156 悪
地獄・デルフォース城
「ふ〜っ…フフフ…僕の負けだ…」
ボロボロの城の壁にめり込み、頭から血を流したキキガノはナールガにそう告げた。
その目線の先にいるナールガはこれを聞いて拳にかかった力と言う拘束を解いた。
「君を倒すには僕では魔術がなくてはないようだ。さすが…。」
「俺はお前に怒りがあるわけでもない。帰れ。」
「はぁ…でも楽しめたよ…いいエンターテイメントだった。」
キキガノはめり込んだ壁から抜け出すと、地面に足をつけ傷を癒した。
ナールガは後ろをキキガノに向けた。
「でも…やっぱりわかったよ。」
ナールガは足を止めた。
「君は王には向かない。力があることは認めるけど、それ以前に足りないものが多い。力を手にして漫然とそれを行使する君は世界にとっての悪だ。」
ナールガは指図されたことによる怒りでグッと力強く両腕を握った。
「…でも安心してくれ。世界は悪と見做したものを排除するシステムが生物の体のように備わっている。それが世界や真理、法則を守るもの正義と言うものだ。だからきっと君はそれを請け負った者に殺られるよ。確実にね…」
ナールガは怒りが限界に達し、勢いよく振り向きキキガノのいる場所に向かって一直線の衝撃波を放ち、直線距離にして2km程度を衝撃波で消し飛ばした。
巻き上がった砂ボコリ。それがだんだん晴れるとそこにはいたずのキキガノはいなくなっていた。
「…逃げたか…」
キキガノはギリギリで攻撃を避け、どこかに姿を消したようだった。
ナールガはそれを知って、キキガノの魔力の道筋を辿れば見つけられるにも関わらず、それをすることはなく、見逃すことにした。
戦闘によって何故壊れないのか不思議なほどの崩壊度を見せる城。風がよく通る薄暗い城の中をナールガはただ歩いて行った。
ーーーーー
足を組んで椅子に座るナールガは誰かが来るのを待っていた。
すると、こちらに向かってコツコツと鳴る足音が聞こえてきた。
「来たか…」
「遅れてすまない。」
ナールガの前に姿を見せたのはプレズデントだった。
プレズデントは来ていたマントを影で作ったコート掛けに掛けた。
「封印部位の解除は順調かな?」
「いいや、やはり完全には解除しきれない。今、俺の魔力で中和しているが、さすがは天使長の封印簡単にはいかない。」
「しかし、それをしなくては君が封印部位を吸収するところにすら至らない。」
「わかっている。」
「それに吸収しなくては残る封印部位の場所もわからない。君が完全な王として君臨するにはそれが必要なんだ。」
サタンの封印部位は全部で5つ。そのどれもに天使長の施した強力な封印が貼られている。そのため、吸収するためにはこれを解除するには魔力の中和を必要としていた。
だが、これが大変に難しかった。一定の魔力濃度を持ち合わせていないとそもそも中和にすら至らない。そのため、プレズデントでは歯が立たず、ナールガが魔力で中和していた。
加えて、吸収することができれば繋がりあった残りのサタンの封印部位の位置が感覚的にわかるようになる。これは、現在『最終監獄』にいるボーパロットとの面会によって明らかになった。
つまりは封印部位の魔力中和が完了するまでは何もできないと言うことだった。
「気長に待つとしようではないか。中和が完了し、吸収できればそこからは忙しくなる。それまでに十分な気力を養う時間だと思って楽しんでくれ。」
「あぁ…」
ナールガは笑みを浮かべると右手を強く握った。
『王』と言う絶対的な力を手に入れるのが楽しみで仕方なかったのだ。
ーー終ーー
一応、ナールガ割と冷たいような感じがしますが、強い奴は割と認めてます。
なのでキキガノも見捨てたと言うわけです。
ナールガとしてもA2と同等ぐらいでよくわからん悪魔の認識なので、戦うのは割と楽しみにしています。
A2とももっと打ち解けレバいい関係が築けそうですけど…素直になれないんでしょうね…思春期かな?