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DeViL 悪魔生転物語  作者: オクラ
 7章 『次なる王』 ー大魔界の異常ー
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 159 孤毒の蝶


 地獄・ペペル外れ


 「…」


 オレッチオのいるであろう場所にたどり着いたセルベロ。途中でオレッチオの魔力が急速に衰えたのを感じ、急いで向かってきたセルベロは息切れをしてたどり着いた。


 しかし、今となっては息切れなどはもうどうでもよかった。


 血だらけで倒れるオクチオ、オレッチオ、ボッカそして、なぜかいるエクサーと見知らぬ少女(クー)

 その全員が血に塗れピクリとも動かない。ただ辺りには血生臭さだけが残るだけだった。


 そんな中でバサラは渋い顔でタバコを吸っていた。

 セルベロはそのバサラの様子と、右手に持った血に濡れた『打刀・孔雀蝶(くじゃくちょう)』を見て、一気に怒りを見せ、それにより誘発された殺意が腹の底から決壊したように込み上げてきた。


 「『毒竜』…」


 セルベロはバサラに向かって4匹の毒竜を向かわせた。バサラはこれに気づくと、タバコを目一杯吸い切ると残りを地面に吐き捨て、孔雀蝶を振るった。


 「『乱切(らんぎ)り』」


 バサラは刀を乱れたように振るう。一見乱れたように見えるこの太刀筋。しかし、この太刀筋は素人ではなく、地獄の中でも最も刀使いに優れた者の太刀筋。バサラの刀は毒龍を木っ端微塵に切り刻んだ。


 しかし相手は液体。個体のように切って終わりではなく切り刻んだ一部の液体が霧のように雨のようにバサラの皮膚に付着し、体を侵した。


 「チッ…」


 バサラは自身とセルベロの相性が悪い傾向にあることを理解し次の手を模索しようとした時、セルベロが毒に乗ってこちらに向かってきた。しかも、セルベロは口から息を吐きながら来ており、それがあたりに毒の霧を発生させていた。


 バサラは体内を守り、刀についた毒を振り払うと、静かに目を瞑った。そして、セルベロが一定の距離まで近づくと目を見開き、セルベロを一瞬でぶった斬った。


 一見するとバサラの勝ちのようにも見えるが、それが浅い思考であることはバサラが一番わかっていた。

 バサラが勢いよく振り返った瞬間。バサラを飲み込む毒の濁流が襲ってきた。


 あの一瞬でセルベロを切ったバサラだったが、手応えが全くと言っていいほどになかった。まるでゼリーを切ったような感覚だった。

 それもそのはず、怒りでリミッターの外れたセルベロは能力の限りを尽くし、全身を毒そのものにし、実態が捉えられなくなっていた。


 濁流に揉み込まれたバサラは毒に侵されたにもかかわらず、顔色を全く崩していなかった。口内に残った毒をまとめ、地面に吐き出すと、セルベロを睨んだ。


 「次から次へと…虫みたいに集まってくるな…」

 「…お前がボッカたちを()ったのか…?」

 「あぁ…ゾロゾロと集まってきたからな。」

 「…またか(ボソッ)…またか…またか…またか…またかァァァァァ!!!!」


 セルベロは頭を掻きむしりながら怒号を発して叫んだ。


 「また…家族が…また…またァァァァ!!!どいつもこいつも僕から大切な者ばかりも奪っていく!!!!どれだけ、僕を苦しめればいいんだ!!どれだけ、苦しまなくちゃいけないんだ!!!」


 セルベロは泣きながら激昂した。

 家族と呼んだボッカ達のあの様子。分かりあったエクサーのあの様子。クーパーやナソを失った時の感情が回帰して、セルベロの心を打つ。


 セルベロの感情に合わせて毒があたりに巻き散る。バサラはそれを刀で軽く弾いた。


 セルベロは悲しみと怒りに囚われた。無意識に両手で両目の下の皮膚を下に引っ張ると、皮膚を引きちぎった。流れ出す血。白目を剥いて叫びながら涙を流したセルベロの叫びと共に身体中から放出された毒がセルベロを卵の殻のように包み、叫びを完全に遮断した。


 先とは打って変わって、時が止まったような静寂。と、次の瞬間、セルベロを包んだ毒が一気に解かれると、中から溜まった叫びが一気に解放されたように辺りに響き、中から、紫色の毒のローブを着て、毒でできた蝶の羽が背から生えたセルベロの姿があった。


 セルベロは感情を吐き切ったように静かにバサラを睨んだ。


 『孤毒の蝶(こどくのちょう)

 セルベロがエクサーとの戦闘時に発現した形態。

 この形態で扱う毒は本来よりも数段強化され、神経作用から解毒まであらゆる性質の毒を魔力消費少なく扱えるようになる。


 バサラはこのセルベロを見て、美の感性を刺激された。それほどにこの状態のセルベロは神聖さを醸し出していた。


 ーー終ーー


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