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DeViL 悪魔生転物語  作者: オクラ
 7章 『次なる王』 ー大魔界の異常ー
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 164 暗殺


 地獄・トバルカイン魔法学校


 「おはよう!クー。」

 「おはようです。」


 大魔界突入まで残り4日。

 日に日に迫ってくる緊張感を感じながらエクサーはいつも通りの生活を送っていた。


 「今日もドラギナはいないの?」 

 「多分…いる感じもしないです。」


 ドラギナは相変わらず、家庭の事情で学校には来ていない様子だった。


 「どう?体調は?」

 「バッチリです!」


 元気印のポーズを取るクー。エクサーは心の中でホッとした。


 「エクサー、帰りに寄るところあるのでついて来てくださいです。」

 「あ〜…いいよ。何か欲しいの?」

 「花瓶を取りに行くです。」

 「花瓶ね。分かった。」


 すると、どこからかドカドカという足音が聞こえ始めてきた。


 「…まさか……!」

 「そのまさかみたいです…」


 直感的に分かる身に覚えのある足音。確実にこちらに向かって来てるはず。そう確信があった。


 「エクサーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」


 猛スピードで向かって足音はエクサーとクーの目の前で砂ボコリを巻き上げてから滑るように止まった。


 「見つけたぞ!さぁ今日も僕と戦ってくれ!」


 いつも通りのラーバルさんでした。


 「やぁ、ラーバル。元気だね。」

 「いっぱい寝たからね。さぁ、戦うぞ!!」

 「今日はレノはいないの?授業に行っている!さぁ、戦うぞ!!」

 「授業はもう終わったの?」

 「もちろんだ。今日は2時間連続していたからね。さぁ、戦うぞ!!」

  

 なんとか戦いたい欲全開のラーバルから話を逸らそうとするが、あっという間に軌道に戻ってしまう。しかも、会話の尾にこれでもかとついて来る「さぁ、戦うぞ!!」という言葉。もはや語尾か何か。ぶっ壊れたテープのようにくっついてくる。本当に頭の中には戦うことしか考えていないことが分かった。


 「あぁ〜今日はダメです。エクサーと帰りに花瓶を買いに行くです。」

 「何!なんだと〜〜〜〜〜!!!」

 

 ラーバルは体を大きくのけぞらせて先客がいることを悔やんだ。


 「よ、よかったらラーバルも一緒に行く?」

 「何!?」

 「ほら、戦ってばかりじゃわからないこともあるかも…しれないしね?」

 「おぉ〜それもそうだね。」


 なんとかエクサーは話を逸らすことに成功。


 「じゃあ授業終わるまで待っててね。」

 「分かった。レノも連れてって良いかい?」

 「良いです。」

 「Thanks。では、あとで会おう!!」


 ラーバルはスタコラと走り去って行った。


 「騒がしいです。あれでよく疲れないです。」

 「ハハハ…ほんとだね。」

 「おっと、授業に遅れるです。行くですよ。」

 「ほんとだ。」


 2人は次の授業のある教室まで走っていくのだった…


 ーーーーー


 4人は学校が終わると、地獄でインテリアの有名な小さな町に来ていた。

 とても簡素とでも言おうか。町には木造の家がコピーされたように並び、どの家にも煙突がある。それ以外に特に特徴は無い。この着飾らない感じが職人の町という感じを醸し出していた。


 「ここです。」


 4人はその中でも比較的小洒落た店の前に立つと、クーを先頭に中に入っていった。

 中に入ってまず感じることは木のいい匂いがすること。大変に落ち着く。内装は柔いライトが店の商品だけを照らし、その残った光がうっすらと店を照らしていた。


 壁に置かれたショーケースには美しい造形美のガラスの花瓶が展示のように置かれていた。


 「誰かいないです〜〜?」


 クーは呑気に店に大きな声を響き渡らせる。

 すると、店の奥で物音がすると足音がこちらに聞こえてきた。


 「はいはい。すみませんねぇ、仮眠をしていたもんですから〜…おや?クーさんではありませんか。」

 「グラブさん。お久しぶりです。」


 クーが挨拶と共に頭を下げると、3人も倣うように頭を下げた。


 このなんとも優しい表情の縦長のおじさん悪魔はグラブ。元々はガラス工芸職人だったが、数十年前に花瓶製作一本に絞った職人だった。


 「お買い物で?」

 「お母さんから花瓶の納品が今日だから取ってきてくれって。」

 「あぁ〜そうでしたそうでした。うっかりしてましたよ。少々お待ちくださいね。」


 グラブはそう言ってまた店の奥に消えて行った。


 「知り合い?」

 

 エクサーがクーにそう聞いた。


 「昔から母がお世話になっているお店です。」

 

 どうやらここは、クーのよくお世話になっているお店らしい。

 そんな話をしていると店主が花瓶を持って店の奥から帰ってきた。


 「お待たせしました。オーダーメイド通りの形と魔法一切なしの伝統技術を使った純正花瓶になります。」


 グラブはクーに花瓶を手渡した。


 「ありがとうです。」

 「またよろしくお願いしますねぇ。」


 4人はサッと店を出た。


 「なんだね?これでは僕たちが来た意味ないじゃないかぁ!」


 そこそこのオーバーリアクションでラーバルは自分の来た意味を問いた。


 「まぁまぁ、クーについてこなかったら一生来なかった場所かもしれないんだし、よかったじゃん。」

 「そうよ、ラーバル。だからそんなこと言わないで、失礼よ。」

 「すまない…」


 彼女であるレノに叱られ、しゅん…とするラーバル。意外とこういう正直な一面も持ち合わせているのだ。

 

 そんなこんなで4人は帰路に立ち、ちょうど街の中央広場に差し掛かったところで、何やら人混みができていることに気づいた。4人は子供ながらの好奇心で吸い込まれるように近付いて行った。


 「号外号外!!号外だよ〜〜!!!」


 その中央には肩がけのバックにいっぱいの新聞をつめて、それを無償で配る悪魔がいた。

 エクサーは自分が行くと言って、大人達をかき分けて新聞を手に取って、なんとか3人の元に帰ってきた。


 4人は新聞を囲むようにして見ると、大見出しには『号外 サタン信仰会代表・フラグセント暗殺』と大きく書かれ、暗殺されたフラグセントの血だらけの死体の写真が載っていた。


 「これは…大事件です。」


 流石に4人ともこれは一大事であると感じていたようだった。


 「フラグセントの殺害…サタン信者達がまた暴れるだろうね。」

 「やっぱりそうなのラーバル?」


 レノがラーバルに聞いた。


 「もちろんさ。これの犯人は誰かは今のところ定かではないけど、前歴のせいで『大罪信教会』になすりつけ、もしかするとまた戦争になるかもしれない。」

 「戦争?」


 この場で戦争という言葉が出てきたことに?が浮かんだエクサーはラーバルに聞いた。


 「おや?知らないのかい?宗教戦争ってやつだ。地獄でも二大巨頭である『サタン信教会』と『大罪信仰会』。これがまたよく喧嘩をしてね。喧嘩と言ってもそんな可愛いものじゃなくて戦争だけど。この2つは何か片方に害が生まれると、身内を二の次にしてもう片方に難癖をつけに行く。そうして摩擦がどんどん強くなって戦争に発展するのさ。」

 「私達みたいな宗教に入っていない無教者には両方とも寛容なんだけど、これがお互いの話になるとバチバチになるから大変なの。そうなったら地獄の各地で戦争が勃発して、メチャクチャになる。」

 「まぁ、もう止められそうにないけどね。」


 数日後、自分が大魔界という絶望の世界に飛び込んで行くにも関わらず、地獄は地獄で大変なことになるとエクサーは予感していた。


 ーーーーー


 地獄・クリスト城


 「全くーーー!なんでこうなるのよーー!!」


 珍しくS,Bが荒々しく感情を露わにしていた。


 「落ち着いてください。」


 ピアノがそれを宥める。

 城に帰ってきたエクサーもF,DやS,Bの様子からただ事ではないことが伺えた。


 「これはまた、大変なことになったな。」

 「本当よ!戦争にならないことを祈るしかないじゃない!」

 

 F,Dは眉間に(シワ)を寄せながら新聞を眺めていた。


 「シー・ブルーは知ってるんでしょうね?」

 「知っているはずだ。ネットと仲がいいから俺たちよりも早く速達で知っているはずだ。」

 「ならいいけど…」

 「とりあえず、3人共準備はできているんだろうな?」

 

 F,Dはエクサーとピアノとフォルテに話しかけた。


 「できてる〜〜!」

 「大丈夫です。」

 「できてる。」

 「よし、最大限準備をしていけよ。わかったな?」

 

 ーーーーー


 そして、時間は当日まで進む…


 ーー終ーー


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