199 天界来訪
天界・ミカエル宮
大魔界にいたはずのエクサーは、カイエルに連れられて、瞬きの隙に天界に姿を移していた。
体の真ん中を光の輪で拘束されているため、身動きは取れない。しかし、この拘束にこれといった攻撃性はない。ただただ、破れない拘束をされているだけなのだ。
(地獄とか大魔界と違って、天界は太陽が昇ってるみたいに明るいのか…)
一瞬にして大魔界から連れてこられたせいかエクサーは目を窄めて、周囲を見渡した。
空には太陽に似た、光り輝く光の球体が、空から見下ろしている。
天界は、地獄や大魔界と違って一昼夜が昼間だ。
一昼夜が夜である地獄や大魔界にいたエクサーにとっては目が慣れないのも当然のことなのだ。
「ん?」
エクサーは少しずつ元の目の大きさで周囲が見えるようになり始めた時だった。
進行方向の先に大きな宮殿が姿を見せた。
「あれがミカエル様の住む宮殿。ミカエル宮です。」
「ミカエル宮…」
昔、なんとなくミカエルについてA2から聞いていたエクサーは、ミカエル宮と言う単語に少しばかり聞き覚えがあったのだ。
ミカエル宮に近づくとわかる。周囲には甲冑を重装備した天使達が警戒のために宮殿の周りを飛び回っている。
カイエルはそこに容赦無く突っ込んでいく。周囲の天使達も一度は警戒のそぶりを見せたが、カイエルだと気づくと、頭を少し下げ、迎え入れた。
カイエルはミカエル宮の正面の門に降り立つと、門が自動的に開いた。2人は玄関通路を歩き、ミカエル宮の中に入って行った。
ーーーーー
宮殿の中は、流石は天使達の上に立つ存在の住む場所と言った内装。
素晴らしく清潔感と高級感があった。
これは地獄と違って窓から入ってくるのが、明るい光だからだろう。それを建物全体が白い素材で建築されているため、よく光を反射し、より明るく感じる。
エクサーは、この空間を物珍しそうに見た。
すると、カイエルは扉の前で止まった。
「ミカエル様の準備ができるまでこちらでお待ちください。」
カイエルが扉を開けた先は、なんの変哲もない高級な部屋だった。
中には最低限の物が置かれ、壁に向いておかれた机と椅子。中央には向かいった長椅子と、その間に置かれた長机。その上には気持ちばかりのお菓子が添えられていた。
「いいんですか…?」
「構いませんよ。ミカエル様の計らいです。ずっと立っているのも酷でしょう。座っていてください。」
「ありがとうございます。」
エクサーが長椅子に座ると、カイエルはエクサーの拘束を解き、ミカエルを呼びに行くと言って部屋を出て行った。
「ふぅ…」
エクサーは椅子に座ると、無意識のため息をついた。
(緊張するなぁ…初めての場所だし…相手は悪魔と対立する天使だし…)
無理もなかった。いきなり敵対する天使の本拠地にお邪魔するなど、気を張らないわけにはいかない。それに、宮殿を警備する天使達からの目が痛いのだ。
(あんな目を向けなくてもなぁ…別に僕が親を殺したわけじゃないんだし…今から暴れるわけでもないんだし…いや、冷静に考えてさ、いきなり初めましての僕にあんな、丸見えの敵意見せますかね!?もし、地獄に天使が来てももう少し優しくすると思いますけどね!)
エクサーは心の中でつらつらと天使達の態度への不満をぶちまけていた。
そんなこんなで10分ほどが経つと、部屋の扉を誰かがノックした。
エクサーは急いで背筋を伸ばして座り直した。
扉を開けて入ってきたのはカイエルだった。
「ミカエル様の準備ができたようです。こちらに。」
「わかりました。」
エクサーは椅子から立ち上がると部屋の外に出た。
「いいですか?これからミカエル様からの質問には嘘偽りなく全てを話してください。」
「わかりました。」
「そう緊張しないでください。ミカエル様はお優しい方ですので。」
エクサーは思わず心の中で無理言うなと思ってしまった。
そして、2人はついにミカエルの部屋の扉の前に立った。エクサーは思わず固唾を飲んだ。今からミカエルの実物を目の前にすると考えると、自然と体に力が入ったのだ。
「失礼致します。」
カイエルがそう言って扉を開けると、エクサーの眼前に一斉にして眩い光と優しく心地よい風が飛び込んできたのだ。
エクサーは思わず、目を瞑った。光は目を瞑っても容易にわかるほど明るかった。その光がなくなったことを感じたエクサーはゆっくりと目を開けると、その先にはミカエルが椅子に腰掛けて待っていた。
「ミカエル様お連れいたしました。」
「ありがとうカイエル。ご苦労様でした。」
ミカエルはエクサーを見ると微笑んだ。
「どうぞ、お掛けになってください。」
ミカエルは自分の机の前に置かれた椅子に手を向け、エクサーにそこに座るように促した。
エクサーは何も言わずに、吸い寄せられるかのように椅子に座った。
「私はどういたしますか?」
「エクサーと2人にさせてもらえますか?」
「かしこまりました。」
カイエルは頭を下げ、部屋から出ていった。
「お久しぶりですねエクサー。と言ってもあなたは覚えていませんね。あの時のあなたは暴走していましたから…ん?」
エクサーはボーッとミカエルを見つめていた。
「どうしましたか?」
ミカエルがエクサーの視界の中で、小刻みに手を振るうと、エクサーは我に帰ったようにハッとして動き出した。
「大丈夫ですか?」
「はい…」
エクサーはただボーッとしているわけではなかった。
ミカエルを目の前にして見入ってしまっていたのだ。
純白のレースが目元を隠し、完璧なまでの純白の腰ぐらいまでありそうな髪の毛。純白のドレスに背中から生えた大きな羽は、ゆっくりと優しく羽ばたいていた。
この様子は、凄まじく美しかった。いや、もうそういった表現では収まりきらない。美の到達点に相応しいほどの高潔な美をエクサーは目の前にしていたのだ。
「何か飲みますか?」
ミカエルは席を立ち上がると、部屋の壁際に置かれた食器棚から、ティーカップと皿を取り出し、飲み物を瞬時に作ってみせた。
「少々お熱いかもしれませんが、ゆっくりとどうぞ。」
ミカエルはエクサーに皿に乗ったミルクティーを渡した。
「ありがとうございます。」
ミカエルは自分の分のティーカップを持って、再度椅子に座った。
「自分で言うのもおかしいですが、いい出来ですね。」
ミカエルは自分で淹れたミルクティーを飲んで自賛をした。
「緊張していますね…」
「もちろん…」
「そう緊張なさらないでください。私はあなたを取って食うわけではないですから。」
「あの…!A2元気ですか?」
「元気ですよ。口はいつになっても割りませんが。」
「そうですか…」
「いつまで経っても口を割らないからあなたを呼んでのですよ。」
「何を話せばいいんですか?」
「どうやって人間界に繋げたか。それと人間界で何をしたかです。」
「わかりました。」
「フフフッ、正直で嬉しいですよ。」
エクサーはどうやって人間界に行ったか、その先で何をしたかをわかる範囲で何も隠さずにミカエルに話した。ミカエルはエクサーの話を聞きながら、紙にその内容を書き取っていた。
「なるほど…魔力で無理やり人間界に繋げたと…無茶をしますね。」
「でも、A2は簡単にやってましたけど、やろうと思ったらできるものですか?」
「できませんよ。そんなことをすれば、一生涯、魔力回路が壊れてしまいます。彼の魔力性質は変幻自在に等しい。特別な彼だからできるのです。」
「そうなんですね…」
「それとあなたは、人間だった頃の幼馴染と会ったのですね?」
「はい。」
「直接的危害は加えていませんね?」
「もちろんです。」
エクサーは喋り終わって、ティニーを泣かせたことを思い出したが直接的危害は与えていないのでスルーした。
「…あなたが幼馴染と出会っている時にA2が何をしていたかはわからないのですね?」
「そうですね。でも、ギムレット神父に追われていました。」
「ギムレット…そうですか…」
ミカエルはギムレット神父の名前が出てくると、少しだけ難しい顔をしたように見えた。
ミカエルはペンを置くと、エクサーの方を見て微笑んだ。
「今日はここに泊まって行ってほしいと言ったら、不満が湧きますか?」
「…え?いや…特には…」
「そうですか。では、今日はここに泊まって行ってください。あなたの証言を天使長達に共有するために、ウリエル宮とラファエル宮に行きます。そして、天使長達がら疑問があれば、あなたに答えてもらいます。それと、もし何か思い出したことがあれば、明日お会いした時に話してください。」
「わかりました。」
エクサーはまさかのミカエル宮でのお泊まりが決定。
早く帰れるかと思っていたが、全くもってそうはいかない様子だった。
「カイエル、入ってきてください。」
ミカエルが、部屋の外にいるカイエルに言葉を飛ばすと、カイエルは部屋に入ってきた。
「この子を今日、ここに泊めます。部屋は…西棟の5階、庭園の見える部屋にしてあげてください。」
「かしこまりました。」
「では、エクサー、今日はここまでです。また明日お願いしますね。」
「はい…ありがとうございます。」
2人が部屋から出て行くと、ミカエルはティーカップをまとめて、部屋の入り口近くの机に置いた。
そして、もう一度机の前に座り、エクサーの証言をまとめた紙を見た。
ーーーーー
エクサーとカイエルは廊下を歩き、西棟に向かっていた。
道中、多くの天使とすれ違うが、カイエルとエクサーを見る目は正反対で、エクサーは刺すような目で見られていた。
そんな様子を察知したカイエルはエクサーに話しかけた。
「申し訳ないです。天使達があまり好意的ではなくて…救済が役目の天使のはずなのですが…」
「大丈夫ですよ。でもカイエルさん…?は、僕に嫌な印象を持たないんですね?」
「持たないですね私は。天使の中にも一定、ごく少数ですが悪魔を嫌わない者もいます。私はこの方にいるかと。」
「なぜですか?」
「なぜ?……そうですね…単純に誰かが傷つくのを見たくないからでしょうか?」
「そうなんですね。」
「誰だってそうでしょう。傷つくのも死ぬのも見たいわけはないです。こんな簡単で幼稚な考えで私は生きています。天使が傷ついた分、悪魔も傷ついている。そうやって神様は調和を管理しているはずです。幸せも不幸も、生も死も平等に配られたもののはずです。」
「でも、それって無理じゃないですか?僕だってそういう世界がいいなぁと思いますけど、数に潰されるのが目に見えている…だから…その…無理難題なんじゃ…」
「別に私は、私の考えが潰れてもどうも思いません。ただ、大事なのはアブノーマルな事を少しでも胸に刻んで行動する事です。揺れのない水面は新しいことを何も生まない。しかし、その中で新しい風が吹き、水面を揺らせば、いつか、いつしか変化を生む。いつか、地形を変えたり、草木の成長を促すかもしれない。そう言う、少しの歪みが大事なのです。」
「歪み…」
「それに異分子は異分子なりに意義と意地があるんですよ。」
エクサーはなんとなく自分が平和を目指しているのではないかと感じた。
カイエルの主張に少なからず胸が熱くなり、揺らいだからだった。
「さぁ、着きました。ここがあなたの部屋です。」
カイエルが立ち止まり、扉を開けると、とても客人を迎えるには勿体無いほどの綺麗な部屋が現れた。
「と言っても、エクサーはここにいることを進めます。外に不用意に出ると、悪魔をよく思わない天使達に嫌味を言われるかもしれません。」
「ハハハ…そうですね。」
確かにそんな感じがした。
そんなことを承知の上で外を歩くほど、エクサーはドMでもないのだ。
「窓の近くに天井から紐が垂れているでしょう?」
「ほんとだ。」
「その紐の先にはベルがついています。もし、何か用があれば紐を数回引っ張ってください。私が来ます。」
「わかりました。」
「この部屋は庭園がよく見えます。ぜひ、庭園をご鑑賞していてください。では、失礼します。」
カイエルはそう言って、部屋から出て行ってしまった。
(カイエルさん、少し怖めな顔をしてるけど結構優しいんだよなぁ…)
エクサーはソファに座ると、物思いに浅くふけながら天井を見上げた。
微かにピアノの音が聞こえてきた。誰かが近くの部屋でピアノを弾いているのだろう。
すると、コンコンッと誰かが部屋の扉をノックした。
「は〜い。」
エクサーはカイエルだろうと軽く返事をした。
扉の向こうにいる者は、返事を聞くと、ドアノブをゆっくりと捻った。
「!!」
ゆっくりと開く扉。
その隙間から漏れ出すように謎の危機感がエクサーの感覚を刺激した。
(なんだ、この気配は!扉の先にいるのは一体誰だ!?)
エクサーは急いで立ち上がり、部屋に入ろうとして来ている誰かに向かって体を構えた。
そして、部屋に入って来たのは、『ミカエル親衛隊主席・エクリエル』だった。
白のスーツにメガネ。長身でいかにも真面目な風貌。
多少の服装と身体的変化はあれど、五芒星襲撃時のエクリエルとほとんど同じであった。
エクリエルは何も言わずに部屋の扉を閉めた。
2人の間に会話をするわけでもない間が数秒流れる。
その静けさの中でエクサーは、いかに今の自分の鼓動が早いかを感じられた。
すると、いきなりエクリエルは腰にかけていた一丁の銃から弾丸を一発、発砲した。
エクサーはこれをギリギリで察知し、『バリア』で弾丸を目の前で止めた。
「くっ……!」
しかし、この弾丸の威力は想定しているよりも何倍も強力であった。
一向に威力が衰えず、止まる気配がないのだ。
そして、ついには『バリア』はたった一発の弾丸で破壊され、エクサーは左肩に弾丸を受けることになる。
「痛った!!!」
エクサーは後ろによろめきながら、出血中の左肩を右手で押さえた。
(回復ができない…相手の魔力で僕の魔力が鈍ってる!?)
エクサーの回復魔法の速度は明らかに低下していた。
エクリエルの弾丸が、エクサーの魔力を鈍らすほどの魔力を纏っていたからだ。
エクサーはエクリエルを睨んだ。
一方のエクリエルの目はエクサーを見下すように冷たかった。
「なんですかあなた…?」
エクリエルは問いをまるで聞こえていないかのように綺麗に無視した。
そして、エクリエルは右足の踵を浮かせて、コツンッと音が鳴るように踵を落とすと、部屋のギリギリを守る結界を張った。
(結界術!?)
エクサーは戸惑った。
明らかに逃がさないための結界。エクリエルはこの場で確実にエクサーを殺す気だったのだ。
エクサーの左肩は、こうしている間になんとか回復をした。
そして、エクサーはアレクトーンを取り出し、構える。
勢いよく踏み出した一歩を原動力に、エクサーは飛び上がってエクリエルに斬りかかる。
それをエクリエルは、持っていた一丁の銃で軽々と止めてみせた。
エクサーはなんとか押し切れないかと、両手が震えるほど力強くアレクトーンを握る。
だが、そこまでしてもエクリエルに刃が届くことはない。それどころか、エクリエルは、手を払って、エクサーを払いのけてしまった。
(この天使は本当になんなんだ!?こんな軽々と弾かれるのか!)
感想に浸っているエクサーだったが、エクリエルは銃をエクサーに向けると、数多の光弾を無造作に打ち始めた。
エクサーは弾幕を目の前に小さな『バリア』をいくつか目の前に作り、残りの捌ききれない光弾をアレクトーンで弾いた。部屋に外傷はない。結界術が張られている影響だ。
だが、全ては弾けない。
数発をエクサーは被弾。この数発がエクサーの魔力機能を限りなく使用不可に持ち込んだ。
(ダメだ…全然勝てる気がしない…)
エクサーの服に血が滲み始めた。
エクリエルはその様子に全く顔色を変えない。そして、持っていた拳銃を腰にしまうと、右手をエクサーの方に向けて軽く握った。
(!?)
その行動はエクサーから見れば、この場に意味があるとは思えない。
しかし、その考えとは裏腹に、エクリエルの軽く握った右手に光が集まり始める。その光は明らかな何かの形を形成し、エクリエルがそれを勢いよく握ると、そこには新たな一丁の拳銃があった。
『天器・マークゼロ』
エクリエルはこれを握っていたのだ。
エクサーは初めて見る拳銃から感じる危険性がひしひしと伝わっていた。
エクリエルは銃口をエクサーに向ける。
銃は標準を捉えると、銃口に光の粒子を集める。
エクサーは今からあの銃から放たれる一撃は自分の被害想定を遥かに超えるものが来ると肝に銘じた。それをなんとか受け切るためにエクサーは、構えを取った。
だが、今のエクサーは魔力の機能が鈍っている。ほとんどが使えない程に。
その様は万事休すに思えた。
ただ、この状況に救済の一矢が届く。
部屋の扉を突き破り、そのまま左手に携えた『天器・空遊び』を振り翳し、エクリエルの張った強固な結界が破壊される。
「エクリエル…少年はミカエル様の命でここにいる。その首元に刃物を突き立てる…どういうことかわかっているのか…?」
この一矢を放ったのはカイエルだった。
カイエルは静かに怒ったような口調をしていた。
(エクリエル…この天使の名前か?)
エクサーは今、自分を殺そうとしているこの天使の名前がエクリエルという名をしていることを初めて知った。
エクリエルもカイエルが現れたことで、銃口に溜まった光を解除し、マークゼロを光の粒子へと変えた。そして、何も言わずに外に出て行ってしまった。
「た…助かった〜〜。でもなんで来てくれたんですか?」
「ベルが鳴りましたので。」
どうやら、攻撃の最中、どこかのタイミングで紐が引っ張られ、ベルが音を鳴らしたようだった。
エクサーはエクリエルがいなくなったことで緊張感が和らぎ、その場に腰が抜けたように座り込んだ。
「申し訳ありませんでした。」
「いえいえ、幸い死んでないのでよかったです。」
「傷がひどいですね。手当を。」
「攻撃を受けて魔力が効かなくて。」
「そうですか…止血をします。上着を脱いでください。」
カイエルはエクサーの傷の手当をサッサッと手際良く済ませた。
「あのエクリエルさん…?っていう天使は一体どういう天使ですか?」
「エクリエルはですね。ミカエル様の護衛の一番の部下を任された天使です。」
「だからあんなに強いんですね。」
「それにエクリエルは典型的な悪魔排除主義の天使です。特に、五芒星襲撃からその思考に拍車がかかりました。」
「あぁ…」
エクサーの頭にはニヤニヤしているA2の顔が横切った。
「この右手は彼を守るために賭けたんです。」
カイエルは腕のない右肩を摩った。
「ですが、私が代償を払った罪悪感からか、彼はより力を求め、極端な思考に辿り着くようになってしまいました…」
「でも、そんな天使を止められるなんて、カイエルさん強いんですね!」
「いや…エクリエルと正面から戦っても勝てないですよ。見逃してもらったという言い方が一番適切ですかね。」
「そうなんですか…」
「さぁ、体を休めてください。周囲の警戒に私の近しい天使を勤めさせます。悪魔にも少しばかり寛容なので安心を。」
「ありがとうございます。」
「では、何事もなければまた明日。」
カイエルは部屋の外に出て行った。
あるで瞬間的な嵐のような出来事だった。と同時に、エクサーが自分はまだまだ未熟であると、認識させられる出来事でもあった。
エクサーは戦いで感じた恐怖や危機感がまだ体に残っている中で、ベットに寝転がった。
ーー終ーー