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DeViL 悪魔生転物語  作者: オクラ
 7章 『次なる王』 ー大魔界の異常ー
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 163 大海の大穴の異常


 地獄・海上(大海の大穴(ディープ)周辺)


 この日の大海の大穴(ディープ)周辺は大嵐に見舞われ、気を抜けば、風に煽られ海に落ちてしまうほどに強風と横殴りの雨が降っていた。


 「父さんどう?様子は?」

 「思った通りだ。大海の大穴(ディープ)が荒れてるぜぇ。」


 船のデッキの先端に立ち、荒波と強風、豪雨にさらされるシー・ブルーとその娘。シー・ブルーはデッキの手すりに足を掛け、葉巻を吸いながら少し笑みを浮かべていた。

 2人の見つめる先には海に大きく空いた穴。その穴に飲み込まれるように周囲の海水がものすごい速度で吸い込まれていた。

 そんな海水に飲み込まれないように船はなんとか大海の大穴(ディープ)と逆方向に速度を上げて抗っていた。


 「よし、とりあえず、ここは撤退。陸地を目指すぞ。」


 シー・ブルーは手すりから開けていた足を下ろすと、葉巻をポイッと海に捨てた。

 そして、手に持ったマイクのスイッチを入れると大声で話し始めた。


 「皆の者、陸地を目指すぞ!しゅっぱーーーーーーつ!!!!!」


 ーーーーー


 地獄・???


 体調が回復してライダーの元から帰ってから4日後…


 「…これで終わり…かな。」


 返り血を浴びたシャツ。血に濡れた手。右頬に切り傷の付いたエクサーは死体の転がった宮殿の中で一人そう呟いた。


 『level 666』の仕事でエクサーはこのひっそりと佇む宮殿の調査権壊滅を依頼されていた。詳しくはわからないが最近一部地域で発生した詐欺の本拠地がここらしい。


 「ん〜〜あ”ぁ…早くA2帰ってこないかなぁ〜仕事が嵩張(かさば)ってしょうがないや。」


 エクサーは両手を上げて伸びをする。そのせいで手についた鮮血が手首を伝ってシャツの中に入っていった。


 「うっわ!気持ち悪っ!!!」


 エクサーは急いで上裸になると、持ってきたスーツケースの中から変えのシャツを取り出した。シワ1つもないシャツに着替えたエクサー。きっとピアノかフォルテがアイロンをかけてくれたのだろう。綺麗なことは非常に気持ちが良かった。

 とはいかず。普通に返り血も汗もかいているので気持ち悪いことには変わりない。


 「あっ!予習しなきゃ。」


 明日の学校の予習もしなくてはいけないことを思い出したエクサーは残党がいないかを簡単に調べて、血塗られた宮殿を後にした。


 ーーーーー


 地獄・クリスト城


 「お帰りなさいませ、エクサー。」

 「おっかえり〜。」

 「ただいま。」


 クリスト城に帰還したエクサー。玄関に行く道の両サイドにある庭で水やりをしていたピアノとフォルテがエクサーに気づくと寄ってきた。


 「うえ〜、エクサー血生臭い〜。」


 フォルテはエクサーの匂いを嗅ぐと鼻をつまんでエクサーの匂いを嫌悪した。自分から嗅いできといてまぁまぁ失礼ではあるがエクサーはそんなこと気にしなかった。事実だったから。


 「姉様、失礼ですよ。」


 ピアノはそんなフォルテを優しく注意した。


 「一緒にお風呂入ってあげよっか?」


 フォルテはニヤニヤしてエクサーに聞いた。


 「え、遠慮しておこうかな。」


 エクサーはフォルテから目線をゆっくりとそらし断った。


 「なになに〜?思春期爆発はまだ早いんじゃない?」

 「ち、違うよ!」

 「姉様、揶揄(からか)うのもその辺にしてください。」

 「は〜い。」

 「さっ、エクサー。お風呂に入ってきてください。その方がさっぱりします。」

 「わかった。」


 エクサーは足早に城の中に入って行った。


 「!」


 すると、フォルテがなんかに気づいて城の門を見た。


 「どうしました姉様?」

 「何か来る…」

 「敵ですか?」

 「わかんない。」

 「一応、戦闘体制は取って置きましょう。」


 ピアノはアックスを作り出して構えを取った。


 フォルテの感覚はどうやら正解だったようだ。

 門の前に馬車が一台止まった。馬車とは言うものの…想像するような大層な馬車ではなく荷物を運ぶための無骨さアクセル全開の馬車だった。


 ピアノとフォルテは足早に馬車に近づき、降りてきた者を確認するとライダーがいた。


 「あれ?ライダーだ。」

 「お久しぶりです。」


 ピアノは軽く会釈をした。


 「おう…随分と大きくなったな、2人共。そんなことより、中に入るぞ。」

 「かしこまりました。」


 ライダーは軽快に馬車から降りると、門をくぐって玄関まで歩いて行った。


 「珍しいよね、ライダーが来るなんて。何しに来たの?」

 「少々めんどくさい事が起きてな、とりあえず中に入ってからだ。」


 ピアノとフォルテからするとおじさんみたいな立ち位置のライダー。ライダーも実際のところI,BとE,M同様に孫みたいな感覚だった。


 ズカズカと進む玄関に向かうライダー。その道中の花壇にそっと目を向けながらライダーは歩いて行った。


 「おい、あの木を植えたのはどこのどいつだ?」

 「どれ?」

 「あの青い花が咲いたやつ。」

 「あぁ〜、庭師の人だっけ?ピアノ。」

 「そうですね。」

 「そんなやつ次来た時にクビにしろ。」

 「えぇ?なんで?」

 「あの木を植えるにしては土が硬すぎる。あれでは木に失礼だ。」

 「よくわかるね。」

 「まぁな。」


 こんな道中でも欠かさない洞察力。流石としか言えないものがあった。


 ーーーーー


 「ふ〜さっぱりさっぱり。」


 首にタオルを巻いて、少し濡れた髪で最上階に着いたエクサー。風呂上がりに一発牛乳でもかます気満々でフロアに入ると、真剣な面持ちのS,Bとライダー、ピアノとフォルテがいた。

 

 「あれ?ライダーだ。何してるの?」

 「おう…ちょっとな。」


 なんでみんな真剣な顔なのかは全く持って見当もつかなかったが、とりあえずスタスタと牛乳を取って来ると椅子に座って牛乳を飲んだ。


 「で?なんで来たの?」

 「実はな手紙が来た。」

 「手紙?誰から?」

 「兄だ。」

 「あぁ〜!言ってたねお兄ちゃんいるって。ん?でもなんで?お兄ちゃんから手紙が来たのを自慢しに来たの?」

 「そんなわけあるか。その内容についてだ。」

 「なんて書いてあったの?」 

 「大海の大穴(ディープ)から発せられた異常な魔力についてだ。」

 「大海の大穴(ディープ)って大魔界に繋がってるところでしょ?」

 「そうだ。」

 「でもそれって何かまずいの?別に影響なさそうだけど。」

 「元々、大海の大穴(ディープ)周辺は大魔界からの魔力が常に流れ出している影響で汚染区域に指定されている。だが、それも長い目で見ると一定の量で安定しているから、近づかなければ問題という問題ではない。ただ…」

 「ただ?」

 「今回観測した魔力量は異常も異常。はいそうですかって流せるものじゃない。だから、その真相を突き止めに行く。そのために『level 666(お前ら)』に頼みに来たってわけだ。」

 「なるほど、なるほど。」

 「エクサー、髭が生えてますよ。」


 ピアノはエクサーの鼻の下についた牛乳ひげを拭き取った。


 「ありがとう。」

 

 エクサーがふとS,Bの方に顔を向けるとあまり浮かない様子で「はぁ」っとため息をついていた。


 「やっぱり私、乗り気にならないのよねぇ。大魔界に行くのって本当に危ないの。エクサーも連れてくし、ピアノもフォルテも。自分の身を守るのでも精一杯なのに…」

 「俺もこんなはずじゃなかった。まず第一にA2(あのバカ)がいると思って来たんだ。」

 「もう…どうすればいいのかしら…」


 エクサーは気になってピアノに小声で耳打ちをした。


 「ねぇ、ピアノ。大魔界ってそんなに危ないの?」

 「もちろんです。私だって行ったら殺される可能性だってあるんですから。なるだけ行きたくはないです。そもそも、そこに住む大魔族というのは地獄の悪魔と違って魔力も気性も荒く、もちろん強いです。行くのであれば、旅行や遊びではなく、戦場に行く気でないと。」

 

 そう言われるとなんだかエクサーも背筋に冷たいものが当たる感覚になった。


 「ねぇ、ライダー。僕たちだけで行くの?」

 「F,D、S,B、ピアノ、フォルテ、お前を入れた5人。それと、兄とその子供で行く予定だ。予定だというか手紙には編成メンバーと称してそう書いてある。」

 「まぁ、大魔界に行くには十分とは到底言えないけど、数で押すしかないわよね。」

 「ライダーは行かないの?」

 「一応、何かあった時のためにこっちで待機だ。」

 「そうなんだ。」

 

 エクサーは魔法でポイっと瓶をゴミ箱に投げた。


 「ライダーのお兄ちゃんって何してるの?」

 「船に乗りながら地獄の海域調査と大海の大穴(ディープ)の確認だ。」

 「じゃあ、その人達と行くの?」

 「そうだ。日にちは1週間後。指定された場所に行ってくれ。F,Dに伝えておく。」

 

 S,Bはもうここまで来たら仕方ないと割り切って、両頬を両手でペチンッと挟んで叩いた。


 「仕方ない。行きましょう。」

 「すまんな。」

 「S,Bは行ったことあるの?大魔界」

 「ん〜確か50年ぐらい前だったかしらねぇ、今回ほどではないけど行ったわ。その時もライダーのお兄さんと行ったわ。あの時はA2もいたから良かったけど。」

 「結局何だったの?」

 「なんでもなかったわ。拍子抜けよねぇ。でも忘れられないわ。あの気味の悪い空気。嫌になるわよ。」

 

 これ以上嫌な情報を注ぎ込まれても行きたい気持ちが地の底に沈んでいくだけ。そろそろいいにしてくれないかなぁ〜とかエクサーも思い始めてきた。


 「とりあえず、1週間後。頼むぞ。」

 「分かったわ。」


 ライダーは席を立ち、フォルテ、ピアノ、エクサーを呼んだ。


 「若いのに、お前たちにも無理をさせるな。頼んだぞ。」

 「うん!」

 「わかりました。」

 「分かった。」


 普段さっぱりしているライダーがこの心配。いつも通りの気分で行くわけには行かないと3人は腹を括った。


 「じゃあ、帰るぞ。」

 「あら、今日は泊まっていけば良いじゃない?」

 「帰る!」

 「フォルテもピアノも久しぶりに会えて、もう帰っちゃったらかわいそうねぇ〜。」

 

 S,Bはフォルテにアイコンタクトを送ってフォルテがそれをキャッチ。そして、いきなりお菓子を買ってもらえない子供のように地面に寝転がって暴れ始めた。


 「うあ”あ”ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 実の姉のなんとも情けない姿を若干冷たい目で見るピアノとエクサー。


 「うるせぇぇぇ!!!!分かった分かった。一日だけだぞ?」

 

 フォルテはいきなりスンッと真顔になって立ち上がると、S,Bの方を振り返って、親指でグットを送った。


 「その代わり、お前ら3人特訓な。」

 「…は〜〜い。」


 そうして、大魔界までのカウントダウンが始まった。


 ーー残り7日


 ーー終ーー



 F,Dいなくね?と思うかもしれませんがF,Dは泊まりで仕事に行ってます。

 結構前に出てきた『サクラコマチ』って言う『美装王』バネットのいる街に行ってます。バサラが動いたということもあり、少し関係のあるサクラコマチに出向いているというわけです。

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