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DeViL 悪魔生転物語  作者: オクラ
 7章 『次なる王』 ー大魔界の異常ー
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 171 悔しさと自信


 大魔界


 (なんだコイツら…負けるのはわかり切っているのに、なんでここまで捨て身で突っ込んで来れる…?命が惜しくないのか?)


 ナールガは向かってくる天使達を飛びながら薙ぎ倒しながらこんなことを思った。

 向かってくる天使達の顔は恐怖を浮かべている。もちろんこれはナールガに向かって行く恐怖であることは間違いない。ただ、それを無理矢理やる気に変換して向かってくるのだ。


 ナールガとしても雑魚の相手では自身の実力のレベルを測定し切るには至らない。もちろん視界に入る、向かってくる天使達を誰一人として逃す気は無い。ただ、相手になることは無いため、無駄な労力と言えばそれまで。それでも天使達は向かって来る。それがナールガには不思議で仕方なかった。


 天使の数をものの数分で半分以下に削り切ったナールガ。その背後に強烈な闘志を感じ、振り返ると、そこにはすでにゴーエルが近づいて来ていた。ゴーエルは勢いよく右拳をナールガに振るうが、ナールガはそれを見た上で『バリア』を展開した。


 「チッ…出が速えぇなぁ…」


 『バリア』越しで上から目線のように止まった拳とゴーエルを見るナールガ。これにはゴーエルも偉そうな…と内心、怒りを覚えた。


 「この威力なら、受けてもなんら問題は無さそうだったな…」

 「そうかよぉ…」


 だが、ゴーエルはナールガを見てニヤリと口角を上げた。


 「でも、生憎これはお前にダメージを与える拳じゃない…」

 「?」

 「お前を吹き飛ばす拳だよぉぉ!!!!!」


 この瞬間、ナールガは『バリア』ごといきなり後ろに勢いよく吹き飛ばされたのだ。ナールガは『バリア』を解除し体勢をを立て直す。

 体にダメージが無いことを確認したナールガがゴーエルの元に移動しようとすると、すでにこちらにゴーエルが向かって来ていた。


 「それだな…」

 

 目の前のゴーエルの右手に握られたメリケンサックをナールガは指差した。


 「正解だぁ。これが俺の天器『風の距離』だぁ。」


 『天器・風の距離』

 ゴーエル所有の天器であり、その形はメリケンサック。攻撃威力こそ他よりも見劣りするものの、この主な効果は相手を豪快に吹き飛ばし、距離を取る効果。


 「距離が取れても攻撃能力が浅ければ意味が無いな。」

 「お前みたいのから部下達(あいつら)から離せるならなんでもいいってところだぁ〜。」


 ナールガは背後に気配を感じた。そして、背後から光の矢が飛んでくると頭を軽く傾けてノールックで避けた。


 「いい筋だな、女天使。」


 ナールガが背後にゆっくりと顔を半分向けると、そこには光の弓を持ち、コチラを狙い終わったアムエルがいた。


 「褒めてくれてありがとう。」

 「でもそれでどうにかなると思っているのか?天器にも満たないお前の武器じゃ、当たっても傷はつかんぞ?」

 「知っているけど、ものは試し。本番はここから。」


 アムエルは(おもむろ)に右手を空に向けると光がそこに集まり、その光を握ると、大きく重厚で光沢のある大きな弓が握られた。


 「天器か?」


 ナールガはそれを見るや否や一発で天器であることを見破った。

 アムエルが握っていたのは、アムエル所有の天器『百天の弓矢』。しかし、その形はA2と戦った時に比べ、大きく変化しており、高級感と大きさ、光沢が遥かグレードアップしていた。


 「そう。ウリエル様から事前に許可はもらっている。これであなたを処す。」

 「じゃあ、見せてみろ。それ性能とやら。」


 アムエルは大きな弓の弦を引く。

 その姿は美しい。弓を扱う上での無駄が一切無い。そして、弦を話した瞬間、背後より無数の矢が現れ、ナールガを射止めるべく放たれる。


 ナールガは一気に魔力を体から放出すると、飛び回るように矢を避け始めた。


 (追尾性能付きか。めんどうだな…)


 どこまでも追いかけて来る矢を器用に交わすナールガだったが、進行方向に何かを察知するといきなり上に急旋回。しかし、その先にも何かを察知し、急旋回した。


 (気づかなかったが、いつの間にか『バリア』を貼られてたか…あのジジイ…無駄に長く生きているわけではないか…)


 ナールガの考えは正しく、ゴーエル、アムエルを巻き込み、今の3人は大きな四角形の『バリア』の中に閉じ込められたというわけだった。


 ナールガは体を勢いよく反対に向け、追尾してくる矢と面と向かうと、その全てを正面から『バリア』で受け切ってみせた。


 「マジかよぉ…仮にも天器だぞ?『バリア』一つで防がれて傷無しかよ…化け物め。」


 『百天の弓矢』より放たれた矢を『バリア』一つで防がれるなどとは誰も思っていなかった。流石にゴーエルも引き攣った笑いをするしかなかった。


 「自分たちで退路を塞いでなんのつもりだ?死に急いでいるのか?」

 「違う…私の天器じゃこうでもしないと被害が出過ぎる。だからあなたと私たちを閉じ込めた。なんとかしてあなたを殺すために。」

 「そうか…だが、お前ら良かったな…俺に魔術が無くて…」


 ナールガの硬い顔から一瞬だけ笑みを生んだ。しかも、嘲笑うような見下すような…

 そして、ナールガは姿を消す。


 これを見たアムエルは背後に強烈な殺意を感じ、そこにナールガがいると思い、持っていた弓で背後を薙ぎ払った。


 「このブラフが読めないなら…お前の負けだ。」


 この声がしたのは背後を振り返ったアムエルのさらに背後。アムエルはまんまと引っかかった。ナールガは敢えてアムエルの背後を経由して攻撃を仕掛けたのだ。そして背後についた瞬間、魔力を爆発させ、アムエルに背後にナールガがいるという誤情報を植え付けたのだった。


 ナールガはアムエルが振り返るよりも速くアムエルの腹部を抉る攻撃を決めた。


 「あ””あ””ぁぁ…!!!!」


 腹部には風穴が開き大量に出血。

 アムエルは力無く、下に貼られた『バリア』に落ちていった。


 ナールガの灰色の肌にアムエルの返り血が付く。それを見たナールガは固まる前に血を払い除けた。


 「アムエルーーーー!!」


 ゴーエルはアムエルに向かって飛んでいく。


 「お前の相手はオレだろ?」


 その行手を阻むようにナールガがゴーエルの目の前に現れると、顔を蹴り、遠くに蹴り飛ばした。


 「くっ…あ”ぁ…!!」


 アムエルは自身の腹部を両手で抑えた。

 体を(りき)ますとその度に小さな噴水のように血が噴き出る。それに回復が効かない。それもナールガが大量の魔力で殴ったせいで魔力が混ざって、アムエルの魔力回路が機能不全に陥っているのだ。


 アムエルの見ている視界には、血を吹き出しながら殴られるゴーエルが見えていた。それを見ても立ち上がれる力は無い。この無力さに涙を流すアムエル。この無力さが強烈な悔しさを感じさせた。


 悔しさと無力さに押しつぶされそうになりながら、意識が遠のくアムエル。そんなアムエルはいきなり、体に微弱な浮遊感を感じた。

 

 「聞こえているかわからんが、大人しくしていなさい。」


 アムエルの感じた浮遊感は間違いなく現実的なものであり、その正体は死にかけのアムエルのいる部分の『バリア』が抜けたことによる落下だった。そして、その先ではカセエルが待ち構えており、アムエルはカセエルの前の前でフワリと停止した。

 

 (女がいない…下で回収されたか?)


 ゴーエルとの戦いを余裕を持って行うナールガはアムエルがいなくなったことにいち早く気がついた。


 カセエルはアムエルの傷口に手をかざす。今、カセエルの行っている行動は魔力の中和で、アムエルの中に混じったナールガの魔力を中和しようとしているのだ。


 ーーーーー


 そんな天使達とナールガを宙に浮き、遠くから、オペラグラスを通して見ている者がいた。

 プレズデントその人だった。


 天使達と聞いてそこそこビビッていたが、特に自分が狙われているというわけでもなく。手強い天使はナールガが相手にしているため、プレズデントはリラックスしてナールガ達を見ていた。


 そんなプレズデントの背後に誰かの影が現れる。

 その影の持ち主は大きく何かを振りかぶり、プレズデントの頭と首を即座に切断し、ついでに手に持っていたオペラグラスも叩き切った。


 だが、プレズデントはこれを読んでいたか、それともこうなる可能性を考慮していたのかは分からないが、先んじて魔術を発動していたプレズデントはこれをノーダメで終えた。強いてダメージがあるとすれば特注のオペラグラスが壊れたことぐらいだった。


 「ふぅ〜危ない危ない。そんなもので切られてたら一発でしたよ。」


 プレズデントが後ろを振り返ると、そこにはギャルの天使、ノグエルが持ち手が金色の大きな斧を持って立っていた。


 「あなた、あの悪魔の知り合い?」

 「そうですとも。目的を助けるプロモーターと言ったところかな?」

 「そう…」


 ノグエルはゆっくりと斧先をプレズデントに向ける。

 その目は大変鋭く、ゴーエル達と喋っていた時のチャラさのようなものは一切存在してなかった。


 「いきなりだね?嫌いじゃないよ。」


 プレズデントの口角は上がっている。色付きサングラスのせいでその先がどうなっているかは分からないが、どうせ笑っているだろう。

 ノグエルはそのプレズデントの様子が大変に気に食わなかった。


 「先手は君にあげよう。私は後出しで構わないよ。」


 どこまで行っても余裕。この余裕はA2に通ずるものがあった。


 「私はナールガ君のように、五芒星(ペンタグラム)のようには面白くできないかもだけど…プロモーターとして精一杯のエンターテイメントを提供できるように努力しよう。だから、この努力を受け取ってくれ。」


 見下すような言い方。斧を目の前にして一切怖気付かないプレズデントにノグエルの許容はついに飽和の域に達し、斧でプレズデントをぶった斬ったのだった。


 ーー終ーー



 設定上、アムエルの『百天の弓矢』の使用には天使長の許可が入ります。今回平然と使ってのけたのは言ってもいますが事前に許可をもらっていたからです。

 

 アムエルはノグエルと、幼い時代を過ごしたのでノグエルとアムエルは影響し合って両方ともミニスカートです。

 アムエルは制服チックで、ノグエルはもうちょっと私服寄りの服を着ています。


 アムエルは五芒星は天界に行った時、A2と戦った時はもっと敬語を使ってビビりな要素が強かったですが、年を重ねて、大人しく冷静な女天使に成長しました。一応、言動の感じがちょっと変わっています。

 

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