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DeViL 悪魔生転物語  作者: オクラ
 2章 『天使降臨』
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 27 消滅

 


 殴られ飛ばされたサラマエルは、飛びそうな意識をなんとか保ちながら、逃げようを試みたが、体がダメージによって思うようように動いかせずにいた。そんな中でもエクサーの打撃が打ち込まれる。この繰り返しだった。


 殴られ飛ばされ追いつき、殴られ飛ばされ追いつきを繰り返され続けられたサラマエルとエクサーの位置は、いつしか、ラキエルたちのいる場所よりもかなりの遠くに行ってしまっていた。


 ラキエルも追いつこうと必死にこちらに向かっていたが、追いつくどころかいくら飛んでも2人の姿が見えることはなかった。それほどに2人の移動スピードは早かった。


 着々と蓄積され続ける莫大なダメージにサラマエルの肉体も意識もボロボロになりつつあった。

 それでも、エクサーは笑い顔を絶やさず、無邪気に拳を振るった。


 鼻からも頭からも出血をするサラマエルは遂に限界を迎え始めた。


 「も…もう……や…やめ……」


 サラマエルは小さな声で涙を流しながらもうやめてほしいと訴えたが、そんな声がエクサーに届くわけもなかった。

 すると、エクサーはその場から突如消えると、サラマエルの上に現れ、サラマエルを右手でぶん殴りで真下に向かって撃ち落とした。


 高速で地面に落下したサラマエルは、威力が高すぎるが故、地面で一度バウンドすると、エクサーはそのサラマエルを踏みつけるように着地した。


 「も………も…う……」


 微かにサラマエルから漏れ出る声にエクサー首を傾げ、上から覗き込むように見下ろした。


 サラマエルはもう酷い状態だった。

 左腕は攻撃によってもげて、欠損。右腕、右足はぐしゃぐしゃになってあらぬ方向へと曲がり、左足に関しては、骨や肉が露呈し皮膚一枚でかろうじて繋がっていた。当然の如く、それらとそれら以外からも大量出血。白いゴスロリの服は自分の血で赤く染まっていた。


 「も……もう……や………め…」


 サラマエルは壊れた機械のようにやめてほしいと言い続けた。


 そこにやっとラキエルが到着。息を切らしながらも眼中に2人を捉えたが、ラキエルは自分の意識とは関係なく生物として、生きるものとしてこの場から動くことができなくなってしまった。


 エクサーは、大きな右手でサラマエルの髪の毛を掴み上げ、自分の顔の前にサラマエルの顔を持ってくると、少しサラマエルの顔を見た。


 「い…た……い……やめ………て…」


 髪の毛がところどころブチブチと切れ始めた。


 ラキエルは何かを悟った。


 エクサーはニヤリと笑うと、勢いよくサラマエルを空中へと投げた。


 するとそこに息を切らしたナドリエルも到着した。


 そして、この状況を見てナドリエルも動きを止め、涙をこぼした。


 空中へと投げられたサラマエルは次第に落下を始めた。


 一方、エクサーは大きな唸り声を上げ始めた。そしてそれに共鳴するようにエクサーに右腕が大きく大きく大きくなっていった。元のサイズの何倍にも何十倍にも大きくなったところで、その拳はゆっくりと大きさを元のサイズに戻っていった。


 エクサーの拳は、何十倍にも大きくして発生したエネルギーを凝縮し、元のサイズに戻したのだ。


 「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!!!!!!!」


 そして落下しているサラマエルの位置はもう少しでエクサーの前に差し掛かっていた。


 「いや、いや、いや。やめて、やめて、やめて。やめてーーーーーーーーーーー!!!」


 ナドリエルは泣きながら、叫んだ。


 そしてサラマエルがエクサーの目の前に差し掛かった瞬間。エクサーは拳をサラマエルに直撃させた。


 とてつもない衝撃波が老若男女の悲鳴を纏って辺りに轟き、砂ぼこりが巻き上がった。


 拳が直撃したサラマエルの肉体は肉が散らばるようなことはなく、その場で灰のようになって風に流れて散っていった。


 攻撃により巻き上がった砂ぼこりが消え始め、ラキエルとナドリエルの眼前に映ったのはエクサーのみだった。


 サラマエルの痕跡は何も残っていなかった。


 『完全消滅』

 攻撃の威力が相手の肉体の耐久の枠を大幅に超えた時に起こる消滅のことである。普通、肉体に宿る魂は記憶を引き継がず、循環し生まれ変わる。ただ、完全消滅の場合、魂すらもが破壊されるため、生まれ変わることもなくなる。つまりサラマエルの魂はこの場で役目を終えたことになる。


 「う、うぅぅぅぅぅぅ。」


 涙を流し顔を隠すナドリエルは現実を受け入れることができなくなっていた。


 「…ナド、行ってくるよ。」


 ラキエルはどこか澄んだ顔をしてナドリエルの方を向いた。


 「ダメ…ダメよ、ラキ。私は、あなたも…」


 目に涙をいっぱいに浮かべたナドはラキエルを止めようとした。


 ラキエルはこの状況でエクサーに一矢報いようとしていた。しかし、それが叶わないそのことをナドリエルもましてや、ラキエル自身もわかっていた。


 「ナド、僕は大丈夫さ。僕は愛を忘れていないから。」


 ラキエルはゆっくりとエクサーの前に降り立った。


 「エクサー。」

 「あ”あ”あ”あ”あ”ぁ”?」

 「お前を殺す。サラの仇を晴らす!」


 ラキエルは光りのオーラを体に纏い、オーラで作った光の盾と光の剣を構えるとエクサーに向かっていった。


 ラキエルの剣がエクサーの体に届いた。しかしそれが体に刺さることはなく、触れたという表現が近かった。エクサーの体にある黒い影の強度をラキエルは身をもって感じた。


 (天使だって、この剣が擦れば只事じゃないのにな。)


 ラキエルはエクサーからすごいスピードで距離を取ると、剣を空に向けた。すると、地獄の空から剣目掛けて光が当たり、剣の色は白くなった。


 その剣でラキエルは一気に距離を詰め、エクサーに切り掛かった。刃はエクサーの左の脇腹をかすめ、傷を負わせた。

 だが、エクサーはこれに反応を見せなかった。エクサーの目線の先にはナドリエルが映っていた。


 もちろんそのことはラキエルもわかっていた。だから、なんとか意識を自分に持っていくために必死に攻撃していた。


 「スターゲイザァァァー!!!!!」


 エクサーには何発ものスターゲイザーが打ち込まれた。

 ラキエルは少し離れて距離を取ると、目を瞑って剣先を空に向けた。


 走馬灯のようにこれまで出来事が思い出された。そして、『イノセント』全員の笑顔が最後に思い浮かぶと、ラキエルは目を開けた。


 そのラキエルの目には十字が宿っていた。

 ラキエルは今の自分には有り余る力が溢れ出していることを認識した。そして、ラキエルの握る剣もそれに応えるように光輝き出した。


 そして、今までに出したことのないスピードでエクサーの背後を取ると、背中を切りつけた。


 「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!!!!」


 エクサーに初めてしっかりとしたダメージが入った。

 エクサーは痛みにもがいた。


 だが、致命傷とはいかず、それに至らないただのダメージにすぎなかった。

 この攻撃はエクサーの怒りを増幅させただけだった。

 エクサーの傷は何事もなかったかのように再生を始めた。


 そしてラキエルの方に向かって行った。


 ラキエルにはもう逃げる体力は残っていなかった。先ほどの一撃に全てを賭けてしまっていた。


 それでも、エクサーは向かってくる。なんと残酷なことか。ラキエルはそう思ったが、自分の嘘でこうなっているために自業自得だと割り切った。


 と次の瞬間。

 地獄の空が『イノセント』達が来た時とは比べ物にならないほど光り輝き、光の柱が空より1つ降ってきた。

 そして、その中を通ってある1人の天使が大きな翼を羽ばたかせ降りてきた。


 ーー終ーー


 

 書いてて思ったんですけど、エクサーは悪役なのかな?一応主人公なんだけど。

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