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DeViL 悪魔生転物語  作者: オクラ
 2章 『天使降臨』
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 28 浄化

 エクサーにやられ続けるサラマエルは、エクサーの拳によって完全消滅を迎える。それをただ見ていたラキエルとナドリエルの2人。そしてラキエルは一矢報いようとエクサーと戦い、傷を負わせることに成功する。しかし、致命傷とはいかず、死を悟るが、1人の天使が空から降りてくる。


 黒き地獄の空を照らす光。神々しく、美しく、地獄中の空を輝かせた。


 地獄の悪魔達がその光景に見入ってしまっていた。エクサーによる混乱の暴動、パニックは時が止まったように止み、皆が一応にして空を見上げた。


 船乗りもその一員も、ギャングの幹部達も、商人も、旅する者も皆が一応にして。


 ーーーーー


 地獄・クメタニア荒野


 1人の天使が大きな羽を羽ばたかせ、ゆっくりと降りてくると、羽を羽ばたかせながら空中に止まった。


 「あなたがエクサーですね。」


 透き通るような声。真っ白な髪。美の存在。ここに現れたのは、ミカエルだった。


 「初めまして。私はミカエルと言います。と言っては見ましたが、聞こえている様子もなさそうですね。」


 暴走中のエクサーの耳にミカエルの言葉が届くことはなかった。しかし、暴走により研ぎ澄まされた本能が、この相手が、強大な存在であることを認識していた。


 「『浄化(パージ)』」


 ミカエルがそっと手のひらをエクサーに向けると、エクサーに向けて白いビームが放たれた。


 白いビームがエクサーに当たった。だが、エクサーにはそれが効いている様子はなかった。


 『パージ』。天使のみ使用可能の魔法であり、効果は浄化。相手の悪意、殺意などの悪い感情を消し去る魔法である。攻撃力は0でダメージを与えることはできない。


 ミカエルは今のエクサーが殺意の塊であることを理解していた。だからミカエルはエクサーに『パージ』を放ち魔強化暴走を解除しようと考えていた。


 ミカエルの放つ魔法は天界のなかで最も強力なものばかりで、ラファエル、ウリエルに、ミカエルがもう1人いれば私たちどちらかはいなくていいとふざけと事実半分半分で言われるほど強力なもので、『パージ』とてその枠から漏れることはなかった。


 つまり。今の『浄化(パージ)』は天界の中で最も強力な『浄化(パージ)』だった。


 しかし、エクサーはその『パージ』に対してなんの影響も受けてはいなかった。


 「地獄のみならず天界にすら届く殺意をお持ちのあなたが、この程度の『浄化(パージ)』でこと足りるわけがないですよね。」


 「あ”あ”あ”あ”あ”ぁ”?」


 エクサーの本能は、次第に相手を強大に思うことを捨て、目の前の者に対する殺意が息を吹き返し始めていた。


 「落ち着きなさい。」

 「!?」


 ミカエルはエクサーの目の前に一瞬にして移動してきて、エクサーの巨大な右腕を撫でた。


 流石のエクサーもこの速さの移動とこの行動に驚いたようだ。


 この状況を外から傍観していたラキエルとナドリエルは、この状況のレベルの違いに目を見開いていた。


 「悪魔の子よ、自らの元へ帰りなさい。『浄化(パージ)』」


 ミカエルは、エクサーの腕を触りながら、『浄化(パージ)』を発動した。


 その『パージ』はミカエルから周囲を巻き込む形で白い光が発せられ、エクサーを飲み込んだ。


 ーーーーー


 「あぁ、よかった。」


 エクサーは黒い液体の中で安心していた。


 ーーーーー


 数秒後、光がだんだんと消え始めると、中から元に姿に戻ったエクサーを抱えたミカエルが現れた。


 ミカエルは抱えたエクサーを地面に優しくおろした。


 そのミカエルの元にラキエルとナドリエルが向かってきた。


 そして、ラキエルはミカエルに開口一番謝罪をした。


 「ごめんなさい、ミカエル様。僕の勝手でこんなことになってしまって、しっかりと罰は受けます。なのでどうかお許しを。」


 ミカエルはこのことに怒ることはなかった。それどころか、ナドリエル、ラキエルの両方に抱きついた。


 「心配しましたよ、あなた達。無事でよかったです。」

 「でも、ミカエル様、サラが。」

 「えぇ、わかっています、ナド。あの子は完全消滅してしまいました。なので、もう会うことも叶いません。悲しいことです。しかし、それでもどうしようもないことなのです。しっかりとサラの死を認識するまで、あなた達は休みなさい。罰はそれからです。」


 ミカエルは天界の長として、罰はしっかり与えつつもラキエルを『イノセント』を許した。


 「さぁ、帰りましょう。」

 「ミカエル様、ロルがまだ向こうに。」

 「そうですか、では迎えにいきましょうか。」


 3人は向こうで、寝ているロルエルを迎えに行こうとした。


 「この子のことかい?」


 ラキエルとナドリエルの耳に聞き馴染みのない声が聞こえた。しかし、ミカエルだけはこの声に聞き覚えがあった。


 白スーツ、赤い目。A2だった。A2はロルエルを担いで持ってきていた。


 「あら、A2。久しぶりですね。感謝します。」


 どうやらA2とミカエルには面識があったようだ。


 ミカエルはA2からロルエルを受け取った。


 「A2、あの子をしっかりと見守っていてくださいね。」

 「もちろん。」

 「私はあの子もA2、あなたも見ていますよ。」

 「私にプライバシーはないのかな?」

 「では、また会う日まで。」


 そう言うとミカエルとラキエル、ナドリエル、ロルエルは天界へと帰っていった。


 A2はエクサーを担ぐと、城に向かって帰って行った。


 地獄の空は元通り黒くなり、天界、地獄に充満した殺意も消え、クメタニア荒野には、戦いによって変形した地形だけが残った。


 ーー終ーー


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