ〜こういう時どうするの〜。助けて〜A2。)


 気まずい。ただその一言に尽きた。

 ここで、エクサーは勇気を絞って話かけてみることにした。


 「あの、あなたは…?」

 「まずは自分の名前からじゃないか?」

 「あっ…はい。」

 「名前は、エクサーです。」

 「俺はガルガだ。」

 「!」


 ここでつい最近知ったばかりの名前が出てきた。

 

 (えぇ〜この白い火の玉がガルガ?いやいやいや、そんなわけない落ち着けエクサー。)


 エクサーは冷静になって考え、そんなわけないという結論に至った。


 「と言ってもどうせ、半信半疑だろうから証明してやる。」


 どうやらエクサーの心はお見通しだったようだ。

 すると、白い火の玉はものすごい輝きを放ち始め、その輝きが小さくなるにつれ、あぐらをかいた、頑固そうなおじいさんが輝きの中から出てきた。


 「これでいいか?」


 男はエクサーを睨むように見た。


 エクサーの半信半疑はこれをもってどこかに行ってしまった。

 あの火の玉の状態では冗談を言っているようにしか見えなかったが、姿を見せた瞬間に何故か本人だと確信した。 学校の図書館にはガルガについての本が3冊ほどあった。その中の1冊にはガルガの弟子が勝手に残した1枚の肖像画があった。その顔と全く同じ顔が今、エクサーの目の前にあった。


 本人が目の前にいると分かり、エクサーはいきなり緊張に襲われた。


 「分かったようだな。」

 「は…はい。疑っちゃいました。」


 エクサーは姿勢を正して座った。


 「と…ところでここは?」

 「ここは…アクレクトーンの中だろうな。」

 「うん?」

 「俺は死ぬ時にアレクトーン(これ)を作って死んだんだ。そのまま成仏できるかと思って、目を覚ますとここにいた。どうやら、魂燃やして作ったアレクトーン(コイツ)とは変な糸で結ばれちまったらしい。」

 「へぇ〜。そんなこともあるんですね。」

 「ところでお前、アレクトーンを抜きたいらしいな。なんでだ?」

 「なんで…」


 そういえば、エクサーには絶対にアレクトーンを抜く、アレクトーンでなくてはいけない理由は無かった。抜こうとした理由もA2に言われたからで、自分の要素というのは負けず嫌いという後付けの理由。

 だから、エクサーは露骨に困った顔をした。


 「はぁ…別に特別なわけはないと。」

 「ハハハ…ごめんなさい。」

 「んあ?別に謝ることはない。この前来たやつなんか売り飛ばすためだったしな。それに比べたらマシなもんだ。」

 「まぁ、暇な時はこうやって面接みたいに時間を適当に潰してるってわけ。」

 「じゃあ、僕も暇潰しで呼ばれたと…」

 「いや違う。お前には明確に会う理由がある。」


 ガルガは座っている体勢をあぐらにして座り直した。


 「お前、変な魔力しているな?」

 「変な魔力?」

 「アレクトーンを抜くために魔力を流したろ?そんで分かった。お前は魔力は他とは違う。」


 エクサーは考えた。変な魔力と言われて思い当たる節…そんなもの1つしか無かった。


 「僕、元人間なんですよ。多分それかと。」

 「ほぉ、お前元人間なのか。」

 「はい。」

 「俺が死んでからそんなこともできるようになったのか。」

 「いや、僕だけです。」

 「ほぉ。」


 ガルガは目をまんまるにした。

 そして、あぐらをかいている両膝をパンッと叩くと、ニヤッと笑った。


 「いいなお前。持ってけや。」

 「?」


 エクサーの頭上に浮かぶ疑問符。


 「アレクトーン持ってっていいいぞ。」

 「はい?」


 理解の追いつかないエクサーだった。


 「だが、その前に…ここから出るために俺を殺す気で来い!」


 理解の追いついていないエクサーにガルガは追い討ちの如く、さらにエクサーが混乱するようなことを言い始めた。


 ーーーーー


 地獄・アスフォルテ会議場


 「話がまとまったようだな。」


 レノがそう言うと、レノは袖から印鑑を取り出し、紙にその印を押した。


 その紙は、勢力停止令について書かれていた紙だった。


 「それでは、本日0時より、勢力停止令を発令する。期間はグガットの後継が見つかるまで。しかし、現在の経済の状況を鑑みて、期限を最長1週間とする。その間、君たち会議参加者たちは惜しみのない協力を後継者探しに費やし、さらには復旧に対しても尽力することを約束せよ!!」


 勢力停止令は日付の変わった0時を持っては発令されることが決まった。しかし、今回は異例の期限を設けた発令だった。そのため、この例は一時的勢力停止令と呼ばれる。


 「ヴァット、不服かね?」

 「いやいや、そんなことは、ないですよ。」


 そう言い残してヴァットは誰よりも早く席を立ち、帰って行った。


 これにて会議は閉幕を迎えた。


 ーーーーー


 ヴァットガンパニー・社長室


 ヴァットカンパニーとは、ヴァットの運営する地獄最大の武具会社の社名。


 「社長。お帰りになっていたのですね。」


 トットは想定より早いヴァットの帰りを知ると、一目散に社長室まで走ってきた。


 「やられた。」


 バンッ!!!


 ヴァットは怒りに声を震わせ、机を叩いた。


 「そうですか。こちらも手は尽くしています。ですが、グガット側も応じる姿勢は一向に見せてきていません。」


 グガットの会社と自分の会社を、停止令発令前までに合併させたかったヴァットは、すでに発令が刻一刻と迫ってきている現状に怒りを露わにしていた。


 トットとしても発令を止めることは現実的ではないと考え、それなら1日でも発令を遅らせるように立ち回ることをヴァットに提案していた。


 しかし、発令は想定よりも早く終わってしまった。


 「ネットめ。前々から、アイツと私は馬が合わないことは多々あったが、今回アイツは特に私への反抗を強めてきおったわ。腹が立つ。」


 ヴァットの思惑を知ったネットは、あくまで思惑を知らないというていで、話をなるだけ早く発令させる方向へと引っ張ることに成功。このことはヴァットにとってとても腹立たしいことだった。


 「社長。これからはどうしますか?大人しく撤退いたしますか?」

 「いや、乗り込む他ない。グガットの会社に直接行く!」

 「分かりました。では手配いたします。」

 「それと、()()も呼んでおけ。」

 「あっ、わかりました。」


 ーー終ーー


 

 ごめんなさい。本当は昨日あげる予定でした。


 本当にごめんなさい

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