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DeViL 悪魔生転物語  作者: オクラ
 7章 『次なる王』 ー大魔界の異常ー
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 178 大罪


 人間界・ゲリス


 このゲリスという街の街並みは、中東、アラビアンを思わす風情を持っていた。道路は舗装されておらず、どことなく空気が砂っぽい。それもそのはず、街の周りは砂漠だからだった。


 ここに住む住人達は、強い日差しによる肌へのダメージと風に乗ってくる砂の肌荒れを防ぐべく、年間平均30℃を優に超す程の気温の中でも、カンドゥーラのような服を身につけている。


 ゲリスはここら一帯の街の中でもかなりのお金持ちの街。ゲリスの所有する炭鉱及び鉱山から、近年多くの宝石含む天然資源が見つかり、その影響で周囲の街と比較しても大差ないほど貧困していたゲリスも急速に経済を潤すこととなった。


 ただ、『出稼ぎ問題』というものも付いてきた。金があるため、別の街から少しでも良い労働環境を求めて、許可なく商売を始める者が出てきたのだ。

 これが、経済の潤いで高まったプライドを持つゲリスの住人には腹立たしく、許し難いものだったのだ。その結果、許可の無い者達への取り締まりは強化され、街の入り口と街の中に発砲許可を得た兵士たちが配属されていた。


 ーーーーー


 そんな街の入り口を守る兵士2人。

 半日当番制で入り口の警護に当たる。半日と言っても、基本休憩はない。重い装備をつけているため、熱くて蒸れる。高給だから許せてはいるが、もし下がろうものなら辞めてやるが、兵士たちの口癖になりつつあった。


 「ん?」


 そんな中、1人の兵士が砂でできた今日限りの丘の先から1人の人影が現れたことを確認する。


 「おい、あれ見ろよ。」

 「なんだ?」

 「あれだよ、あの奥に見える。」

 「あ〜、人影だ。」


 どうやら、兵士が暑さで頭がおかしくなって幻覚を見たのではない様だった。間違いなくこちらに向かって誰かが歩んできていたのだ。


 「あれ?1人じゃないな。」

 「ほんとだ、2…3…6人いるな。」

 

 歩いてきているのは1人だけではなかったのだ。丘の死角になっていてわからなかったが、どうやら6人ほどで集まっている様だった。

 

 「なんだ、なんだ、ピクニックってやつか?」

 「このクソ暑い中か?」

 「確かにな…」

 「「ん?」」


 すると、2人は同時にあの6人に違和感を覚えた。


 「アイツら、服着てなくね?」

 「俺も思った。」


 2人の目にはあの6人が到底服を着ている様には見えなかったのだ。これはゲリスの住人の様なカンドゥーラの服を着ていないというわけではない。異国の服に見慣れていないというわけでもない。

 顔も見えない、しかし、そんな中でも服を着ていないことは遠目でもわかるはっきりとした事実だった。


 「暑さでおかしくなったのか?」

 「さぁな、とりあえず街に入ろうとするなら一旦止めるぞ。もし、怪しかったら、即刻、警察に突き出してボーナスゲットだ。」

 「あぁ、そうしよう。」


 2人は怪しい人物を捕えると、支払われる臨時ボーナスのチャンスだと思って内心ウキウキしていた。


 「お…おぅ…」


 案の定街の入り口に近づいてきた6人の人影だったが、目の前に6人が立つと明らかに人間ではないことが一発で分かった。

 人型ではある。しかし、どう考えても背が大き過ぎる者がいるし、顔立ちがここらの人間とは違い、東洋風なのだ。それに全裸で各々、動物の刺青が体のどこかしらに彫られていた。


 「なんだ人間?我々の行手を阻む確固たる理由があるなら聞いてやろう。」


 すると、1人の背の高いイケメンの右の胸元に『サソリの刺青』の入った男が口を開いた。その声は見下すようなものだった。


 「お、お前達はどこから来た?」


 兵士の1人が震えた声でなんとか声を振り絞った。


 「お前達…?」

 

 すると、サソリの刺青の入った男がいきなり頭に血管を浮かび上がらせ、髪の毛を逆立たせ始めた。


 「人間の分際で…お前達…だと…?我々に向かって…?」


 確実にブチギレていることは見てわかる。しかも全裸で、兵士達2人にはこの状況が非日常的すぎてこんがらがりそうだった。


 「まぁまぁ、落ち着いてよアスモデウス。そんなことよりお腹空いたんだから。」


 怒る男の隣にいたもう1人の男の悪魔が、なんとかなだめた。

 この悪魔の右顔面半分には『クマの刺青』が入っていた。


 サソリの刺青の入った男がなんと落ち着きを取り戻すと、街に入ろうと歩を進めようとした。


 「ダ、ダメです…あ、あなた達の素性がわからない以上は街に入れることができませんので…」


 兵士は言葉を噛みながら、男の侵入を防ごうとした。


 「黙れ。お前達の意見など聞いてはおらん。失せろ!」


 サソリの刺青の男はまたもや怒りを爆発させ、その様子は兵士が今すぐ逃げ出したくなるほど怖かった。


 「まぁまぁ、アスモデウス落ち着いて。ごめんね人間さん。僕たちお腹が空いててさ、食事にしたいからこれで許して。」


 またもやクマの刺青の男がサソリの刺青の男をなだめた。

 そして、2人の兵士の前に手を差し出すと、噴水のように溢れ出す金塊が溢れ出てきた。


 「これで見逃してね、じゃあね。」


 兵士は金塊を見るや否や、急いでそれを拾い集め始めた。

 それを見下すようにして、6体の悪魔は街に入って行くのだった。


 ーーーーー


 「た…助け…」


 街の女が1人、血まみれで泣いていた。よく見るとその女の両腕両足は完全にもがれていた。


 「食事中だから静かにしてね。」


 そんな女にクマの刺青の入った男がシーッとジェスチャーをした。


 街に入った6体の悪魔は適当なレストランから机と椅子を無許可でもってくると、街の中央の噴水の前に設置して、ゲリスの住人を生きたまま堂々と食べ始めたのだった。

 その数、平均して1人250体。それでもまだ誰の1人も腹を満たしてはおらず、途中経過でしかなかった。

 この様子に牙をむく、警察や役人はすぐさま食べられ、残るは非力な住人のみとなっていた。


 街は血に染まり、逃げようとしても簡単に捕まる。女、子供は一切関係なく、断末魔を上げながら捕食されていった。


 「やっぱり、僕たちが封印される前から人間の味って何も変わってないんだね。ギリ食えるラインだ。」

 「だが、食わないよりはマシだ。」

 「確かにねぇ…マモンの言う通りだね。」


 クマの刺青の男の話に、筋肉質で太い右腕に『キツネの刺青』の入った男が釣れた。


 「おい、ベリアル。結界はどうなってる?誰も逃してねぇだろうな?」

 「は…はい…一切。」


 少し高圧的にキツネの刺青の男が、右足に『オオカミの刺青』の入った男に聞いた。


 「全員余すことなく食い尽くす。久しぶりの飯だからなぁ…味の良し悪しなんてわからねぇ。」


 キツネの刺青の男はどんどんどんどん、人間を丸呑みしていった。


 「で?アスモデウス、これからどうするの?」


 クマの刺青の男がサソリの刺青の男に聞いた。

 すると、サソリの刺青の男はスープ皿に入れた人間の新鮮な生き血を掬い上げるスプーンの手を止めた。


 「お前達も気づいているとは思うが…サタンの力を持つ者が、我々の復活と示し合わせるかの様に現れた。この事実があれば、目的など、1つしか無いだろう。」


 6人全員が手を止めて、目を鋭くしてサソリの刺青の男を見た。サソリの刺青の男は怒っていたのだ。


 「サタンを…サタンの力を持つものを消す。それだけだ…」


 サソリの刺青の男が昂った感情を逃すように握っていたスプーンを横に払う様に投げると、その先にあった建物が次々と薙ぎ倒されていった。


 「じゃあ、地獄に戻るってことかぁ…骨が折れるぞ〜。」


 クマの刺青の男はサソリの男の昂りをいつものことのように流した。


 「いや…その必要はない。」


 そのセリフをサソリの刺青の男がぶった斬った。


 「え?なんで?」

 「人間界(ここ)には良い物があるようだ。きっと、サタンの力を持つ者が是が非でも来るだろう。そこを狙う。地獄に戻るのは最後のプランだ。」

 「その後はどうする?」

 「人間界(ここ)でも治めるとするか?足元の虫に程の命しか人間界(ここ)にはないが、生時、知恵ばかりはついているようだ。10年は退屈はしないだろう。」

 「そしたら、ミカエル達が来るんじゃない?」

 「その時は打って出よう。我々はサタンを消せればそれで良いのだからな…まぁいい、とりあえず、約束は守るぞ『大罪』の名にかけて。」


 すると、サソリの刺青の男が珍しく笑ったのだった。


 ーー終ーー


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