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DeViL 悪魔生転物語  作者: オクラ
 7章 『次なる王』 ー大魔界の異常ー
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 168 少しの笑みを


 地獄・バステカン城


 「ねぇ、フルシアンテ。スパムの缶詰無いの?」

 「は?無いわけないだろ。この前ロットで買ったばかりだぞ。」

 

 エクサー達の乗るアポロポリス号が物資補充のために街に向かったのと同時刻。

 フルシアンテとラズロはバステカン城にて、いつも通りの穏やかな生活を送っていた。


 今日はと言うと月に一回の大掃除。年々綺麗好きになるフルシアンテが、毎日のように通る場所を汚すラズロの後片付けを一掃するこの日。

 序盤のラズロは大変にめんどくさい顔をしていた。だが、フルシアンテの指示通りに掃除を進めるとみるみるうちに綺麗になっていく。掃除というものは綺麗になっていくのが目に見えると楽しくなっていくものだ。

 そうやってラズロは、褒められると自身がついて夢中になる子供のようにどんどん掃除にのめり込んでいっていた。


 「えぇ〜無いよぉ〜。」

 「無いわけないだろって。お前が食ったんじゃないか?」

 「私、スパムのロットを全部食べられるほど大食(おおぐ)らいじゃないし〜だ!」

 「じゃあ、よく探せっての。」

 「はぁ…めんどくさくなってきちゃった〜〜〜。」


 掃除ついでの在庫管理。

 せっかくラズロの掃除調子が乗ってきたところで、それを覚ますような単調な在庫調べ。ラズロはめんどくさいを再発した。

 それでもやることはやる。やらないとフルシアンテに怒鳴られることはラズロにも分かっていたことだったからだ。


 「「!!」」


 そんな最中(さなか)2人はどこかで感じた覚えのある気配を察知する。

 莫大な魔力量を持ち合わせ城の前に立つ悪魔。2人は警戒態勢に入るかと思いきや、その正体がすぐにわかると一旦在庫調査の手を止めて、城の入り口まで歩いていくのだった。


 ーーーーー


 城の扉を開け、2人が外に出るとそこにいたのはキキガノ本人様だった。


 「久しぶりだな、キキガノ何しに来た?」

 「ほんとほんと〜。あれ?キキガノなんか魔力減ってない?何に使ったの?」


 キキガノを見たラズロはいち早くキキガノの魔力がすり減っていることを確認すると、首を傾げて疑問符を浮かべた。


 「う〜ん…僕、今、立ち話の気分じゃないんだけど。」

 「はんっ、来て早々いいご身分だことだ。」


 フルシアンテは人差し指をクルッと回すと、城から椅子3つと机が飛んできて城の前の草原に並んだ。


 「中は掃除中だ。外で我慢しろ。」

 「座れればそれでいいかな。何しろ疲れたからね。」


 3人は草原に並んだ椅子に座るのだった。


 「で、なんでそんなに魔力少ないの?」

 

 確かにキキガノの魔力はいつもに比べて少ない。ただ、ミカエルに魔力の半分を奪われ、今すり減った状態でもなお、他の悪魔では足元にも及ばないほどには魔力はある。だから、2人はここに来たのがキキガノだと分かったのだ。


 「…ナールガと戦ってね…負けてきたんだ。」

 

 2人共、キキガノのセリフを聞いてポカーンとした顔をした。


 「なんで戦ったんだ?」

 「…世のために止めたかったからだ。」


 キキガノは珍しくダラーンとした座り方になった。それほどに疲れていたのだ。


 「な〜にが世のためだ。」

 「ちょっとフルシアンテ!キキガノを馬鹿にしないで立派なことじゃない。」


 それを小馬鹿にするフルシアンテとそれを叱るラズロ。


 「で?ナールガはなんて言ってた?」

 「意思は変わらなかった。ナールガはどうしても王になりたがっている。」

 「俺はなりたいならならせてやりゃあ、いいと思ってるけどな。あいつが王になろうと俺は毛頭、話に従う気は無い。」

 「それは地獄の全員が(きみ)みたいなスタンスで入れるときに限る。生憎、僕たちから見て、下の者の方が数が多いんだ。そんな者達が王として椅子に座るナールガを支えきれはしない。それにナールガには王になる理由が甘すぎる。サタンは意図したかはわからないが、魔法運用、機械技術においての軍事的な産業の発展をもたらし、『戦』に生きる者達の道筋を作った。紛争が増え、より過激な武力行使の時代になったことは否めない。ただ大きな事実は発展を作ったことだ。」

 「それがナールガにはできない…と。」

 「できないだろうね。彼は純粋にも力を欲している。これでは彼は任意を無視した支配をする。任意の無い支配など暴走に過ぎない。今こそ、虐殺を望んでいないにせよ。もしそれを始めようものなら、戦争なんて可愛いものじゃない殺戮、虐殺の域に入る。それでは皆は笑えない。」


 フルシアンテは足を組み直してキキガノに質問をした。


 「気になってたんだけどよぉ…お前ってなんでそんなに笑わせたがるんだ?」

 「私も気になる〜〜。」


 これにはラズロも興味津々の様子。


 「…笑わせたがっているわけじゃないよ…ただ皆に笑って生きて欲しいだけなんだ。幸せに笑い、たわいもない会話で笑い、喜びに笑い…混沌としたいつでも幸せが手を離すこの世界で、ならば1日に1回でも多く笑って生きて欲しいだけだ。それに僕の魔術はそれができたからね…」

 「なんだ、思った以上にふわふわしてんのな。人間みてぇな感情論だな。」

 「別にいいだろ。こんな奴が1人いたって。」

 「それもそうだな。変な奴が飽きさせないから俺はこの世に未練を残してんだ。」

 

 キキガノは立ち上がった。


 「じゃあ…僕は帰るよ。」

 「もう帰っちゃうの〜?」

 「疲れたからね、温泉でも巡って癒すとするよ。」

 「そうか、じゃあな。」


 キキガノはフワッと宙に浮かび上がるとゆっくりと城とは反対方向に飛んで行った。


 「ナールガねぇ…どうしたもんか。」

 「何?叩きに行くの?」

 「バカ言え。魔術も無い俺がアイツに突っ込んでもスペック差で負けるだけだ。」

 「じゃあなんで悩んでるの?」

 「…確かにな、何悩んでたのか。アイツの感情でも移ったかな?」

 「いいんじゃない?ちょっと変わった視点で見るのも面白い生き方の一つだよ。」

 「だな、じゃあ続きするぞ。」

 「分かった〜。」


 2人は呑気に城の中に入ろう歩き始めた次の瞬間だった。


 「「!!」」


 2人はこの瞬間で天使の気配を確認した。

 フルシアンテはすぐさま精神の全てをフル稼働。気配の方角を特定。


 (数は…100…1000…10000…それ以上か…!)


 大方を察知した結果の数は1万以上。この数の天使がいきなり地獄に訪れることはまず無い。今この瞬間それに該当するほどの事件が地獄で起きた形跡も無い。ならば、なぜ地獄に天使が襲来したかの見当がつかないのだ。


 「…減ってる…」


 ラズロがボソッと隣で声を産んだ。この状態で減ったと言う言葉が相当するのは天使の数ぐらい。フルシアンテは再度、天使の数を確認。確かに天使の数が減っていることに気づいた。

 減っていると言ってもこの感じ、死んでいるわけではないようだった。どちらかと言うと探知範囲外に移動したような…


 ーーーーー


 天使達が地獄に現れたのは大魔界へ進軍するためだった。

 その理由は…


 『ナールガの始末』が目的だった。


 ーー終ーー


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