16 サタンと歴史
攻撃を防御しきれず、魔力的にも肉体的にもボロボロのエクサー。そんなエクサーの見せた隙にロイドの魔術、『The.Whip』が刺さる。
限界のエクサーに死なない程度の攻撃をラーバルに命じるロイド。ラーバルはそれをやんわりと断るが、ロイドの琴線に触れ、ラーバルも無惨な姿に。
薄れゆく意識の中、魔石を思い出したエクサー。力を振り絞り魔石を破壊すると同時にエクサーの意識は底についた。
意識がないはずのエクサーが立ち上がり、吐いた黒き液体の中から現れたのは、顔の半分以外が、黒くなり右手が肥大化したエクサー(?)だった。
その昔、突然、大天使ルシファーが天使より堕ちた。
理由は、天使達の抱えていた矛盾だった。
堕天したルシファーは、サタンと名を変え、地獄の王、悪魔の王として君臨し、地獄を統治した。
サタンが王して君臨した日から、時代が始まった。そう考える悪魔達から、サタンが王になった日からを ”第一時代” と呼ばれた。
そんなサタンの行動をよく思わなかった者たちがいた。
ミカエルなど天使長率いる”天使軍”だった。
かつて、共に誓い合った約束を分けも言わず破り、堕天したルシファーは天使達にとっては粛清対象へと切り替わった。
そして、天使達を率いて地獄に戦争を仕掛けた。
この戦争の名は『第一次天魔戦争』
戦争は凄惨だった。
幾万という命が消えた。
この場で命に、意味も価値もない。何もない。ただここで死ぬ。何も感じず一瞬にして。最後に他を愛でることも、思うこともできずに。泣くことも逃げることもできずに。
消えた命の大半は、天使長とルシファー達との戦闘に巻き込まれた形だった。
それでも天使長たちは、なんとかサタンを追い詰めた。
しかし、それでも強大すぎる力が故、サタンを殺し切るには至らなかった。
そのため、天使長達はサタンの体を解体した、そしてそれぞれが力で封印し続けることを決めた。
これをもって ”第一次天魔戦争” は天使軍の勝利で幕を閉じた。
同時に ”第一時代” も幕を下ろした。
サタンが唯一、直筆で記した本があった。
内容は、ある一つの魔法の極み、極地について記されていた。
『魔強化』
魔強化を使用した者は体が影に包まれ黒くなり、無限に湧き立つ魔力を手にする。
無限の魔力を手にすること、それは魔法の全てを手にすることだった。
加えて、魔強化を使用した瞬間、溢れ出す魔力を介して、天使、悪魔含め、全ての魔力を使う者に強者の君臨を予感させる。
皆はこの予感を『黒き稲妻』と呼んだ。
魔強化を使用した瞬間、全員の背後に黒き稲妻が落ちたことを錯覚させる。だから皆はこう呼んだ。
魔強化はこの世界を統べる力だった。
とは書かれていたもののサタンとしても『魔強化』には不明な点が多くあった。
ーーーーー
エクサーの状態はその魔強化だった。
しかし、魔強化は不安定だった。
本来の魔強化であれば、原型を留めた上で体が黒き影に包まれるはずだった。
エクサーの場合、白目で、黒き影に、右腕が黒く大きく肥大化していた。
加えて、エクサーから触れ出す気配は、強者の気配では無く、純粋な殺意そのものだった。
その殺意は、行き場を探していた。捌け口を探していた。
行き場はすぐに見つかった。
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!!!」
エクサーは唸り声を上げ、とてつもないスピードでロイドに向かった。
ーーーーー
エクサーが魔強化してすぐのこと。
「ん!」
この気配は、クリスト城の皆にも届いていた。
「旦那様、今のはなんですか?」
「こ、怖いよぉ。」
ピアノは驚き、フォルテに至っては半泣きで、震えて縮こまってしまっていた。
「おい、S,B!どこだ。」
「ここにいいるわ。」
あまり顔色を変えないF,Dも流石に焦り、額に汗が見えた。
「A2は?」
「ここにいる。」
A2どこからか、瞬間移動をして現れた。
「今のは…『黒き稲妻』!」
「『魔強化』だろうね。」
「誰が、どこで。」
「ふーーーーん。」
A2は少し考え込んだ。
「2人はここに居てくれ。」
A2は言葉を残し、どこかに瞬間移動して行った。
もちろんこの気配は、地獄中に混乱を招いた。
悪魔達は、怯え、慌て、恐怖していた。
ーーーーー
天界 ミカエル宮
”天界” 別名 ”天国”
天使の住まう場所。地獄とは対照的に、白く透き通った空間で、道端には白い花々が咲き、天界と呼ぶにふさわしい場所。
ミカエル宮
天界の中央に位置し、大天使、” ”ミカエルの住む宮殿。
「ミカエル様。今のは。」
1人の男の天使が、美しき天使に急いで駆け寄った。
「地獄からでしょう。」
この天使の名は、大天使” ”ミカエル。
真っ白な肌に、真っ白な髪の毛を下ろし、白い目隠しを付けた、真っ白な衣に身を包んだ女の天使だった。そして背中から巨大で真っ白な羽が生えていた。
『美』
それ以外の言葉は不要。『美』が彼女を表す上で最も適した言葉であり、その言葉は彼女のためにある、そう感じるほど透き通った美を感じさせる存在だった。
「天使長達を集めてください。早急に。」
「はい!」
男の天使は、急いでどこかに飛んでいた。
ーー終ーー
中華街に行きました。かなり突発的な旅だったので、ほとんど予定を決めていませんでした。ご飯を食べようということで、少し路地に入って家みたいな店に入りました。そこで、北京ダックと担々麺を食べました。
美味しかったぁ〜。カタコトの中国人の夫婦が経営していて、大丈夫か不安でいっぱいだったんですが、取り越し苦労でした。なんかもう感動しちゃって、私思わずがっついちゃいました。
食べ終わって、友達が私に言ったことは 品 でした。