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DeViL 悪魔生転物語  作者: オクラ
 7章 『次なる王』 ー大魔界の異常ー
203/209

 197 フラグセント殺害の真相


 大魔界・デルフォース城


 エクサーが天界に連れて行かれた日と同じ日。

 

 ナールガとプレズデントのいるデルフォース城は、この日も大変大荒れの天気。

 風も強ければ、雨も強いという最悪のコンディションであった。


 「最悪の天気だねぇ…」


 プレズデントはワインの入ったグラスを右手に持ち、窓の前に立って黄昏れるように外の様子を見ていた。


 プレズデントがこの城に来て、ボロボロだった外見の補填が着工し、城は綺麗になった。

 今いるプレズデントの部屋もスイートクラスのホテルぐらいには完成していた。


 「…ふぅ…」


 プレズデントはワインを一口飲み、ワインの香りの混じったため息を吐いた。

 

 プレズデントは雨が嫌いだった。

 濡れるから、湿気が多いからとかではない。偏頭痛があるからでもない。気分乗りにくいからとかでもない。

 雨を嫌う要因は、プレズデント本人の過去によるものなのだ。

 ただ、プレズデントはその過去を語ることはない。自分の内でその過去を煮えたぎらせ、渦巻かせるだけだった。


 「さてさて…そろそろ終わったかな…」


 プレズデントは机にグラスを置き、部屋から出て行った。


 ーーーーー


 プレズデントは城の地下へと続く、石の螺旋階段を歩いていた。

 道は暗く、ここはプレズデントの修繕の範囲外のせいで隙間風が漏れ流れている。


 「うぉっとっと…!」


 プレズデントは滑って転び落ちそうになった。

 暗いせいで足元が非常にわかりずらい。

 プレズデントは『ファイア』を体の周りに3つ漂わせて、見やすくしているにも関わらずだ。


 プレズデントが最深部に到達すると、その先には横に続く洞窟が待ち構えていた。

 プレズデントは、まだ歩かなくてはいけない現実にめんどくさく思ったが仕方がないので進んだ。


 ーーーーー


 あれから10分に満たない時間を歩いたプレズデントは洞窟の終点にたどり着いた。

 そこには、魔力が液体のように溜まった池があり、ナールガがその中に入っていた。


 「いい場所だねぇ…壁際から剥き出しの魔石の輝きがなんとも幻想的だ。私の芸術センスをくすぐるものがある。」


 プレズデントは笑いながら、液体に浸かるナールガに歩み寄った。


 「適合はどうかな?もう最終段階と言ったところではないかな?」

 

 ナールガはプレズデントが来たことを薄目で確認すると、池の中で立ち上がった。

 

 「キャアッ!いきなり全裸は刺激が強いよ!」

 「何言ってんだ?お前は服を着て風呂に入る趣味があるのか?」

 「あるわけないでしょうが、裸一貫だよ。」


 ナールガは池の中から出てくると、水に濡れた犬や猫のように体を震わせて水気を払った。


 「いやぁそれにしてもすごい魔力量だ。」


 プレズデントは全裸で目の前に立ったナールガを見て驚いた。

 真剣に見なくてもわかるほどに湧き立ち、立ち上る魔力がナールガの後ろから立ち上っていたのだ。


 「これでサタンの部位2つしか吸収していないのだから驚きだよ。」

 「あぁ…想像よりも何倍も魔力が手に入った。サタンは化け物を超えた神に近い存在だな。」

 「僕から見れば、(きみ)も十二分に化け物ですけどね…」

 

 ナールガはプレズデントの用意した服を着た。 

 それはオーバーサイズの黒に金の装飾の入った教皇服であり、それを身につけたナールガは凄まじいほどにラスボス感があった。


 「それで?サタンは抑え込めたかい?」

 「大方な。今、魔力を全解放したとしてもサタンの力に惑わされることはないはずだ。」

 「一時はどうなるかと思ったよ。天使と戦って帰ってきたと思ったらいきなり、暴走しかけて。なんとかなったからいいものを、流石に死んだと思ってしまった。」 

 「その点は感謝だ。」 

 「その点以外ももっと感謝するところあると思いますけどね!!」


 ナールガは服を終えると洞窟の外に向かうために歩き始めた。


 「ところで、なんでオレにフラグセントを殺させた?」

 

 ナールガは後ろについてくるプレズデントを振り向くことなく、言葉だけを飛ばした。


 「『贄の杯』を使うには多くの贄が必要だ。だが、今の地獄に望んで生贄になろうとする者はサタンの時代と変わってごく少数。だけど…今も昔も変わらない連中がいる。それはサタン信教会の連中さ。この連中はいい意味でも悪い意味でも、いかにも宗教的にサタンに忠誠を誓う。いつ何時でも見たことのないサタンに対して。だから、僕はその連中の熱い忠誠を生贄としてお借りする…」

 「どうやって?」

 「(きみ)は知らないかもしれないけど、私は地獄では『繁栄王』と呼ばれているんだよ。私の手がけた事業、ビジネス、会社、全てが悉く成功するのだよ。つまり、私には誰かを動かす力とそれを成功に導く力があると自負している。この力を使って、私はサタン信教会の代表に立ち、信者達を生贄へと誘導する!」

 「…そうか。」

 「名案だろナールガ君?」

 「自惚れるな。時に現実は偶然にして見放す。」

 「今までの私の道のりが偶然だと?」

 「…かもしれない…それは誰にもわからないことだ。名案だと言うなら結果で示せ。地獄も大魔界(ここ)も結果が全てだ…」

 「言う通りだね。」


 プレズデントは指をパチンッと鳴らしてナールガを指差し言った。

  

 「そうだナールガ君、私は明日、地獄に上がる。君は一緒に来るかい?」

 「いや、行かない。あともう少しサタンの魔力を抑えてから上がる。」

 「どのくらいだい?」

 「さぁな…納得するまでだ。」

 「なるべく早くしてくれよ?私は別にサタン信者ではないんだから、いつまでも信教会の代表なんてやっていたくないからね。」

 「オレもサタンは強大な力としか見ていない。」


 ーーー『フッ…そうか…』


 ナールガは背後から謎の声を聞いた。

 急いで後ろを振り返るが、そこにはプレズデントしかいない。


 「どうしたんだい?何かあったかい?」

 「いや…」


 咄嗟に後ろを振り向いたが、あの声は後ろから話しかけられたようであり、自分の内側から発生した声にも思えた。

 そして、あの聞いたことのない声に対して少しばかり気取られた。

 なぜかわからない。ただ、あの声には圧倒的無類の強さが隠れているように感じた。


 だが、ナールガは実物として目の前から感じているわけではないこの感情にいつまでも振り回されるわけにはいけないと、気持ちを抑え込んだ。

 プレズデントはそんなナールガを少し不思議な目で見ていた。


 「ともかく、オレが地獄に上がるまでに準備をしておけ。」

 「もちろんですとも。」


 ーー終ーー


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