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DeViL 悪魔生転物語  作者: オクラ
 7章 『次なる王』 ー大魔界の異常ー
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 177 侵入と緊急事態


 地獄・アポロポリス号


 少し前まで赤い月の光の照らされていた海上もいきなり気分を変えたのか、荒々しく波を荒げて、エクサーとピアノ、フォルテのいる部屋の窓を酷く打ち付けていた。大きな波がある、それだけでは話は終わらず、それと肩を組んで仲良く、嵐にも思える強風と大雨が船を打ち付けていた。

 

 この様子をなぜか1つの窓から一緒に覗く、フォルテとエクサー。エクサーは外を見ながら、なんとなく不吉さというものを感じていた。


 「2人とも、そんなに外を見て面白いのですか?」


 椅子に座ったピアノは、雨と高波しか映らない状態のどこに面白さを感じるのかとちょっとした疑問を2人に投げた。


 「面白いよね〜エクサー。」

 「面白いって言うか…飽きないって感じ。」

 「そうですか…」


 ピアノは立ち上がると2人の隙間に無理やり顔を捩じ込んで一緒になって外を見た。

 1つ窓パンパンになりながら、外を見るフォルテ、ピアノ、エクサーの3人。他にも左右に窓が2つあり、1人1つ漏れる数は揃っているのになぜか3人が同じ窓から荒れた外を見る様子は、景色とは対照的に和やかな空気を生み出していた。


 「仲良いわねぇ、あなた達。」


 エクサー達3人は、いきなり後ろから声がしたことでビクッとして振り返ると、部屋にS,BとF,Dがいた。


 「あれ?いつの間に。」

 「なんだ、入ってきたことに気づかないぐらい外見てたのか、面白いか?」


 F,Dはどう見てもパンパンになって窓に顔を敷き詰める3人に疑問が湧いてしまった。


 「わかってないわねぇ〜結構見て見ると楽しいものよ。…ちょっと失礼。」


 S,Bが3人でパンパンの窓にさらに顔を捩じ込んで、外を見始めた。


 「何やってんだ、お前ら…」


 F,Dは、ここまでして見たい景色なのかと言う追加の疑問を生み出した。


 「ん?」


 ここでエクサーは何かに気づくと4人の集まった窓から顔を引っこ抜き、部屋の中をキョロキョロと見始めた。


 「どうした、エクサー?」

 「いやぁ、なんか大きい魔力を感じるんだけど…」


 どこかで身に覚えのある感覚がエクサーに流れる。


 「あぁ…大海の大穴(ディープ)が近づいてきたってことだな。それにしても、エクサーは気づくのが早いな、感覚が鋭いな。」

 「なるほど…」


 どこかで身に覚えのある魔力だと思ったら、マザーシップの終盤で大海の大穴(ディープ)の上空を通った時の感覚と一緒だったのだ。


 「あ〜あ〜…」


 すると、毎度のことのようにシー・ブルーの声がスピーカーを通して、船内に聞こえ始めた。


 「生憎の悪天候だが、このまま大海の大穴(ディープ)に突入する。周辺の魔力量は基準値よりも少し高い程度だが、許容範囲内とする。突入時は船の大きな傾きと衝撃が予想され、大魔界到着時にも大きな衝撃が想定される。突入時及び到達時は衝撃に備えるように以上。」


 相変わらず、ブツっと切れた会話。エクサーはいよいよなのだと思うと結構な緊張感に襲われた。


 ーーーーー


 ーーー同刻


 地獄・アポロポリス号(船長室)


 「さぁ、子供達よギアを上げろ。」

 「全速ってこと?」

 「そんなわけあるか、ハナ!我々のと言うことだ!」


 船長室にいるのは『シー・ブルー』とソナーによる周辺探知と大海の大穴(ディープ)の最新情報を常に手にいれている『長女・アリスト』と『次女・ハナドトル』。そして、船長補佐として、船内の状態と航海の手引きを父から学ぶ、『長男・カタリス』の4人だった。


 船長室には葉巻の匂いがし、窓を殴るような雨の跡が響いていた。


 「こう言う無茶にも思え、命を乗せているというこの状況が興奮とエクスタシーを呼ぶのだ。はぁ〜…たまらん。」


 シー・ブルーは咥えた葉巻の煙を部屋中に充満させながら、興奮してる様子だった。


 「若い頃を思い出すな〜…右も左もわからず、とりあえず無鉄砲に船を流し、嵐にぶつかった時の感覚。今思い出してもあの困難はたまらん。」

 「困難の良さなんて無いわよ…」


 ハナは実の父の興奮している内容がわからず、ついボソッと言ってしまった。


 「何!?いいかハナ!成果は困難を楽しんだ奴に舞い降りる。困難を楽しめない奴と一生懸命止まりの奴はせいぜい、並の成果が関の山よ…いいな!!」

 「全然わかんない…」

 「何!?お前には、お父さんの輝かしき成果を教えなくては…」

 「遠慮する…」

 「何!?」


 些細な痴話喧嘩を繰り広げる、シー・ブルーとハナ。これをやれやれ顔で見ながら、アリストはカタリスの元に近づいた。


 「あなたはあぁならないでね。」

 「…ちょっとわかる部分がある。」


 どうやら、男同士カタリスにも父親の感じる興奮に共感できる部分があったようだ。アリストはこれに頭を指を置いて、首を振った。


 「はぁ…わからないでちょうだい…」


 ビーッビーッ!!


 すると、艦長室に誰が聞いても警告音と取れる音が響いた。


 「さぁ…お出ましだぞ。」


 シー・ブルーは葉巻を灰皿に置くとニヤリと笑った。いよいよ大海の大穴(ディープ)が目の前に現れるのが楽しみだったのだ。


 船長室からは船の先が見える。しかし、強くなっている風と雨と波の影響で全くもって先が見えるとは言い難い。


 「父さんスピードは?」

 「緩めるな!逆に流されて危険だ!!自分で流れを作るつもりで行くぞ!!最大戦速!!!」

 「了解!機関室、最大戦速!このまま突っ込む!!」


 ハナは無線を通じて機関室に連絡を入れた。


 「エアー取り込んでおけ!衝撃吸収の準備だ!!魔力の6割で結界を展開、到着を見込んで結界を船底に集中!!」

 「…了解。」


 すると、船が波によって大きく上に押し上げられる。船内に大きな浮遊感が駆け巡る。そして、勢いよく水飛沫をあげて、海に着地。その先にいきなり、大きく海水を飲み込む大海の大穴(ディープ)が出現した。

 その様相は魔力を持つ者なら分かる高密度の魔力の集約点。船全体に結界を張っているにも関わらず、この魔力。強烈なものだった。


 アリスト、カタリス、ハナの3人はこの光景に固唾を飲んだ。しかし、シー・ブルーはこの光景に興奮が抑えられずに歯を剥き出しに笑うと、船内につながるマイクのボタンを押した。


 「突入!!!!」


 船の半分が大海の大穴(ディープ)に差し掛かった時、船体の先が大きく下に沈み込むと、アポロポリス号は垂直になって、大海の大穴(ディープ)に落下していった。


 「船体前方よりエアー最大噴出!船体を並行にし、そのまま保持。船底に結界を集中!」

 「了解!」


 シー・ブルーの指示通り、船体の全部の船底からエアーが噴射されると、船体の角度が地面と並行な形になる。と同時に船底にに超高度の魔力結界が張られる。シー・ブルーはこれで着地時の衝撃を最小限にするつもりの様だった。


 「うぉ!」

 

 すると、順調に思えていたがいきなり船体が大きく揺れた。


 「アリスト!今のはなんだ!!」

 「船体左方部損傷!!損傷割合3割!」

 「なんでいきなりこうなる!!」


 この報告を聞いた、アリスト、カタリス、ハナの3人は更なる情報収集のために、戦隊内と外部を確認する、モニターを注視していた。

 そんな中、シー・ブルーが船長室から見える外の景色に目を向けた。本来は光がなく、真っ暗とも言える状態であるのが大海の大穴(ディープ)内の自然体だった。

 しかし、今は違った。シー・ブルーの目には幻覚なんかではない、赤く激しく折れる稲妻が舞い散っていたのだ。


 「なんだこれは…」


 流石にシー・ブルーもこんな現象には出会(でくわ)したことがなかった。だから、冷や汗を流した。


 この赤い稲妻はまるで意思を持つかのように船体外部を周回すると、いきなり左方部の傷ついた船体の隙間から船内に侵入してきた。


 「父さん!損傷した左方部から侵入を確認!これは…何?」


 侵入はハナの見ていたセキュリティーに引っかかった。しかし、明らかにセキュリティーの示す反応が悪魔のものではなかったのだ。


 (セキュリティーに引っかかる…魔力を持っているのか…あの稲妻は…)


 シー・ブルーは冷静に思考を巡らせた。


 「底部に集中させた結界を内部保護に回す!!船底の結界は着地時ギリギリまで粘るものとする!!」

 「了解!」


 アリストは手に汗を滲ませながら、船底に集中させていた結界を内部の保護に回した。


 ーーーーー


 地獄・アポロポリス号


 意思を持ったように船内を駆け巡る赤き稲妻は、何かを目的としているように、何かを探している様子だった。バリバリと音を鳴らし進む稲妻は、赤い残穢を残し船内を駆け巡った。


 「ねぇ、F,D。」

 「どうしたエクサー、トイレか?」

 「違うけどさぁ…なんかこっち来てない?」

 「何が?」

 「わかんないけど…」

 「見てくるか。」


 ピアノとフォルテの部屋には、エクサー、S,B、F,Dの3人がまだいた。


 F,Dはエクサーの疑問を解消すべく椅子から立ちがると、部屋の扉のドアノブに手をかけた。そして、ドアノブを捻った途端だった。


 「お前達、身を守れ!何かが来てる!」


 F,Dは扉の向こうに何かが向かってきていることを感じ取ると、勢いよく部屋の中にいるエクサー達の方に振り向き、大きな声を発した。


 部屋にいるF,D以外の全員が一瞬、声の大きさにビクッとした様子だったが、直ちに防御姿勢に入ろうとした瞬間。扉の先が赤く発光すると、扉を突き破って、勢いよく(おびただ)しい数の赤い稲妻が部屋に突入してきた。


 「は?」

 

 エクサーはこの赤き稲妻を見て、声を漏らすと意識がここで消えたのだった…

 

 ーー終ーー


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