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DeViL 悪魔生転物語  作者: オクラ
 2章 『天使降臨』
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 23 自分のための嘘

 


 天界・ミカエル宮


 天使長の名を冠するウリエル、ラファエルとの会話という名のお茶会を終え、2人が去った後すぐ、1人の少年の天使がミカエルの元を訪ねて来た。その少年の容姿は淡麗であり、ビー玉のような美しい目が特徴的だった。だが、その天使は少し鼻息を荒げ、どこか憤りを感じている目でミカエルを見ていた。


 「あの者をどうするおつもりですか?」


 やはりそうだ。ラキエルは何かに対する『怒り』を持っていた。そんなことはミカエルとてわかっていた。さらにはなぜ怒っているかまで見当がついていた。


 「ウリエル、ラファエル、その他には地獄の監視を強化しろと言いました。それだけです。」

 「それだけ…ですか?」

 「はい。」

 「あんな者を野放しにするのですか?」


 あんな者とラキエルが言った。その矛先など今一番ホットな人物、魔強化(暴走)を起こしたエクサーに決まっていた。ラキエルは悪魔に対し並々ならぬ嫌悪感を示していた。だからこそ、一時的ではあるが天界にまで届き得る力を持ったエクサーには、憤りを露わにしていたのだ。


 「そうなってしまいますね。」


 こうもあっさりと怒りを受け流すミカエルにラキエルの怒りが溢れ出すというのも無理のないことだった。


 「私たち『イノセント』が行きます。悩みの種は根絶やしにします!」

 「ダメです。」

 「なぜですか。」

 「いいですか?まず、あれほどの殺意に私は最大限警戒しています。しかし、それでも地獄に出向かないのは、あの者の作り出す被害が未知だからです。実際に地獄に我々が出向くとき、それは被害が少なからずこの天界に届く可能性が極限まで高まった時です。しかし、今その者がこちらに影響を与えてくる確証はありません。実際にあの殺意は消えましたし。なので不用意に仕留めにかかる必要はないのです。」

 「そんなことを待たなくても、僕がこの瞬間に奴を殺せば…」

 「いい加減にしなさい!ラキエル!」


 ミカエルが声を張った。


 「あの者の正体は天使長の誰も知り得ません。天界に届くほどの殺意をお持ちのようなので相当な力を持っていることは確実ですが、その者のはハッキリ言って未知数です。そんな者の元に易々とあなたに派遣命令を出すとお思いですか?あなたが大切だから言っているのです。わかってください。あの者には今のあなたでは太刀打ち出来ません。」


 ラキエルは、ミカエルの『今のあなたでは太刀打ち出来ない』という言葉を聞いて拳を強く握った。


 「わかりました。」


 ラキエルは小さく頷いた。


 「そうですか。」

 「失礼しました…」


 ラキエルはミカエルの顔を見ることもなく飛んで行った。


 (大丈夫でしょうか。)


 ミカエルは心の中で強く心配した。


 ーーーーー


 天界・ソクラテ


 3人は談話室でラキエルの帰りを待っていた。ナドリエルは本を読みながら、ロルエルはお菓子を食べながら、サラマエルは落ち着かない様子でソワソワしながら。部屋の中は少し散らかっており、この状態を見ると子供ながらに共同生活をしている感が滲み出ていた。


 「ナド、落ち着いて。大丈夫だよ〜。」


 ロルエルはもぐもぐしながらナドリエルに声をかけた。


 「えぇ、でも心配。」

 「お!噂をすれば…」


 すると、足早にこちらに向かってくる誰かの足音が次第に聞こえ始めた。そして、ラキエルが部屋のドアをバンッと勢いよく開けた。


 「おかえり、ラキ。」


 ナドリエル読んでいた本を急いで閉じ、ラキエルの方に誰よりも早く向かった。


 「で、どうだった?」


 ロルエルは聞いた。


 全員が固唾を飲んだ。その中でもサラマエルは特にドキドキしていた。


 「7日後、あの者の粛清を命じられた。」


 ラキエルは嘘をついた。ミカエルにそんなことは指示されていない。しかし、そんなことどうでも良かった。


 ラキエルの中にはあの悪魔を殺すことしか頭に無かったのだ。『イノセント』として若き才能を見出され、特別な待遇を受け育ち、同年代とも比べて頭ひとつ抜けた才能と実力を持ったラキエル。そんなラキエルの抱えているプライドが、名も知れぬ自分と同じぐらいの年端のそれも嫌厭する悪魔にヒビを入れられた。普通はこの感情を流しているところであったが、ラキエルは言ってもまだ子供であり、それにプライドの大きさも並々ならない。その結果、このような究極的な選択に至ったのだ。


 そんなことを露知らず3人はあっさりと信じて受け入れた。


 「ミカエル様が言ったのなら、よぉ〜し、やるぞ〜!」

 「しょうがないわね。」

 「じゃあ、もう、私は自分の部屋に行くわ。3日なんてあっという間よ。準備しなきゃ。」


 サラマエルは颯爽と部屋を後にした。


 「サラの言う通りだね。7日なんてあっという間だ。お菓子の準備しなきゃ。」


 ロルエルも自分の部屋に戻って行った。


 「ラキ、大丈夫?疲れてない?」

 「大丈夫。」


 ナドリエルは少しだけラキエルの違和感を感じ取っていた。まるで何かに取り憑かれているように感じた。でも大丈夫だと本人に言われたら言い返すことはできなかった。


 「じゃあ、僕も戻るよ。」


 ラキエルも自分の部屋に戻った。


 部屋にはナドリエルだけが、ポツンと残った。


 ーーーーー


 自分の部屋に戻ったサラマエルは、満面の笑みを解放した。


 嬉しかった。地獄に行けることが。地獄に行って悪魔を殺せることが。


 ーー終ーー


 天使ってなんか性格悪いイメージあるんですよね。この言い方だとちょっと聞こえが悪いですね。もっと細かく言うと真面目だからだと思うんです。真面目で正義感が強い見たいなイメージがあるんですね。さらにそれが誰よりも強くて、融通が利きづらい似たいな勝手なイメージがあるんです。だからちょっと自己中味が増して、性格が悪く見えてしまうんだと思います。

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