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DeViL 悪魔生転物語  作者: オクラ
 7章 『次なる王』 ー大魔界の異常ー
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 204 プレズデント戦 勃発


 地獄・サンクタムシティ


 「ハッハッハッハッハァ!やはり、命を狙われている時の戦闘は格別なものだな!!」


 壇上から大きな声で興奮を口にし、指揮者のように手を振りながら、シャドウを意のままに操るプレズデント。


 「そう言うことは自分で戦ってから言うもんだろうが。」


 F,Dは、自分の身で戦わないプレズデントに対し、思わずシャドウと戦いながらツッコミを入れてしまった。


 F,D、S,B、ピアノ、フォルテvsプレズデントが開始。

 4人は率先して、プレズデント本体を叩きに行く気満々。しかし、その道を大量のシャドウや影の触手に邪魔をされ、本体への攻撃は困難を極めていた。


 「邪魔ね…あなた!この死体どうするの!!足元に倒れられてると邪魔なんだけど!!!」


 S,Bは足元に倒れた贄となった信者達に憤っていた。

 当然だ。戦闘の最中(さなか)、一歩踏み出すたびに死肉を踏んだ感触が毎度訪れてはたまったものではないのだ。


 すると、F,D達4人のいる周囲の地面が影に飲み込まれる。

 そして、その影は信者達だけを飲み込んで、消えた。


 「あら、ありがとう。プレズデント。」

 「どういたしまして。」


 プレズデントは壇上からペコッとお辞儀をした。

 今のは、プレズデントなりの優しさだった。


 「S,B!言ってる場合じゃないぞ!」

 「わかってるわよ!!」


 ピアノとフォルテも別ルートからプレズデントに接近することを考えて、F,DとS,Bからは少し離れた場所でシャドウとの戦闘を繰り広げていた。その戦いっぷりは見事な連携が取れており、熱い信頼の上に成り立つ”双子の絆”を感じさせた。

 

 「ねぇ!ピアノ数多くない!?」

 「多い…ですね…」

 「せっかく、手を黒くしたけど…これ絶対”銃”か何か作った方がよかったよね。」

 「そうですね…殲滅力に欠けています。」


 こんな会話をしながらシャドウを殲滅する2人。

 そんな中、ピアノはシャドウを倒し、次の方面のシャドウを倒そうと目線を逸らした瞬間だった。茂みから狙う銃口が一瞬だけ、目に映った。


 (銃口…!向いている方向は私じゃない!)


 「(ねぇ)様!」


 バンッ!バンッ!バンッ!!


 ピアノの呼ぶ声と同時に3発の銃声が響いた。

 ピアノはすぐさま、フォルテの方を振り返った。


 ただ、この心配は杞憂に終わった。

 フォルテの反射神経は銃弾の速度を上回り、目の前で3発の銃弾を握って止めた。


 「あっちか…」


 フォルテは銃弾の方向から、発砲者の位置を特定し、獣のような目で振り返る。

 そして、発砲者がいると思われる場所に全速力で走って行くと、草むらにいる発砲者の首を掴んだ。


 「う…ぐぅ…」


 フォルテが首を掴んだのはプレズデントの部下のアンダーソンだった。


 「あれ?あなただ〜れ?」


 フォルテは獣のような目をやめ、いつも通りの砕けたような口調で聞いた。

 

 アンダーソンは息苦しそうに、フォルテの硬い”黒腕”を叩いた。

 フォルテは喋れそうもないので、アンダーソンを解放した。


 「で、だ〜れ?」

 「はぁ…はぁ…私は…プレズデント様の部下の…アンダーソン…です。」

 「あらら、じゃあ敵か…」


 アンダーソンは覚悟を決めた顔でフォルテを見た。


 「わぁ〜、すっごい覚悟!腹括りすぎじゃない?」

 「もし…社長があなた達のどちらかに()られる可能性が1%でもあるなら、一矢でも報いようとするのが部下の心構えです…」

 「へぇ〜ちょっと尊敬できるぐらいだね。」

 「それに…働き口がなくなりますので…」

 「ふぅ〜ん、そうなんだ。頑張ってね!」


 そう言って、フォルテはアンダーソンに背を向けてピアノの元に帰って行った。


 「殺さなくていいんですか?」


 アンダーソンは殺されると思っていたとこに不意を突かれてキョトンとした顔をして言った。

 これにフォルテは足を止めて振り返った。


 「いやぁ…殺そうとは思ったよ。でもF,D様にはプレズデントしか攻撃対象に聞いてないから殺さない。怒られたら嫌だし…それと主人を守るなら頭だけじゃなくて体も鍛えなきゃ。こういう時に何もできないよ〜。じゃあね!」


 フォルテはアンダーソンにバイバイと手を振って、ピアノの元に帰って行った。

 

 (いざって時…ここまで役に立たないとは…仕事ができるだけではいけないな…)


 アンダーソンは去って行くフォルテの背中を見ての無力さを実感した。


 「ピアノ、ただいまー!!」


 ピアノの元に帰って来たフォルテはシャドウとの戦闘を再開した。


 「姉様、殺してはいませんか?」

 「ダイジョブ!」

 「よかったです…」

 「よ〜し!気合い入れて本丸落とすぞーー!!」


 気合いを入れてプレズデントに向かって一直線で前進するピアノとフォルテ。


 「「!!」」


 前進を始めてわずか数十秒後。

 2人はF,DとS,Bのいる方向で魔力の流れが変わったことに気が付いた。

 

 「わぁ〜!”人獣”だーー!!!」


 2人が振り返って先にいたのは、”人獣”になったF,DとS,Bの2人だった。


 「ちょっと、あなた!こんなにポンポン私の手の内晒したくないんだけどー!!」

 「仕方ない。プレズデント(アイツ)の顔面に一発入れるにはコレするしかないからな。」


 F,Dはサランカスで”バブルス”に感染したフォルテと戦った時のような、獣の手と足。牙と耳と体毛を備えて2足歩行の姿に。

 S,Bは両手を完全に翼に変え、足は鳥の足のように細く、長い形に変わっていた。


 この姿になった2人はものの数秒で壇上に到達した。

 

 「待っていたよ。”      ”、”     ”。」

 「ごめんなさいね、プレズデント。2人共その名前は捨てたの。」

 「そうなのかい。」

 「ふんっ白々しい…」

 「悪いけど思い出話をしに来たわけじゃないのね…アンタをぶっ飛ばして、アレ止めるから!」

 

 S,BとF,Dの2人は不敵に笑うプレズデントをぶっ飛ばすために、飛び上がった。


 「「!!」」


 攻撃は命中するかのように見えた。

 しかし、攻撃が当たるギリギリの出来事。2人は、プレズデントまで拳2つの距離で何かに攻撃をされると、左右に吹き飛ばされた。

 

 「痛ってぇな…」


 左に吹き飛んだF,Dは地面からゆっくりと起き上がり、顔を上げると目の前には2足で立つシャドウがいた。

 S,Bにも同じ状況が目の前にあった。


 「めんどくせぇことしやがったな。」


 F,Dはそのシャドウが他とは違い、自分のはっきりとした脅威であるとわかった。

 このシャドウにはシルエットしかない。ただ、それでもわかった。それでも十分だった。

 目の前のシャドウは、プレズデントがF,Dの影から作った影の”コピー体”だったのだ。


 『影の複製体(シャドウ・コピー)

 相手の影を使用して、そこから複製体、いわば”コピー体”を作り出すプレズデントの技。

 能力値は、この技を使用した時の相手の状態を完璧にコピーする。コピー範囲は1m以内と短い短所を持つ。


 「ちょっと、本当に〜。なんでここまで来て自分と戦わなきゃいけないの…よっ!」


 S,Bは渋々言いながら、”コピー体”に対して先制を仕掛ける。

 だが、相手は今の自分であり、すぐさま反応し返され、拮抗状態が生まれた。


 プレズデントは自分自身の”コピー品”と戦うF,DとS,Bを見てニヤニヤと笑うのだった。


 ーーーーー


 人間界・???


 世に存在するサタンの封印部位は全部で5つ。

 ”頭部” ”右腕” ”左腕” ”右足” ”左足”の5つ。


 そのうち、ナールガは”頭部”と”右腕”の2つを吸収。

 ”右足”と”左腕”の2つは下界に存在。残る”左足”は天界にて封印されている。


 人間界に訪れたナールガはその下界に存在する2つを吸収すべく、今いる場所から最も最短距離にある”左腕”の封印されし場所に向かって、風を切って空を飛んでいた。


 その下には砂漠地帯が広がり、木も建物も存在しておらず、おおよそ人が住むには適さないような場所だった。

 

 「左腕までの距離…20km程か…」


 ナールガはボソッと言葉を吐き捨てるとさらにスピードを上げた。

 そこから距離を縮め、目標まで残り約5km程度の場所に差し掛かったところだった。ナールガの目線の先に巨大な砂上に建つ”ピラミッド”が姿を見せた。


 人間界・大ピラミッド


 このピラミッドの発見は突如として発見された正体不明のピラミッドだった。

 何が埋まっているのか。誰の墓なのか。それら一切が不明の謎多きピラミッドとして、人々の間ではかなり有名だった。そんなピラミッドということもあり、人気のなかった砂漠ちたいに、多くの学者や発掘の手伝いなどの”人間”が忙しなく働き、密集をしていた。


 (あの中か…)


 ナールガの吸収した部位は大きなピラミッドの内部に反応を示した。

 あの中にサタンの”左腕”が眠っていることは確実であった。


 ナールガはさらに速度を上げ、ピラミッドに接近するために魔力を放出し加速しようとした時だった。

 

 「!」


 目の前に6体の悪魔が現れたのだ。

 ナールガは急ブレーキで止まり、6体の悪魔と空中で対面した。


 この6体の正体は先日、人間の手によって封印を解かれた”大罪”と呼ばれる悪魔達だった。

 だが、ナールガはそんなことをい1mmも知らない。初対面も初対面だった。


 向かい合った間に流れた空気は、非常に濃度の高い緊張感を生んだ。


 ーー終ーー


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