213 父と己
地獄・テンパラ城
裏山で始まったラムパルダとドラギナの戦。
この戦いは己が特性のぶつけ合いにして、周囲を灰燼に帰す戦いであった。
ドラギナは早々に自身の持てる全ての力を発揮する。そうでもしないと父親に一撃入れるどころか自分を守る事すらできないからだ。
「足りんぞドラギナ!!熱が足りない温度が足りない!!」
ラムパルダのドラギナに対する攻撃はほどほどであった。ここでドラギナを殺しては何にもならない事を自覚していたからだ。
しかし、それを自覚したとて気を抜けば致命傷になりかねない。ドラギナは父の強さを知った。
ドラギナはラムパルダに吹き飛ばされると、その勢いでラムパルダから距離を取り、二足歩行の竜の姿に変身した。その大きさは現在約150cm程度から160cm程にサイズアップし、筋肉質でより大きな熱を発していた。
「今ここで姿を変えるか…」
ラムパルダは久しぶりに見た変身したドラギナを見て感心した。
「温度も体温も急激に上昇…オレの温度に少しは近づいたな。だが、今その姿ではスピードが落ちるぞ?」
「…わかってる。」
「なるほど…」
ラムパルダは右手から火炎放射を放つ。これはドラギナに少量のダメージと目眩しを与えた。
その隙にラムパルダはドラギナに近づくと思いっきり振りかぶってドラギナを空高く蹴り飛ばした。
ドラギナは空中でなんとか体勢を立て直そうとするも、重力に逆らっているために上手く体勢を変えられない。加えて、竜の状態になっているせいで余計に表面積が大きくなったために困難を極めていた。
そこにラムパルダは火を原動力に空気を焼きながら飛んできてドラギナに追いつく。ドラギナはラムパルダとの間に10層の”バリア”を張る。
「甘いわっ!!!」
ラムパルダは右手で”バリア”を全て殴って粉砕すると、そのままドラギナの腹にアッパーを加えた。
「うぐっ…!!」
ドラギナは腹部に強烈な痛みを覚える。そしてさらに、拳を受けた腹部に一瞬にして超高温の熱が発生する。
「『打ち上げ花火ィィ』!!!!」
次の瞬間、ドラギナは火炎の爆発とラムパルダの拳の衝撃と共にはるか上空に打ち上がる。その途中で小さな花火が発生。そして、最後に一際大きく美しい花火が発生。この花火は爆発が花火の皮を被った様だった。
攻撃を受けたドラギナは口から黒い息と血を吐き出す。
ドラギナはなんとか体を動かし、体勢を戻す事を試みる。そして、顔を上空に向けた時だった。その先にラムパルダが右手を強く握り、待ち構えていたのだ。
「上がったのなら下がらなくてはなぁ…」
ラムパルダは笑ってそう言った。
ドラギナはそれを見て血の気が引くのを感じた。
ラムパルダは右拳にさらに力を入れるとそこに大量の魔力が流れ、超高温の熱が発生する。
「『打ち下ろし花火ィィ』!!」
ラムパルダが準備万端の右拳でドラギナを真下に向かってぶん殴ると、ドラギナは地面に急降下。
その様子は先の逆。落下中に多くの花火を発生させ、ドラギナが地面に叩きつけられると同時に大きな花火が地面で発生した。
「はぁ”っ…」
地面に叩きつけられたドラギナは掠れた声で黒い息を吐く。そして、だんだんと元のドラギナの姿に戻ってしまった。
そのすぐ側にラムパルダが華麗に着地をする。ラムパルダは上からドラギナの顔を覗き込んで、ドラギナのおでこをデコピンした。
「魔力回路に傷を負ったか。防御に無理矢理魔力を流して、さらにオレの魔力を受けて損傷…耐久に改善点ありか…」
ラムパルダは地面に倒れるドラギナに後ろを向いて歩き出す。
「おっと?オレのジャケットはどこだ?」
ラムパルダは自分の脱ぎ捨てたスーツのジャケットを探すが見当たらない。
「ん?」
ラムパルダは地面とは程遠い感触を足の裏に感じた。ラムパルダはその正体を確認するために足元を見るとそこには黒コゲの布切れがあった。
「…やってしまったか。おーい愛しのフレイス!!!」
「ちょっとその言い方やめて。」
ラムパルダが妻のフレイスを呼ぶと、フレイスは一目散に近くに降り立った。
「どうやらジャケットを燃やしてしまったらしい。頼めるか?」
「頼めるか?」
フレイスはラムパルダの言葉がどこか気に障ったらしく、強烈な眼光でラムパルダを睨んだ。
「お願い…します。」
「よろしい。で、あの子はどうするの?」
フレイスはボロ布のジャケットを受け取るとドラギナの方を見た。
「仕方がない背負って帰るか。」
「背負ってってあの子荷物じゃないんだけど。」
「わかっている。」
ラムパルダは倒れ込むドラギナをヒョイっとおんぶすると、城に帰って行った。その後ろをフレイスは微笑ましそうに見ていた。
「魔力を使おうとするなよ。」
「…わかってる。」
「なんだいじけてるのか?」
「いじけてない。」
「同世代と比較すればお前は負け知らず…それが久々の敗北、それも父親に。まだまだ青いなお前も。」
「…うるさい。」
「とりあえず魔力は使うなよ。自然体でできる事を模索しろ。魔力回路が治るまではな。」
ドラギナも年相応の感情を見せ、父も母もその様子を微笑ましく見守る。今ここには殺伐とした地獄には珍しい家族の温かさがあった。
ーーーーー
翌日…
魔力回路の損傷の回復しきらない中でドラギナが行った事、それは…”瞑想”であった。
なぜ瞑想を選択肢として選んだか、それは起床時にエクサーはいつか言っていた事が思い出したからだった。
〜〜〜〜〜
「瞑想?」
「そうだよ。結構効果あるって言うかなんて言うか。」
「スピリチュアルか?オレはそう言うのには興味ない。」
「じゃあドラギナはやった事あるです?」
「…ない。」
「じゃあ否定はその後に言うです。」
この記憶は少し前の記憶。
放課後、ほとんどの授業が終わり、生徒達の声が学校から少しずつ無くなっていた時の教室でエクサー、クー、ドラギナの3人で訳もなく喋っていたそんな時の不意の会話の記憶だった。
「で、エクサー。何が効果あるんだ?」
「うん…なんて言うか続ける事が大事みたいな感じなんだけど、僕が自動の回復魔法を会得できたのもそのおかげだと思う。自分の細部にまで意識を向けるから、自分の正常な形を理解できるんだ。」
「そうか…」
「半信半疑臭がプンプンするです。」
「そういうお前はやった事あるのか?」
「お父さんと一緒にやった事あるです。あとお母さんとヨガもやったです。」
「はぁ…」
「ま、まぁまぁ強制する訳じゃないし、ただ効果ある気がするってだけで…」
「頭の片隅に入れておくよ。」
「うん!」
「ところで2人共、帰りに何か食べて帰るです。」
「帰って…学食か?」
「な〜んで1日に2回も学食行かなきゃならないですか。」
「それもそうか。」
「じゃあビュッフェ行こうよ!新しくできたらしいし。」
「ナイスアイディアですエクサー!!じゃあ早速行くでs…」
〜〜〜〜〜
魔法の使えないこの状況で、この記憶が蘇ってきた。
ドラギナはこれを運命の示しと解釈し、このタイミングで瞑想を始めた。
瞑想を始めて4時間が経過…やり方はともかくドラギナは特にこれを億劫に感じていなかった。逆に頭が空になっているようで心地か良かったのだ。
炎上する森の中で1人、石の上であぐらで座るその姿は修行僧のようであった。
そんなドラギナを燃える草むらに隠れて、母であるフレイスが覗いていた。
「せっかくお昼持ってきたのに、話しかけるのも迷惑ね。」
フレイスは集中しているドラギナに話しかけるのは野暮であると思い、颯爽と城に帰って行った。
ドラギナはそれに気づかずただ1人瞑想を続けていた。
それから時刻は夜と呼ばれる時間に突入していた。
地獄は常に夜なので、悪魔以外から見ると完全な違和感を覚えるが、それでも時刻は夜を一刻と刻んでいた。
ドラギナは未だ目を瞑り、あぐらで岩の上に座った状態であった。
そんなドラギナの脳内は空っぽではなく、考え事をしていた。その議題は求められている”強さ”に対する解であった。
しかし、それは簡単に求まるものではなかった。”強さ”という一見シンプルなこの言葉は多くの意味を孕む。が故に解釈がしやすく、が故にヒントがなかったのだ。
(父さんの考えには賛成する。もしオレに本当に才能と仮定し、力があるのにそれを求めない追及しない会得しないのは勿体無い。見す見す見逃すなど愚策。だからと言って何か策があるわけではない。)
ドラギナの背後の木が炎に耐えきれず、地響きを伴って地面に倒れる。
(何か探せ…記憶から経験から…過去にヒントがあるはず…!)
ドラギナは持ち前の記憶力の良さから記憶した物事の状況とセリフを思い起こす。
だが、ヒントに思えるような事柄に出会えなかった。それでも、ドラギナは記憶を思い出した。小さな情景変化や感情の揺らぎに着目して。
ドラギナは考えを巡らせるたびに眉間にシワが寄って行った。
もはや今のドラギナは瞑想状態ではない。瞑想で会得した集中状態をそのまま移行した超集中状態であった。
ーーー『ドラギナよ…彼女できたか?』
(は?)
ドラギナは家に帰ってきた瞬間、父親に言われたこのセリフが唐突に思い浮かび、思わず呆気に取られた。
(なんでだ。なんで今こんなどうでも良さそうな言葉が思い浮かぶ!)
このセリフはラムパルダが息子と久しぶりの会話をするための掴みのようなものであると思っていたドラギナ。その程度の言葉だと思っているのになぜか、このラムパルダのセリフが一番しっくり来るのが事実であった。
(なぜだ!オレは一体、この言葉のどこに適当さを感じている!!)
ドラギナは集中状態で困惑を始めた。真剣に真面目に集中して困惑しているのだ。
(いや…これが重要なのか…?今この状況でこんなセリフが記憶の引き出しから引き出される…いや、このセリフは違う…オレが無作為に記憶の詰まったタンスの引き出しを開けていたところに、いきなり1人でに引き出しが開いたような感覚…このセリフは何かを示すのか…)
ドラギナの心は自然に落ち着きを取り戻した。
(そうだと仮定して彼女が大事なのか?いや…そんなわけない。だったら父さんはこの家にいる事を強制するわけがない。じゃあ何だ…何を……まさか父さん、大切な誰かって言いたいのか?)
ドラギナは予想の段階であるが1つの考えに行き着く。
(彼女なんてのは冗談を混ぜた例えでしかない。いきなりそれを言うのではなく自分でそれに気づかせるためのヒント…一見、頓珍漢なこの考え…でもなぜかこの考えに適当さを見出した自分がいる。何か歯車が噛み合ったような感じが…)
ドラギナは珍しく考えを巡らせた事で生じた自分の熱に汗をかき始めていた。
ただ、それでも集中が解ける事はなかった。それほどにドラギナの考えはパズルのピースのように機械の歯車のように噛み合っていたからだ。
(でも問題はある。オレに彼女なんていないし許婚もいない…それに相当する者がいない。もちろん恋愛感情で結ばれた相手など比喩表現的なものでしかないはず…そうすれば、父さんか母さんか…いや、これもしっくり来ない。父さんも母さんは確かに大切だが、オレが守るほどでもない。2人共、自分で自分を守れるから…だったらいないと諦める。それもない父さんが今のオレで辿り着けるから、城に呼び戻したはずだ。じゃあ一体誰の事……)
ーーー『ドラギナ!!』
ーーー『ドラギナ!!』
ーーー『ムカつく後輩!』
ドラギナは思考の中で突如として手を振って自分を呼ぶ、エクサーとクー。そして若干、カッコつけたラーバルとその陰に隠れるレノを見た。
この4人を見たドラギナはフッと笑った。
(あぁ…そうか…お前達か…)
ドラギナは4人を思い出してなぜか安心したような気持ちと歯車がパズルのピースが確実にハマったような感覚になった。父の影響もあり、冷たいような痛いような、恐怖の眼差しで見られて来た自分に対等に接してくれた、友達と呼べる存在に改めて気付かされた。
ドラギナの流した汗は次第に蒸発を始めた。
それ程に今のドラギナは高温の熱を自ら発していたのだった。
この熱はラムパルダがドラギナの心臓に刺した楔を焼き消した。
そのドラギナの様子を燃える雑木林から見守るラムパルダとフレイス。
「大丈夫かしら…あんな温度の中にいて。」
「安心しろフレイス。今、お前がドラギナに触れる事は羽化寸前の蝶に触れる事と同義。これから完全になろうとするのを邪魔する事なのだ。」
「じゃあ見守るわ。」
息子を心配するフレイスをラムパルダは優しく説得した。
(あったかいな…きっと今のオレは父さんの言う強さを手に入れられたんだろうな…いや、まだだ!!)
ドラギナはこれで落着とはしなかったさせなかった。
(もっと突き詰めろ。大切な誰かを守る気持ちだけなら父さんと同じ域でしかない。もし本当にオレが父さんよりも才に恵まれているなら父さんを超えられる。考えろ…もっと奥へ。守るために強く、勝つために強く、そのための…!!)
突如としてドラギナの周りを青い炎の渦が取り巻き始める。
「「!!」」
それを見ていたラムパルダとフレイスは目を見開いて驚いた。
「あなた、あれって…」
「見立ては間違いなかった。ドラギナは…アイツは…一族の中の頂に立つぞ。」
ラムパルダは息子の成長を見て、嬉しそうに笑っていた。
(守るも勝つも倒すも殺すも…全ての結果に辿り着くのは自分の力…大切なのはそれ1つ1つであり、その集合体…己の”望みを現実にする力”だ!!)
森中にドラギナの青い炎が飛び火し始め、森が青く輝き始める。
(たどり着いた。これがオレn…)
ドラギナの右肩に誰かがそっと手を置いた。ドラギナはそれに気がつくと目を開けて振り返る。そこにはよくやったと言わんばかりに誇らしげに笑うラムパルダがいた。
「その辺にしておけ。力を押さえろ。」
「父さんなんで…」
「力は実践で使うものだ。後は実践でどう出るかのお楽しみだ。帰るぞ飯の時間だ。」
「でも父さんせっかく…」
「周りを見ろ。お前の炎は森にまで飛び火している。これでは他を焼いてしまうぞ?」
ドラギナは初めて自分の炎が青くなっている事とそれが森を上書きして焼いている事に気がついた。
「…わかった。」
「安心しろ。一度自分で開いた扉だ。そう簡単には閉まらないし、閉まっても開け方はわかるはずだ。一度覚えた事はそうそう消えない。」
ドラギナは炎を抑えた。
「さぁ疲れたでしょ。ご飯にしましょう。」
フレイスがドラギナの前に立つと、ドラギナをヒョイっとおんぶした。
「大丈夫か母さん?」
「失礼ね。私もまだまだ現役。あなたが+50kgになっても運べるわよ。それにあなた覚えてないかもしれないけど、昔からおんぶ好きなのよ。」
「…覚えてないな。」
そう言ったドラギナの顔はどこか赤らんでいるように見えた。
ーーーーー
時はプレズデントが”贄の杯”起動直後…
ドラギナは特に城から帰るという選択をしておらず、城にいた。
本当に理由があるわけでもなかった。
「ドラギナ〜、あなたいつ帰るの〜?」
城2階のテラスで本を読むドラギナの元にフレイスは訪れる。
ここからは花や木々が整えられた中庭が見える。そのどれもが燃えているため想像する中庭とは言い難かったが。
「いつ帰る…考えてなかったな。」
「私達はずっといてくれるのも嬉しいのが本音だけど学校もあるでしょ?お友達も心配するんじゃない?」
「そうか…じゃあ明日にでも帰るとするよ。」
「わかったわ。お父さんにちゃんと挨拶しておくのよ。」
「あぁ。」
そう言ってフレイスが城の中に入ろうとした時、ドラギナとフレイスは東の方角に異様な気配を感じ、急いで身構えた。
「なんだ?」
「わからない…とりあえずお父さんの所に…」
「大黒柱…登場。」
顔を見合わせあった2人の背後から悠々と一家の大黒柱のラムパルダが登場。
「父さんこれは…?」
「さぁな。オレにもわからん。」
ラムパルダは異様な気配のする方角をテラスから見つめる。
すると、視界の中、燃える森の中で無数に動く真っ黒な何かを発見する。ラムパルダはそれを見て笑った。
「なんだアレ。」
ドラギナもフレイスも黒い何かに対しての心当たりは全くない様子で、疑問を浮かべた。
「シャドウだ…」
「シャドウ…ってなんだ?」
「プレズデントの魔術で生み出された影を媒介とした使い魔だ。」
「プレズデントって”繁栄王の?」
「そうだ。ヤツめ…なかなか面白い事をするではないか。」
焦る2人に対して、笑っているラムパルダの様子は強者の様であった。
「ドラギナよ…さっさと帰れ。」
「は?」
「あの程度の雑魚1000万来ようとオレの敵ではない。つまり、この有事にお前がいる意味はここに無い。お前はお友達を守れ。せっかく力を手に入れたのだ。使えるチャンスだぞ。」
「…わかった。」
ドラギナは翼を背中から生やすと宙に飛び上がった。
「では達者でな。いつでも帰って来い。」
「わかった。」
「じゃあね〜。」
ラムパルダとフレイスは手を振ってドラギナに別れを告げると、ドラギナは頷いて飛んで行った。そして、クー達の魔力を探し始めた。
ーーーーー
時は現在に戻る…
地獄・サンクタムシティ
ドラギナは静かに目を開けた。
「この状態でおねむとはいい度胸だな…本当に神経を逆撫でしてくれる!!」
プレズデントはドラギナの様子に大変腹を立てていた。
ドラギナはそんな事お構い無しにプレズデントを睨む。
「なんだ?その目は!!」
プレズデントが怒号を発した次の瞬間。
ドラギナは右足の踵を浮かせ、地面に踏み下ろすと周囲に青色の炎が発生する。
「…!なんだ…なんだコレは…!?」
プレズデントも思わず後退りしながら周囲を見渡した。
青く輝く炎のに照らされながらドラギナは集中状態に入る。
(父さんの言った通り、このままではオレの炎が被害を出す。それではダメだ。漏れ出した炎を体に抑え込め。もっと効率的にプレズデントを倒すために炎を集中させろ!)
ドラギナの意識に答えるように青い炎はドラギナの体に戻って行く。
青い炎を吸収したドラギナの体は変化を生じ始めた。
背中からは大きな翼が、腕からは赤い鱗が生え、爪も伸びた。瞳は右側だけが水色の宝石を埋め込んだ色になり、左目はいつもの赤でオッドアイになる。背丈も少し伸びて大人びると、ドラギナはちょうど竜と人型の中間の姿に変貌した。
「まさか…お前…ラムパルダの息子か…?」
プレズデントはその姿を見て、ドラギナがようやくラムパルダの息子であると理解したようだった。その驚いた顔を見て、ドラギナは笑った。
「ご名答…」
青い炎がドラギナの元に戻る。
ドラギナの体には所々に亀裂が生じ、そこから青い炎が漏れ出していた。
コレにて地獄の業火を携えたドラギナは『インフェルノ・イフリート』へと成ったのであった。
ーー終ーー




