20 いつも通りの
エクサーを止めるために戦うA2。魔器『ディクト』は、攻撃を跳ね返す能力に加え、特殊な改造によって、エクサーに圧勝を収めた。
A2の強力な攻撃により、崩壊一歩手前の図書館から間一髪脱出。
ラーバルはフールル先生と医務室に、A2はエクサーと帰宅。クーとドラギナはトバルカイン校長に送ってもらうことで戦いは終わった。
あれから4日後、エクサーが目を開けたのはクリスト城の自分の部屋のベッドの上だった。
「あっ、起きました。」
聞き慣れた声のする方を見ると、ピアノが椅子に座ってこちらを見ていた。
ピアノはフォルテと交代交代で、意識の戻らないエクサーの面倒を見ていた。
「お、おはよう。」
「おはようございます。」
エクサーはゆっくり体を起こそうとしたが、その時、全身に激痛が走った。
高温に熱した針で体の節々を同時に刺されるような激痛、エクサーは軽く涙を流すほどだった。
「だ、大丈夫ですか?」
ピアノは、エクサーにダメージ軽減魔法をかけた。
「あ〜、ちょっとはマシになりました。」
まだ軽く痛むが痛みは軽減されていた。
そこに勢いよくドアを開けてS,Bに部屋が入ってきた。まさかエクサーが起きているとは思ってはいなかったS,Bは驚き、猛スピードでこちらに抱きついてきた。
「あっ。」
ピアノも止められないスピードだった。
「痛ったあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
S,Bに抱きつかれ、再度、全身に激痛の走ったエクサーは城中に聞こえるほどの叫び声をあげた。
しばらくして、部屋に叫び声を聞いた、A2とF,Dとその後ろに隠れているつもりのフォルテが入ってきた。
「なんだい?今の声は。おや、エクサー起きたのかい?」
とA2はエクサーに喋りかけたが、そのエクサーは白い泡を吹いて倒れていた。
泡を吹くエクサーの周りであたふたするピアノ、悪いことをしました顔と何もしていない顔を混ぜたような顔をしているS,B、この状況にF,DはS,Bを担いで部屋の外に出て行った。
2人はすぐに帰ってきた。S,Bは半分ベソをかいていた。
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あれからエクサーはピアノに治療をしてもらい、なんとか起き上がるぐらいになった。
エクサーは魔石を割ってからのことを全く覚えていなかった。
そのことをA2に伝えると、A2が何があったのかを教えてくれた。
しかし、エクサーはそれを聞いても半身半疑だった。なぜなら記憶がなかったから、地獄に来たばかりの自分がやったとは、にわかには信じられなかった。
ちなみに、いつも元気なフォルテが今日は何かの後ろに隠れていることに関しては、魔強化の際の放った殺気にまだビビっているかららしい。
エクサーは完治することを条件に学校に復帰する運びとなった。
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「体は大丈夫ですか?」
「はい、なんとか。」
エクサーは学校の校長室にトバルカインと2人でいた。
「あの〜、ごめんなさい。いろいろと。」
「構いませんよ。死者は彼、いえ、侵入者だけで良かったです。」
トバルカインの顔はどこか少しだけ悲しそうだった。
「そうでした、ラーバルが2人で話をしたいそうです。どうしますか?」
エクサーもちょうど話をしたいと思っていた。だから、ちょうど良かった。
「します。」
「わかりました。この下の階の談話室103にいるといます。」
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「ここだよね。」
エクサーは下の階の103と書かれたドアの前に立った。
流石に緊張していた。左手の拳をギュッと握りドアをノックした。
ドアの先には赤いフカフカの長椅子にが向かい合って置いてありますその間に、赤を基調とした机が置いてあった。
ラーバルはその椅子に座っていた。
「ここに座るといい。」
ラーバルは自分と向かいあった椅子にエクサーを誘導した。
なんとも言えない空気が流れた。なんて喋り出せばいいかわからない、まず喋り出していいのかわからない。エクサーの頭は一杯一杯だった。
ラーバルも傷は完治しているようだった。しかし、右のおでこから右目の下にかけて大きな傷が残っていた。
ここでラーバルが喋り出した。
「いい傷でしょう?まるで強敵と戦って負った傷のようだ。」
ラーバルは笑いながら言ったが、すぐに真面目な顔に戻った。
「すまなかった。」
ラーバルは頭を下げた。
「僕が未熟だったせいで、君に不幸を被ってしまって。」
「いやいや、いいんですよ。あんまり覚えてないですし。」
「いや、そういうわけにはいかない。僕の思考が幼稚だったせいだ。」
ラーバルは続けた。
「ロイドに殺される間際までやられて、巻き込んでしまった君に、謝罪をしたかったくなった、私怨で馬鹿なことをした僕を殴り、咎めたくなった。レノが好きだともっと伝えたくなった。でも、そんなことは死ぬ間際でできるとは限らない、伝えられるとは限らない。だから僕は、後悔を抱えて死ぬよりも誠意一杯やることやって死を迎えた最もうよ。」
一部「ん?」となれどラーバルの変化は伝わってきた。
「そうですね。頑張ってください。」
しかし、急にラーバルが元のラーバルに戻った。
「ただし、エクサー。君に負けたという事実はどうも僕の中で腑に落ちない。だから、僕は君を倒すまで君のライバルでいることにする!」
思いもしない宣言にエクサーは目を丸くする他なかった。やんわり断ろうかとも考えたが、「いえ、結構です。」なんて言っても聞きそうにないので「はい。」と答えた。
「じゃあ、僕はレノが待っているから行くとするよ。」
エクサーは思った。変わったのは意識の表面だけなんだと。でも今のラーバルは前に比べて生き生きとしていた。
ラーバルはエクサーに握手を求るように手を差し出した。
エクサーもその手を力強く握った。
2人に交わされた握手は、仲直りを示した。
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トバルカイン魔法学校・校長室
トバルカインは校長室の窓から外を眺めていた。その目の焦点は窓から見える景色ではなく、過去の思い出に焦点があっていた。
トバルカインの右手にはある少年の写真が握られていた。
〜〜〜〜〜
「なぁ。あんた強いんだろ?」
「えぇ。」
「じゃあ、やろうぜ。」
〜〜〜〜〜
トバルカインが思い出していたのは、1人の少年の悪魔との会話だった。
あの日、少年とトバルカインは戦い、トバルカインは圧勝した。でも、少年はその日、才能を開花させた。
忘れもしなかった。少年は負けたにも関わらず、その場で上向きで倒れ、大きく口を開けて笑った。
この出来事は、少年だけでなく、トバルカインにも大きな手応えを与えた。
自らの手で生徒の才能を開花させたこと。それはトバルカインに教育者としての自信を与えた、数少ない出来事だった。
「あなたは道を踏み外したのでしょうか。いえ、それはあなたに失礼ですね。会えるのであれば、またどこかで会いましょう。」
トバルカインの顔はどこか悲しさを残しつつも、前を向いた。
「校長。入ります。」
1人先生が校長室のドアをノックした。
「はい。少し待っててください。」
校長は手に持った少年の写真を、机の引き出しに入れた。
「今回の件の報告書です。」
「わかり……た。」
「ひ…い…かん………。」
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天界・ミカエル宮・庭園
「ミカエル様、お2人共、到着いたしました。」
ダンディーな姿をした男の天使が、ミカエルの横で片膝を着き言った。
「そうですか。」
白く統一された美しき庭園。
心地の良い風が吹いていた。吹く風に、植えられた白いバラに似た花が揺れ、風に乗ってくる花の香りは繊細でどこか中毒性を持ってしまうような匂いだった。
庭園の中央の大きな丸机にミカエルは座っていた。丸机には4つの椅子、机の上には4つのティーポットと少量のお菓子が用意されていた。
遠くから、とてつもないオーラを放つ2人の天使が歩いてきた。
「よぉよぉ。来てやったぜ、ミカエルさんよぉ。」
覇気すら感じる元気な声。
「コラ、そんな言葉を使うものではありません。」
それを叱る、ずっと聞いていたくなるほどの優しい声。
「好きな椅子に座ってください。」
2人は椅子に腰をかけた。
「では、お茶会を。」
ーー終ーー
一旦、1部終わりました。疲れた。
私が文章を書くことがいかに下手くそであると再認識しました。
がんばります。