21 お茶会
天界・ミカエル宮・庭園
白い花々の咲く広い庭園。
咲いた花の種類は何百とあったが色は一貫して全て白で統一されている。
普通に生きていて視界から入る情報のほとんどが白い一色で彩られている事はない。だからこそ、この庭園は幻想的であり、日常から離れた異世界のように感じられる。
そんな、白一色で彩られた庭園の中央。そこには、白に金の装飾の施された机が1つと椅子が3つ。その1つの椅子には展開の統率者であるミカエルが腰をかけていた。
ミカエルは椅子に座りながら、周囲の白い花に優しく微笑みかけ、顔の動きだけで愛でるように花を見ていた。
すると、ミカエルの背後からコツコツと2人分のヒールの足音が響く。
ミカエルがゆっくりと振り返ると、金髪で小柄な天使と水色髪で背の高い天使の2人がこちらに歩いて来ていた。
「ウリエル、ラファエル。来てくれて嬉しいです。」
ミカエルは微笑みかけるように2人の天使の名前を呼んで歓迎の意を示した。
「別にいいよ。」
「いえ、いえ、今ちょうど時間のある時期ですし、大丈夫です。」
2人は返事をしながら各々用意された椅子に座った。
名前はミカエルの言った通りの名前であった。
1人目は、”天使長”ラファエル 身長は210cm 女性
天界では医療関係を仕切っている天使。別名『癒しの頂き』。
身に纏っている白に水色の装飾の施された中世のドレスのような豪華な衣装は、ミカエルと比較しても一段とボリュームがあり、貴婦人のような姿であった。
ミカエルと比較すると小さいが、背格好に見合った翼の大きさをしていて、その大きさは天界でミカエルに次ぐ2位。
容姿は、小さな顔に糸目、少しピンクの頬、ライトブルーのくるくるのパーマがショートカットに整えられた、まさに人形のような容姿をしている。
2人目は、天使長ウリエル 165cm 女性
天界では軍備を仕切っている天使。
ミカエル、ラファエルと違い身につけている衣装はドレスだけでなく、その上に甲冑を身につけている。
背中より生えた翼は大きくはあったが、2人と比較してサイズは控えめ。その代わり、羽が2つではなく、合計で4つ生えている。
浮き毛の一切ない整えられた金髪の長い髪に金色の目。その目は力強く、常にウリエルからは覇気のようなものが漏れ出していた。
ミカエルは目元につけたレース越しに2人の顔を見て、微笑むと静かに口を開いた。
「あなたたちも気づいたでしょう。今、地獄では何やら見過ごすことのできない事が起きたようです。」
ラファエルはミカエルの言った”見過ごすことのできない事”の中身をすでに理解しているようで、軽く頷きながら口を開いた。
「わかっています。しっかり確認はまだしていませんが、きっと異常事態が起きたようですね。」
「じゃあ、私が行くよ。」
ラファエルが話を終えた矢先、ウリエルが話を開く。
この瞬間、空気が少しばかり圧迫したように感じた。
「いえ、結構です。」
「あ?」
ミカエルは早々と断った。
「あなたが今行って圧力をかけては、地獄がどう出てくるかわかったものではありません。なので、監視の強化をお願いしたいのです。」
ミカエルはウリエルが地獄に行った際の地獄の動きを予測して、それが今、適当な行動でない事を伝えた。
「ちぇ、せっかく戦えると思ったのによぉ。」
「ウリエル。そんな言葉を使ってはいけませんよ。」
ラファエルはウリエルの荒々しい口調を上品でないという理由で注意する。それに対してウリエルはムッとした顔をした。
「こちらからは以上です。」
「あら、本当にこれで終わりですか?」
「ええ…」
「あなたが呼んだのでもっと何かあると思ったのですが。」
ミカエルは少し笑いながら答えた。
「何もないですよ。強いていうなら最近会ってなかったので、会いたかっただけの言いますか。」
2人はポカーンとした顔をした。
それに気づき、一人で笑っていることに恥ずかしくなったミカエルは両手で顔を隠した。
実際、この程度の話であれば別にわざわざ、2人を集める必要など無かったのだ。それでも、ミカエルが2人を呼んだ理由はとても純粋で無邪気な理由だけであった。
「あ、あまり見ないでください。」
しかし、手の隙間から顔が赤くなっているのは見え見えだった。
そんなミカエルに2人も笑った。
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それから、3人はしばらくお菓子やお茶を楽しんだ。
「そろそろ。お開きにしましょうか。」
「そうですね。」
3人とも席を立ち、ウリエルとラファエルの側近が飛んできた。
「じゃあ、行きましょうか。」
ここで、ウリエルがミカエルに話しかけた。
「ガブは元気か?」
この言葉にラファエルもミカエルの方を見る。
ミカエルは少しだけ苦い顔をしていた。
「元気ですよ。以前に比べれば、マシになっています。」
「そうか…じゃあな。」
ウリエルは、羽を羽ばたかせ、側近と一緒に飛び立って行った。
「では、私も。」
ラファエルも側近と共に飛び立って行った。その2人の後ろにミカエルは手を振った。
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それからすぐのこと…
「ミカエル様!」
ミカエル宮の中に戻ろうとしたミカエルの元に1人の少年の天使が飛んできた。
少年はエクサー程の年齢で白いスーツを着こなしている。そして、金色短髪の髪にビー玉のような目をしていた。
「どうしましたか、ラキエル?」
少年の名はラキエル。未来ある天使の1人であった。
ミカエルが優しくそう聞くとラキエルはどこか憤った様子でミカエルに話しかけた。
ーー終ーー




