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DeViL 悪魔生転物語  作者: オクラ
 7章 『次なる王』 ー大魔界の異常ー
167/209

 161 運が悪い


 地獄・???


 セルベロが目を開けて見た光景はどこかの洞窟の天井だった。

 頭を動かすと痛みを感じる。それに体に重量感がある。それをさらに追求していくと自身に魔力がほとんど通っていないことがわかった。


 それがわかるとセルベロの脳内に一気にバサラとの戦闘が蘇ってきた。そして、ボッカ達の安全が心配になると、頭痛をガン無視して入口に走って行った。


 ガンッ!


 セルベロは何かに頭をぶつけ、跳ね飛ばされた。


 「痛ったっ。」

 

 セルベロはぶつけた箇所を手で摩ると、そこに何があるかを確認した。よーく見てみるとうっすらとその先の空間がずれているように見えた。さらに微弱な魔力も感じる。どうやらここは結界が張られている空間だとセルベロは気づいた。


 セルベロは結界を軽く叩いてみるが壊れる気配はない。ましてや魔力のほとんど無いセルベロにはこれを打ち破る力が無い。セルベロは仕方なく、結界内のちょうどいい岩に腰をかけた。


 この空間には天井に吊るされたランプと壁の少し彫られた場所に置かれたランプが部屋を照らし、湧き水がある。それにいくつかの種類と缶詰が置かれていた。


 ここがどこかはわからないが善の心の強い誰かによるものだとセルベロは思った。

 そして、ちょうど腹も空いていたので缶詰を食べた。怒られた時はその時だと割とノー天気な心持ちで。


 缶詰を食べながらセルベロはボッカ達の無事を心配していた。というかきっと無事ではない。自分が着いた時にはすでにみんな自分の血に塗れ、動かなかったのだ。信じたくはないが死んでいる可能性もある。だが、事実を確認するまでは感情を露わにできない。どちらの可能性もある。ただいい方を信じてセルベロは自分の回復を待った。


 ーーーーー


 ーー特にすることがない。

 部屋には上記の物しかない。それに窓があるわけでもないので外の景色がわからない。この暇な状態はセルベロにとって良いものではなかった。

 暇を知れば知るほどに仲間達の『心配』とバサラに対する『憎悪』が盛り上がってくる。

 だが、それでもギリギリ保ててはいる。セルベロも部屋の中をウロウロしてみたり、ストレッチしてみたり、湧き水の音に耳を傾けてみたり、いろいろ試行錯誤を繰り返した。


 こんなことをしていると、まぁ喉も乾いてくる。湧き水から水でも飲むかと思い、入口に背を向け、水を飲んでいると、いきなり入口に張られた結界を銃弾が貫通し、結界を割った。


 「おねんねはもういいのか?」

 

 結界は割れたガラスのようにバリバリと割れ落ちる結界の先から、見覚えのある声と悪魔が姿を現した。

 

 ーーライダーだった。

 

 セルベロの脳内にはなんでライダーがいるのかわからなかった。


 「アイツ…こんな硬い結界張りやがって…」


 ライダーは徐にセルベロに近づくとセルベロの頭を触りながら、何かを観察し始めた。


 「痛みは?」

 「少し…」

 「違和感は?」

 「…無い。」

 

 ライダーはポケットからライトを取り出すと、セルベロの右目を無理矢理開き、ライトを当てた。


 「問題無いな。着いてこい。」


 ライダーはライトをポケットにしまうと、部屋の外に歩き出した。セルベロもその後をついていった。


 ーーーーー


 「イタタタタタッ!!」

 「ちょっと、動かないでよ!やりにくいでしょ!!!」

 「じゃあ優しくしてくれ!!!」

 「耐えて。」

 「無茶言うなってんの!!」


 ライダーの後を付いてセルベロがたどり着いた先には包帯グルグル巻きのボッカとそれを手当するオクチオとオレッチオがいた。


 「おっ!セルベロ起きたか!」


 ボッカがセルベロの姿に気づくと、オクチオとオレッチオも気づいた。

 そして、オレッチオは急いでセルベロの元に駆け寄った。


 「セルベロ、大丈夫?」

 「うん…」

 「よかった。」


 オレッチオの顔には露骨に安心が表れていた。


 「セルベロ、そのじいさんに一応感謝を言っておけ、助けてくれたんだ。」

 「あっ…そうなの?」

 

 セルベロはライダーの方を見た。


 「たまたまだ。たまたま通りかかっただけだ。」

 「そうなんだ。ありがとう。」

 「にしても、酷い有様だったぞ、お前達。何と戦ったんだ?と言いたいところだが、魔力の感じからしてバサラと戦ったんだろ。」

 「あの悪魔、バサラって言うのか。」

 「あぁ、あんな奴には近づかない方がいい。今の俺だって用がなきゃ近づかない。お前達が生きているのも奇跡だな。そういやぁ、なんでお前達バサラなんかと戦ったんだ?」

 「そうよボッカ。なんで戦ったの?」

 「別に俺だって戦う気じゃなかった。たまたまだった。」

 「と言うと?」

 「俺は街の見回りに行ってたんだ。そしたら息を切らして逃げる怪しい悪魔がいてな。見たことねぇ顔だったしし、なんとなく追ってみることにして、町外れでソイツを捕まえたんだ。そしたらいきなり、バサラって奴が現れてソイツを殺して、俺も殺そうとしてきやがった。」

 「確かに私たちが着いた時にボッカと一緒に切られた悪魔がいたわね。」

 「あぁ…ソイツだ。」

 「じゃあ正当防衛だったわけか。」

 「あぁ。」

 「バサラの目には、お前らが逃げてた奴の仲間に見えたのか…運がねぇな。」


 運が無いと言う言葉は的確に事実を付いた。バサラには本当にボッカ達が敵に見えていたからだった。


 「でも、よかったよ。みんなが生きているなら。」


 セルベロは笑って言った。

 実際のところ、自身が着いた時には本当にみんなが死んでいるように見えたため、この生きているという事実はセルベロの心に深く安心を与えた。


 「そうね。」


 セルベロの笑顔にボッカ達も笑い返した。みんな誰かを失うのは嫌だったからだ。


 「でも、次は負けないようにしないとね。『みんなを守るのに必要な力』も『自分を守るのに必要な力』も同じだ。力不足だった。だから強くなろう。」

 「「うん。」」

 「おう。」


 リーダーであるセルベロの言うことを3人はなんの疑念抱かずにサラッと飲み込んだ。


 「仲がいいな。まったく。」


 ライダーもこの結束力と信頼は自分が見習わなければいけない部分であると思った。


 「でも…これだけは忘れないようにしよう。」


 この言葉を皮切りに一気にセルベロの空気が変わった。怒りによる威圧感を放ち始めたのだ。


 「僕たちを危険に晒した者を許すな。誰かの危機はみんなの危機。誰かの復讐はみんなの復讐だ…」


 セルベロに宿っていたのは役目を終えるまで消えることのないバサラに対する『復讐心』。3人はそんなセルベロと同じ思いを胸に宿していた。


 「でも、ひとまずは治療に専念しよう。」


 4人はスッと先まであった『復讐心』を仕舞い込んだ。それよりも万全の状態に戻ることの方が優先度が高かったからだ。


 セルベロ達が話をしていると、エクサーとクーが帰ってきた。


 「ライダー買ってきたよ…あっ!セルベロ、起きたの?」

 「あぁ、エクサー。すまなかった。巻き込んでしまって。」

 「いいよぉ〜。みんな生きてるんだし。」


 エクサーとクーは手に持った紙袋をライダーに渡した。

 

 「クー、大丈夫?」

 「ちょっと鈍いですけど…大丈夫です。」


 ライダーは2人に買ってきてもらった物を几帳面に綺麗に並べた。ライダーはガンスミス。こう言うちょっとしたところにもこだわりを見せる。

 ライダーは陳列をしながら、クーに話しかけた。


 「嬢ちゃんは魔力効率が悪い。戦いに慣れてないだろ?」

 「…あんまりです。」

 「まぁ、経験が無いならいいんだが…無いなら無いなりの覚悟を持って生きることだ。今回みたいな時、いくらいい血統だからってこうなる。ここは下界じゃない。地獄だからな。」

 「…わかってるです。」


 ちょっとだけ自分の非力を悔やむクー。その顔は感情に連動するように少しだけ落ち込んでいた。

 

 「こ、これから頑張ろうクー!ドラギナもいるし!」

 「そうですね…」


 ライダーは食材を集めると、料理を作り始めた。


 「お前ら、治ったら早く帰れよ。ここで7人がヌクヌクしてられる程の余裕は無い。」

 「わかった。」


 動けるようになったら帰らされると思っていたが、一応、治り切るまでは待ってくれるらしいライダーは口調こそ強いものの面倒見の良さが隠しきれていない様子だった。


 「あっ、そう言えばライダー。玄関の郵便受けにこれ入ってたよ。」


 エクサーはテクテクとライダーに近づき、一通の手紙を渡した。


 「あぁ…そこ置いとけ。」

 「誰から?」

 「ん?…兄からだ。」

 「え!ライダー、お兄ちゃんいたの?」

 「月一で写真を送ってくるんだ。」

 「へぇ〜。会ってみたいなぁ〜。」

 「船で生活してるから中々会えないぞ。ここ数十年は大地を踏んで無いんじゃ無いか?」

 「な〜んだ。」

 「ほら飯できたぞ。」


 ライダーはエクサーと話しながらも着々と料理を作り、あっという間にオムライスを作り上げた。


 そして、7人は黙々と口に運んだ。


 ーー終ーー


 

 ライダーがセルベロを迎えに行った時、アイツと言ってましたがそれはI,Bに向けて言った言葉です。

 あそこに結界を張ったのはI,Bで、本当はいる予定だったんですが、人数が多いのは嫌ということで勝手にどっかに行ってしまいました。

 なので、この場にI,Bはいませんでした。

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