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DeViL 悪魔生転物語  作者: オクラ
 7章 『次なる王』 ー大魔界の異常ー
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 190 今できることを


 大魔界・キリエグ屋敷(キリエグ領)


 エクサーが黄泉霊山に到着するより前の話…


 屋敷中を探し回るエクサーと土鬼(どき)。しかし、どこにもレイヒの姿はなく、土鬼も焦っている様子だった。


 「いませんね…」

 「そんなことある?誘拐とか?」

 「それはあり得ませんね。他の大魔族の魔力もありませんし…」


 土鬼の口調は誰が見てもわかるほどに焦っていた。

 土鬼はレイヒの行きそうな場所を頭をフル回転させて考える。

 

 「もしかして!」

 「わかった?」

 「もしかすると…ヒョウ様のお墓かもしれません。」

 「ヒョウ様?」

 「はい。お嬢様のお母様です。」

 「じゃあ、そこに行こう!」

 「えぇ、お嬢様に何かあれば、私は旦那様に殺されますから。」

 「ヒェ〜。怖っ。」

 「行きましょう。」


 2人は急いで今いる場所から一番近い出口から屋敷の外に出る。

 しかし、そこには口元を布で隠した大魔族が数十人待ち構えていた。


 「土鬼さん、あれ誰?」

 「わかりません。あなた達!ここで何をしていますか?」


 土鬼は大きな声で目の前の大魔族に声をかけた。

 すると、大魔族の後ろから何やら大きな足音が聞こえてきた。

 

 その足音はドンドンと言う凄まじい重量を想起させ、地面を足音と同じタイミングで地響きさせた。


 「へ〜い、へ〜い、へ〜い、へい。」


 足音が近づいてくる。

 それと同時に、誰かの歌のようなものが聞こえてきた。


 「邪魔だ。」


 そして、大魔族達の後ろから声の主が姿を見せる。

 現れたのは、鬼族の大魔族だった。


 左の額から生えたツノ。

 身長は2mに近く、キリエグよりもムキムキではないがある程度の筋肉質な印象。

 短い金髪のオールバックに金色の下に垂れ下がった口髭。

 歯を見せずに笑みを浮かべるその様子に、エクサーはこの大魔族は確実に自分より格上であると直感した。


 「よう!2人さん。どっかにお出かけかな?」

 「あなたがこの者達の(かしら)ですか?」

 「おっ!質問に質問が返ってきたぜ。まぁいい。俺が頭かどうか言えば、こいつらの頭ではあるが、組織の頭ではねぇって感じだな。」

 「名前は?」

 「おっ!質問攻めだな。いいねぇ責めが好きな女は嫌いじゃなぜ?俺の名前はサンバソウってんだ。そして、これを見ろ!」


 この大魔族の名前はサンバソウ。

 するとサンバソウはいきなり右肩を露出させた。その右肩にはデカデカと『鉄』と言う言葉が彫られていた。

 

 「まさか…鉄鬼の…!」

 「正解!俺は今の鉄鬼の一番幹部だ。」

 「ここに来たと言うことは…そのつもりでいいですか?」

 「もちろんだ!お前んとこの主人を殺す気だぜ、うちの頭はよぉ!!!」


 覇気を溢れんばかりに放出するサンバソウ。

 その様子にエクサーはたじろいでしまった。


 「エクサー。あのサンバソウは私が相手します。ですから、お嬢様の元へ。」

 「大丈夫?」

 「えぇ、私もキリエグ様の幹部ですし。なんとかします。ほら、行ってください。」

 「うん。」


 エクサーは東に向かって飛んでいった。

 その後ろを集まった魔族達が追おうとしたが、サンバソウはそれを止めた。


 「やめとけ。子供を寄ってたかってはやりすぎだ。ど〜う見てもありゃあただの悪魔の子供。そんなもの殺して何になる。嫌だぜ俺は殺戮者にはなりなくねぇ。それよりも関係のありそうな目の前の奴を殺すのに注力しろ。」

 「『土石鬼流(どせきりゅう)』!!!」


 土鬼の足元の地面が盛り上がると、土が岩などを巻き込んでサンバソウ達に向かって流れた。


 『土石鬼流』

 自身の周辺の土を用いて、周辺を土や岩で押し流す技。


 「うぉっ!!いきなりだな!」


 サンバソウは飛び上がって空中で体を捻り、攻撃範囲内まで回避した。

 この攻撃は一度、捕まってしまうと連鎖的にそのまま飲み込まれるため、これに瞬時に対応できなかったサンバソウ以外はそのまま土に飲み込まれ、圧死してしまった。


 「いいねぇ、やっぱり責める女は好きだ。」

 「そうですか。ですが生憎、命を狙ってくるあなたと仲良くはできませんよ?」

 「俺は仲良くしたいけどなぁ!」


 サンバソウは勢いよく地面を足で踏みつける。


 「『鬼術(きじゅつ)激鬼衝(げきしょう)』!!!」


 その瞬間、凄まじい振動が土鬼の襲い、身動きが取れなくなった。


 『鬼術・激鬼衝(げきしょう)

 大きな足踏みで振動を生み出し、相手の動きを止める技。


 「好きだったぜ!あんたの事!」


 動けない土鬼にサンバソウは右拳にキスをすると思いっきり殴りかかった。

 まぁまぁ気色の悪いパンチをぶちかまそうとしているサンバソウ。

 実際、嫁のいないサンバソウには土鬼がすごく良い女に見えていたのだ。


 「『鬼術・蜃鬼楼(しんきろう)』…」


 だが、この攻撃は土鬼に当たったと思ったら、土鬼の姿がそこにはなかったのだ。


 『鬼術・蜃鬼楼(しんきろう)

 限界まで攻撃を引きつけ、攻撃を交わす技。その様子は残像のように見え、そこに実態がないのに実態を錯覚させる。

 しかし、この技は相手の攻撃に大きく依存するため、攻撃を引きつけすぎないと失敗し、引きつけすぎると失敗するため、鬼術の中で最も修得が難しいとされている。


 「当たりませんよ。それでは。」


 サンバソウが右を振り返ると、そこには土鬼が岩の上に立っていた。


 「次は追いかけて欲しいタイプ!忙しい女だ、押してきたり、引いてきたり。だが、俺はそれがいい!!」


 土鬼はサンバソウの様子に先ほどまであった緊張感を捨て、変態じみたこの大魔族をどう払いのけるかを考えることにシフトチェンジを始めた。


 ーーーーー


 大魔界・黄泉霊山(キリエグ領)


 時は今に戻る。


 「遅くなった。」


 レイヒをお姫様抱っこするエクサー。

 レイヒもこれには目を丸くしていた。


 エクサーはそっとレイヒを地面に下ろした。


 「いやぁ、どこ行ったか心配だったんだ。土鬼さんが言うにはここにいるって言うから来てみたけど、正解だったね。」


 エクサーは笑ってレイヒを見た。


 「えっ…なんで…1人?」

 「あぁ〜。土鬼さん、鉄鬼の1人を相手にしてて僕だけ来たの。でも…」


 エクサーはヤヨイの方を見た。


 「僕じゃなくて、土鬼さんがこっちに来るべきだったね…」


 レイヒを確認して、一緒に帰るだけだと思っていたが、こちらに近づけば近づくほど、その先にとんでもない魔力があることに気づいたエクサーは目の前の大魔族がそのとんでもない魔力の主だと気がついた。


 「ガキが1匹。しかも大魔族でもなんでもないただの悪魔が迷い込んできた…」


 ヤヨイはゆらゆらと体を揺らすと、エクサーの腹に一発打撃をキメると、エクサーは吹き飛んだ。


 「僕はレイヒを殺す用があるんだ!」


 そして、そのままレイヒを殺そうと手刀をレイヒに振り翳した。

 そのヤヨイの頭に思いっきり『アレクトーン』が突き刺さる。


 「な、なんだ?」


 ヤヨイの動きは脳を傷つけられたことによって停止。

 掠れてた声で剣の飛んできた方を目だけで見ると、その先にはエクサーが走ってきていた。


 「アレクトーーン!!!!」


 エクサーがアレクトーンを呼んだ瞬間、アレクトーンはいきなり爆発すると、ヤヨイの頭を吹き飛ばした。

 ヤヨイに向かって走っていたエクサーが空中で何かを手繰り寄せるとその手にアレクトーンが戻ってきた。そして、そのままヤヨイに切り掛かる。


 しかし、首が吹き飛んだはずのヤヨイは勢いよく大地を踏む。


 (『鬼術・激鬼衝』)


 エクサーが向かってくる瞬間、前に進むために右足が大地を踏んだ時、エクサーはその場で動けなくなった。


 (なんだこれ!?)


 その隙を見て、ヤヨイの頭部は再生を始めた。


 「あ…あぁ…痛いな…」


 ヤヨイは完全に頭部を再生させると、首を数回捻ってエクサーを見る。


 「ダメか…」


 エクサーは思わず声を漏らした。

 流石の致命傷とは言わずとも大きなダメージになるとは思っていたが、その考えはあまりにも浅はかな思考であった。


 「ふぅ…」


 エクサーは胸の緊張を吐き出すように息を吐いた。

 この目の前にいる大魔族は倒さなくてはいけない存在なのだ。

 

 「エクサー…あなたが相手じゃ…」

 「わかってる。でも時間稼ぎにはなる。僕がアイツを倒せなくても土鬼さんか誰かが来る間の時間稼ぎぐらいなら…」

 「でも…」

 「今できることを精一杯やる。土壇場ではこう言う基本的なものほど重要だってA2が言ってた。だからやる。死んでも君を守る!」


 エクサーはヤヨイに向かってアレクトーンを構えた。

 

 「僕と君との間にはどう考えても関係はないようだが、レイヒを守るならどの道、敵だ。一緒に狙って一緒に殺す。」


 ヤヨイは足を後ろに引くと、重心を深く落とし、左手を軽く開き指先をエクサーとレイヒの方に向け、右手も軽く開いて、口元に当てる構えを取った。


 ーー終ーー


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