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DeViL 悪魔生転物語  作者: オクラ
 7章 『次なる王』 ー大魔界の異常ー
204/211

 198 来客


 地獄・ベリス島


 天使が大魔界に突っ込んだ以外、特にこれと言って何もない大海の大穴(ディープ)

 その様子を葉巻を吸いながら、サンラウンジャーに寝ながら見ているライダーと砂浜で子供のように砂の城を作っているI,BとE,Mの2人。

 

 (アイツら…体はデカくなったが、まだまだ子供だな…)


 ライダーはその様子を見て、I,BとE,Mが子供の頃、過ごしていた日々に浸っていた。


 「…ん…?」

 「どしたッスか、ベーちゃん?」


 I,Bは何かに気づくと何もない海をじっと見つめ始めた。


 「ライダー!べーちゃんが何か見つけたっぽいッス!!」

 「I,B〜何を見つけた〜?」


 ライダーは葉巻を吸いながら投げやりに言葉を飛ばす。


 「…来た…」


 するといきなり、上から来客が現れた。


 「なんだよ…本当に誰か来やがったのか。」

 「邪魔させてもらう…」


 そこに姿を見せたのは、クーの父親であり、地獄の刑務所『最終監獄(タルタロス)』の最高責任者であるバーナボー・サンソンだった。


 「久しいな…何十年ぶりか?」

 「50か…そのぐらいだろう。」

 「お前、見ない間に娘ができたらしいな…エクサーの友達でこの前、オレのところにズタボロできたぞ?」

 「聞いた。幸いに永久的に残る外相は一つもなくて安心したところだ。」

 「他に子供は作らんのか?娘を最終監獄(タルタロス)の後継にする気か?」

 「子供はもう作らない。嫁が産鬱になりやすいのでな。無理はさせない。それに娘は十分な才を持って生まれてくれた。後継にするつもりだ。」

 「…愛妻家だな。昔のお前からは考えられん。」

 「そんなことはいい。新聞読んでるか?」

 「読んでない。こんなところに新聞屋は来ないからな。」


 バーナボーは新聞をライダーの隣にある机に置いた。

 ライダーは新聞を手に取ると、表紙を見た。


 「なんだ、フラグセント死んだのか。」

 「数日前にな…」

 「誰に殺された。載ってる写真を見ても自殺じゃねぇだろ。」

 「犯人は未だ不明。大罪信仰界の仕業とも思ったが、それとする魔力の残りはなかった。」

 「膨大な信者から手当たり次第探したのか?」

 「フラグセントだぞ?並の悪魔じゃ近づくこともできない。近づけたとしても殺せるわけがない。それに信仰会の代表全員にもしっかりとアリバイはあった。」

 「…変な話だ。」

 「きな臭く感じるのはオレだけか?」

 「…確かに少し感じるな。」

 「ここに来る前にケレットと話した。」

 「ケレット…?あぁ、グガットの息子のか。」

 「そのケレットが言うにはプレズデントとの面会が取れないらしい。繁栄王と言われる奴の人脈なら何かフラグセント殺害に知っていることがあるかと思って聞きに行ったらしいが、撥ねられたらしい。それを聞いた『情報王・ネット』も探りを入れたが、全く持ってホコリが出なかった。それも綺麗すぎるほどにな。」

 「ネットが動いてホコリが出ないのは逆におかしいな。」

 「だからきな臭いんだ。」


 ライダーはたくさん喋って喉が渇いたのか、サンラウンジャーの下に置いておいたウイスキー瓶を蓋を開け、机の上のショットグラスに注ぎ、一気に飲み干した。


 「飲むか?」

 「いいや。これから一仕事ある。酒はその後にする。」

 「いつになったら、酒も勝負もオレに勝てるようになるんだ?このままじゃオレの勝ち逃げだな。」

 「させなねぇよ。ご老体相手に全力は良心が働いてるだけだ。」

 「そうかい…」

 「帰る。」


 そう言って、バーナボーは去って行った。


 「陸に帰るッスか?」 

 

 E,Mはキョトンとした顔でライダーに話しかけた。


 「帰らん。オレ達の仕事はここの見守りだ。」

 「わかったッス!!」


 ーーーーー


 大魔界・ウォーレン城(ルードレスネス領)


 「このぐらいの強さでいいでしょうか?」

 「そうね…ちょうどいいわ。」


 ベルベット色のいかにも高級なソファに寝転ぶルードレスネス。

 その肩をピアノは揉んでほぐしていた。


 「もうかれこれ2時間ぐらいやってるけど、これだけの時間やって折れないのは、バーツとあんただけよ。」

 「尽くす事には慣れていますので…」

 「姉はどこに行ったの?」

 「(ねぇ)様は、バーツ様とお庭で戦ってます。」

 「はぁ?なんで?」

 「姉様は少し血の気が多いので…」

 「こっちに影響したら許さないわよ?」

 「大丈夫だと…思います…」


 絶対に影響しませんとは言いきれない、なんとも言えない顔をピアノはした。


 「そう言えば、そろそろ仲間のことを探すの?」

 「そうですね。体も慣れましたし。」

 「探すなら私達も助けるわ。」

 「ありがとうございます。至れり尽くせりしていただいて。」

 「いいのよ。あなた達を見ていると、私の『もしも』を見ているようだから。」

 

 ルードは最初に会った時よりも何倍も優しくなった。

 もちろん、気分が悪い時はすこぶる悪いが。それでも、ピアノとフォルテには少しばかり丸く接してくれるようになった。


 「お茶でも入れますか?」

 「そうしようかねぇ〜。」


 ーー「たっだいまーー!!」


 そこにボロボロのフォルテがニコニコで帰ってきた。


 「姉様、おかえりなさい。」

 「ねぇねぇピアノ聞いて!すごい客人が来たのよ!!」

 「客人…ですか?」

 「そう見て見て、じゃじゃーーん!!」


 そう言ってフォルテが道を開けると、なんとそこにはS,BとF,Dがいたのだ。


 「ヤッホー!ピアノ元気そうね!!」

 「S,B様!F,D様!」


 ピアノは急いでS,BとF,Dに走って駆け寄った。

 

 「よかったですお無事で。」

 「お前達も無事でよかった。」


 すると、S,Bは低身長なりにフォルテとピアノを抱きしめた。

 ピアノとフォルテは馴染んだS,Bに抱きしめられ、とてつもない安心に包容されていた。


 「でも、どうやってここに来たの?」


 フォルテは抱きしめから解放されると、首を傾げて疑問を投げた。


 「実はね…すごい方に助けてもらったの!!」

 「「すごい方?」」


 S,BとF,Dが後ろを振り返ると、そこから『五大貴族・ライガー 通称アリババ』が姿を見せた。


 「誰?」

 「コラ!この方は五大貴族のライガーさんよ。」

 「この方が…」


 フォルテは五大貴族と言うぐらいなのだからもう少し怖い大魔族を想像していたが、現れたのは灰色の肌に菌の刺繍の入った純白のトーブの少年が現れ、少しだけ拍子抜けをしてしまった。

 

 アリババの登場に気づいたルードは、裸足でアリババに向かって歩いてきた。


 「久しぶりねぇ、アリババ。」

 「お久しぶりですルードさん。」


 この2人が正面から向かい合うと緊張感があった。

 何か踏み間違えれば起爆する触発感があったのだ。


 「いつもの伝令係はどうしたの?」

 「今回は僕が1人できました。あなたのところに伝令を遅らせると良くても瀕死で帰ってきますから。」

 「何?文句?」

 「いえいえ。毎度、伝令係にももっと力が必要だと気づかせていただきましたので。」

 

 だが、意外にもこの触発感は杞憂だったようで、ルードもアリババも節度を弁えた話を進めていた。


 「あんた、この2人を合流させるために来たわけ?」

 「そうです。お困りのようでしたので。」

 「ふんっ!あんたのそういうお人よし平和思想がやりづらくて嫌いだわ。」

 「申し訳ない。」

 「で、バーツはどこ?」

 「あぁ、そちらのお嬢さんと戦った庭の手入れをしています。」


 アリババはフォルテに手を向けた。


 「ごめん!ごめん!」


 フォルテは平謝りをした。

 そんなことをしていると、何やらS,B、F,D、アリババの通ってきた扉の奥から2人ほどの足音が聞こえ始めた。


 「ルード様、今帰りました。」


 そこにはルードの部下のバーツの姿があり、その後ろに誰かが隠れていた。


 「おかえりバーツ。後ろにつけているのは何?大きなキーホルダー?」


 ルードが冗談を交えてバーツに聞くと、後ろから出てきたのはなんと『五大貴族 青き凶星(ヤングスター)・アルドリン』だったのだ。


 「はぁ〜い!」

 「何、今日は?」

 「珍しいこともありますね。3人集まるなんて百年近くぶりですよ。」


 アルドリンはスタスタと足取り軽く、アリババとルードに近づいてきた。


 「あんたはなんのよう?」

 「私はこの悪魔さん達に情報提供をしに。私のお兄ちゃんとこの悪魔達のお仲間が戦っていたから。」

 「本当か?」


 さらに仲間と合流できる話を聞いたF,Dは思わず声を出してしまった。


 「ほんとだよ〜。船に乗ってる悪魔達は大海の大穴(ディープ)の真下にいる以上。」

 「船に乗ってる…シー・ブルー達か!」

 「確かそうだったような〜…お酒飲んだから覚えてない。」

 「そこに少年はいなかったか?」

 「少年?」

 「茶髪にクセのある髪型の。」

 「いなかったかな〜。」

 「そうか…」


 五大貴族達が集まって、情報交換をしたのにエクサーの話が一言も出ていないことにF,D達は心配の念を強めた。


 「とりあえず、その少年のことはいいから合流したら?多分お兄ちゃんのところにはいないだろうから、いるなら大魔界を彷徨っているか、キリエグのところにいるか。」

 「そうだな。とりあえず行くか。」

 「と言ってもここから行くのは2日ぐらいかかるけど。」

 「最速で行く。1日で行くぞ!」


 F,D達は今、この瞬間、シーブルー達の元へ行くことを決めた。


 「アンタついて行きなさいよ。私は外出たくないから。」

 「えぇ、私!?」

 

 ルードはアルドリンに、F,D達と一緒についていくことを提案した。

 当然と言えば当然だ。ここでF,D達とさよならして、大海の大穴(ディープ)の位置がわかるわけがないのだ。そんなことをすれば、遭難待ったなしと言ったところだろう。


 「アンタ以外に誰がいるのよ。」

 「アルドリンさんが行ってくれるのですか?なら僕は帰りますよ。」

 「えぇ〜〜。」

 「どうせ暇でしょ?」

 「しっけ〜〜い!」

 「アンタ一番スピード出るじゃない。ほら、アンタの手足と腰に縄巻きつけて、みんなを引っ張っていけばいいじゃない。」


 ルードとアリババの頭の上には文字通り、アルドリンに縄をくくり付けF,D達を引っ張って空を移動する想像ができていた。


 「いい具合にバカにされてるわ私…」

 「流石にそれは可哀想ですし、私の絨毯を1つお貸ししますので、それに乗って行ってください。」


 アリババは軽く手を2回叩いた。

 するとどこからともなく、絨毯がアリババの前に飛んできた。


 「F,Dさん達、絨毯をお貸ししますのでこれに乗って、お仲間のところに行ってください。」

 「そうか…感謝をする。」


 F,D達はアリババの言われた通りに絨毯に乗った。

 だが、ここでまさかの誤算。最後に乗ったアルドリンは絨毯の面積的に乗れないと言う事実がまさかの発覚した。


 「ちょっと〜私乗れないんですけど〜〜?」

 「仕方ないでしょ?乗れないならアンタ飛んできなさい。飛べるんだから。」

 「あのねぇ…私ここに来るのにも飛んできたのよ?疲れがあるでしょ??」

 「アンタ一番魔力効率いいんだから…」

 「はぁ…そういう問題じゃない…」

 「まぁまぁ、貸し1と言うことで…」

 「も〜う!!!」


 アルドリンはグダグダ言いながらも、しょうがないと割り切って先導してくれるようだった。

 

 「あの…ルード様…」


 ピアノとフォルテはルードの前に立った。


 「何?」

 「この度はありがとうございました。あのまま外を彷徨っていてはこのような状況には巡り会わなかったと思います。」

 「いいのよ。まぁ私も最初は変な魔力が領土に現れて神経質だっただけよ。気が向いたらまた来なさい。私千年は死ぬつもりないから。」

 「そうさせてもらいま〜〜す!!」


 この3人の仲は大変良好で一旦幕を下ろすこととなった。

 この光景にバーツは微笑ましく見ていた。

 ルードが温和に接している光景が凄まじく珍しかったのだ。


 「ライガー、オレもあなたに感謝する。助かった。」

 「いいんですよ。客人なんて久しぶりでしたし、何よりご婦人があんなにカレーを頬張ってくれるとは思ってもいませんでしたよ。」

 「おいしかったです!」

 「嬉しいですよ。」


 各々が世話になった者達と別れの挨拶を終えると、アルドリンはその場で魔力を放出した。


 「アリババ?この絨毯、私にちゃんとついてくるのよね?」

 「大丈夫ですよ。」

 「じゃあ、行くから。絨毯から振り落とされないでよね?」


 アルドリンはその場でF,D達に警告をすると、アルドリンは流星の如きスピードで、ウォーレン城の天井ガラスを突き破って、外に出て行った。絨毯も流石にこの速度には追いつけなさそうではあったが、ジョットコースターぐらいの速度であの後を追って行った。


 ルードとアリババの前にはガラス片が落ちてきた。

 この様子を見たルードは眉間をピクピクと動かし、怒っていた。

 

 「まぁまぁ落ち着いてください。別れの後味が悪くなりますよ。」

 「…そうね…」


 ルードはなんとか怒りを抑え込んだ。

 その背後にバーツがそっと忍び寄った。


 「早急に直しておきますね。」

 「お願いするわ。」


 ルードは怒りをなんとか内に抑え込むことに成功し、アルドリンの開けた天井の穴から見える空を見た。


 ーー終ーー


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