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DeViL 悪魔生転物語  作者: オクラ
 7章 『次なる王』 ー大魔界の異常ー
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 176 想像以上に強い


 地獄・アポロポリス号


 「これが化粧水、これが保湿剤、それとパック。これを肌に馴染ませるんだ。」


 コリコントはそう言って次々と、椅子座るエクサーの前に化粧水だのなんだのを置き始めた。


 「こんな感じ?」

 「そうそう、キョルもやるかい?」

 「僕はいい。」


 仲良くお風呂に入ったコリコント、キョルトノル、エクサーの3人。エクサーとキョルは、コリコントの自室に招かれると、風呂上がりの美容に参加させられていた。


 「そんなこと言わずにやった方がいいんじゃない?」

 「僕たち悪魔はそもそも、万全の状態でいられるからやる必要ないだろ。肌荒れもしないし。」

 「違うよキョル。100%の自分より120%の自分の方がいいに決まっているじゃないか。」

 「…僕もそれには賛成するけど、その労力をここに使う気にはなれない。」

 「それを言われたら終わりだ。まぁ、気が向いたらいつでも美容は手伝うよ。」

 「…気が向いたらにするよ。」


 コリコントはエクサーの背後に歩いてくると、自然な感じで乾ききっていない髪をクシでとかし始めた。


 「髪は乾かしておかないと傷んでしまうからね。僕がやろう。」

 「あ、ありがとう。」

 「いいってことさ。」


 コリコントは一通り髪をとかし終えると、ドライヤーで髪を乾かし始めた。


 エクサーはコリコントが自分の理想のお兄ちゃんのように感じ始めてきた。

 最初の出会いこそ、変なことをされ、良いものとは言い難いものだったが、今となっては面倒見のいいお兄ちゃん。一緒にいる時間が他の兄弟よりも長いからというのもあるだろうが、信頼を感じやすくあったのだ。


 エクサーの頭皮にドライヤーの熱が伝わり、その風に乗ってシャンプーの匂いが鼻にたどり着く。それにコリコントは弱くマッサージをしながら髪を乾かすため、風呂に入った結果、体温が上がったことも相まって、エクサーの体は睡眠状態に突入していた。


 「よし、終わり!」


 ドライヤーの音が止むと、エクサーの眠気で飛びそうだった意識が、ほんの少しだけ戻ってきた。


 「エクサー…寝そう。」

 「エクサー、眠かったら寝ても良いんだよ?」

 「ん〜…」

 「よかったら、僕のベットを使うといい。洗濯したてだからフカフカのはず。」

 「ん〜…」


 エクサーの戻ってきた意識は強烈な眠気で、ここで途絶えた。眠ってしまい、力が抜けたエクサーは椅子から落っこちそうになったが、コリコントがそれを支えると、靴を脱がせて、お姫様抱っこで、エクサーを自分のベットに置いた。


 「兄さん、エクサー気に入ったの?」 

 「ん?なんでだい?」

 「いやぁ、面倒見いいなぁ…って。」

 「嫉妬しているのかい?」

 「…してないし。」

 「なんだか、エクサーを見ているとねぇ…昔のキョルとかハナを思い出すんだ。懐かしいなぁ、子供だなぁって。昔のハナなんて物資補充のために街に行ったら、すぐ喧嘩売って大変だったんだ。キョルはすぐどっか行くし。まぁ、良き過去、良き思い出だね。流石にエクサーはそれよりも大きいけど、それでもその頃が思い出せて、世話を焼きたくなるさ。お兄ちゃんパワーってやつかな。」

 「覚えてないからなんとも言えない。」

 「そう言う時があったって思っておけばいいのさ。キョルも可愛かったぞ。」


 そう言ってコリコントはキョルの頭を撫で始めた。


 「ん!!」

 

 すると、コリコントはキョルの頭が若干濡れていることに気づいた。


 「濡れているじゃないか!!」

 「まぁ、いいかなって…」

 「いい訳なーーい!!キョル、椅子に座って。」

 「いいって。」

 「よくない!」

 「いいって…」

 「よくない!!」

 「いいって!」

 「よくなーーい!!!」

 

 ーーーーー


 「ん…あっ!」

 

 エクサーが目を覚ますと、そこはなんの変哲もないコリコントの部屋…ではなかった!!目に入っている部屋のインテリアが違うし、そもそも部屋の匂い自体が違う。つまり、ここが別の部屋であることは寝起き一発でも容易にわかることだった。


 「起きましたか…」


 エクサーの耳に少し暗めで、優しい声が耳に入ってきた。エクサーが声の方を振り向くと、そこにいたのはピアノだった。

 

 「おはようございます。エクサー。」

 「あれ?ピアノだ…なんでピアノがいるの?コリコントは?」

 「エクサーを探していたら、コリコント様の部屋にいると言われたので、おんぶして私の部屋に運んできました。コリコント様たちは報告会があると言うことでしたので。」

 

 エクサーはベットから降りて、体を捻じ曲げるとバキバキっという音が鳴った。


 「疲れは取れましたか?」

 「うん。結構疲れてたみたい。僕、どのぐらい寝てた?」

 「…14時間と32分でしょうか?」

 「…寝すぎじゃない?」

 「それほど疲れてたということです。」

 「それにしても寝過ぎでしょ、絶対。」

 「あれから一度、大海の大穴(ディープ)の詳細な情報を確認するために停泊したので、意外と進んでいないのですよ。」


 ピアノはお茶を淹れると、エクサーに手渡した。

 

 「寝起きは水分不足になりがちです。どうぞ。」

 「ありがとう。そういえば、フォルテは?」

 「(ねぇ)様はカタリス様と訓練室で手合わせをしているようです。会議自体はずいぶん前に終わっていますので、その後にという訳でしょう。迷惑かけていないといいのですが…」


 ガチャッ…


 エクサーとピアノのいる部屋の扉が開くと、ズタボロのフォルテが中に入ってきた。


 「た…ただいま〜〜…」

 「うおっ、フォルテ。」

 「(ねぇ)様!どうしたのですか?」


 ピアノは急いでフォルテを支えた。


 「つ…つ…」


 フォルテの「つ」ということあの後に何が続くのか2人は、フォルテがボロボロなことを考慮して身構えた。


 「疲れたーー!!!」


 2人はポカーンと首を傾げた。


 「失礼致します。」


 すると、空いたままの扉の先からアリストとボロボロのカタリスが部屋に入ってきた。


 「どうか致しましたか?」


 アリストが部屋に来たことにピアノは何かあったのかと思い、一瞬、焦りを見せた。


 「いえ、どうってこともないのですよ。ただ、少し、私が大人気なくやりすぎてしまっただけです。」


 アリストのこの発言にエクサーとピアノは頭の上にもう一つ疑問符を浮かばせた。


 「ねぇ、聞いてよピアノ、エクサー!アリストすっごく強いんだよ!!」

 「(ねぇ)様、『様』をつけてください。」

 

 エクサーは疑問を素直にフォルテに聞いた。


 「なんで?」

 「聞いてよ。私ね、カタリスと戦ってたの!それで…


 〜〜〜〜〜


 「流石に強いな〜〜〜!!」

 「…」


 フォルテとカタリスは互いに一歩も譲らない攻防を訓練室で繰り広げていた。


 「えぇい!」

 「ぬんっ!!」


 フォルテの右足の回し蹴りとカタリスの左拳が、衝突すると、2人は互いの威力のままに吹っ飛んだ。2人は器用に体を捻ると、床に足をずるようにして着地した。

 互いの間に距離はあっても、どちらも相手から目を合わせないように見つめ合っていた。しかし、フォルテはいきなり目線を逸らすと、アリストに話しかけた。


 「アリストは戦わなくていいの〜?見ているだけでいいの〜〜?」


 大きな声で2人の攻防を見ているアリストに対して大きな声で、話しかけた。


 「!!」

 

 すると、カタリスはズカズカと何やらオーラを放ってフォルテに向かってくると、口の前で人差し指を立てて、『黙れ』とジェスチャーをしているようだった。顔の大半の見えないカタリスだったが焦っていることはなんとなくわかった。


 「ねぇ、いいの〜〜??」


 フォルテはそんなことお構いなしにアリストに聞くのだった。


 「私は遠慮しますよ。2人で楽しんでください。」


 そう言ったアリストにカタリスはホッとした様子で胸を撫で下ろした。


 「そんなこと言わないでさ〜〜〜。」

 「!!」


 それでも食い下がらないフォルテにカタリスはまた『黙れ』ジェスチャーをするのだった。


 「わかりました。少しだけですよ。」


 すると、まさかの折れたのはアリストの方だった。


 アリストがゆっくりと2人の方に歩いてくると訓練室には、ブーツの底が床に当たるコツコツという音が響いた。そして、アリストが2人からのちょうどいい距離を取ると、両足をそろえて立ち止まった。

 2人はアリストを見るや否や、何やらアリストから並々ならぬ闘志が燃えていることに気づく。


 「1vs1vs1でいいですか?」

 「いいよぉ〜。」

 「私としては2vs1でもいいですけど…まぁいいでしょう。」


 アリストが右手の手の甲を相手に見せるように構えると3人の戦闘は始まった。


 〜〜〜〜〜


 「ってことになって、そしたら私、アリストに一発も当てられなかったの〜〜。」

 「慣れですよ。避けて攻撃、避けて攻撃をするだけです。」

 「…慣れだな。」


 カタリスはここにきでボソッと口を開いた。


 「あら?あなたからも一発ももらってませんけどねぇ。」

 「うっ…」


 カタリスは図星で押し黙って、帽子を深く被った。


 「すごいんだよ!攻撃が、ぜ〜〜〜〜〜んぶ()なされちゃうの!」

 「動きに対しての返しがわかっているだけです。すごいことではないですよ。」

 「ねぇ〜なんでそんな強いの〜悔しい〜〜〜〜〜!!」

 「カタリス含め、弟、妹たちは目を話すとすぐに何かをしでかしますから、それを止めるために付けた力です。それが偶然にも戦闘技術に結びついただけですよ。」

 「じゃあ、独学ってこと?」


 エクサーは不意に気づいたことを聞いた。


 「そうですね。」

 「へぇ〜〜すごいなぁ。」


 エクサーはアリストが想像している以上に強いんじゃないかと思った。というかこの予想は大きく当たっているのだろうとも思えた。


 「あ〜あ〜…」


 すると、船内全体にスピーカーを通したシー・ブルーの声が響き渡り始めた。


 「アリスト、カタリス、ハナ、至急持ち場につけ、その他、コリコント、キョルトノルは船内見回り。この船、アポロポリスは、残り20分程度で、大海の大穴(ディープ)に到着。続けて、すぐさま大魔界に突入するものとする。船員、準備につけ以上。」


 シー・ブルーの伝言を受けた、アリスト、カタリスの2人は、目つきを鋭く変えた。


 「それでは私たちは準備に取りかかるので、ここで失礼致します。これより、甲板、機関室への出入りは禁止とさせていただきますので、ご了承ください。それでは…」


 そう言い残すと、アリスト、カタリスの2人は部屋を後にした。


 この感じ。エクサーはいよいよ大海の大穴(ディープ)に近付いているのだと、いうことがひしひしと実感でき、体に少しだけ力が入るのを感じた。


 ーー終ーー


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