15 絶体絶命
ラーバルはいなくなったあと、活動停止中のロイドというギャング幹部と手を組み、エクサーに復讐することを、ロイドは自分が復権することを望んでいた。
そして、ロイド、ラーバルはエクサーと戦闘。クーとドラギナはロイドの集めた部下と戦闘。クーとドラギナは余裕の勝利を収め、エクサーを探し始めた。
地獄・マザーシップ(図書館)
「オラッ!」
ロイドの拳はエクサーの腹部を狙ってヒットするところだった。
「クッ、」
エクサーはギリギリで拳を防いだ。
エクサーはラーバル、ロイドと戦っていた。しかし、状況は芳しくなく逃げながらの防戦一方だった。近距離をロイドが担当、遠距離はラーバルが担当し、隙を見てはラーバルがエクサーに魔法を飛ばしてきた。
ロイドとラーバルの攻撃を同時に捌き切ることはできず、数十発は被弾しており、エクサーはすでにボロボロだった。
「はぁ!」
ボロボロなのは肉体だけでは無かった。強化の乗った攻撃に合わせて、それを守れるだけの『バリア』を発動するということはまだ発展途中のエクサーの魔力を大幅に削っていた。限界の近いエクサーの『バリア』の強度は段々と劣化し、ついに魔力の底が見え始めた。
そこをロイドは見逃さなかった。ロイドは瞬間的に手をムチのようにしならせ、エクサーに向かって、打ち込んだ。
攻撃を喰らい遠くに吹っ飛び、壁にぶつかり、地面に倒れた。
地面に倒れ込んだエクサーの口からは血が流れ出て、意識は朦朧としていた。
今まで見せなかったムチの攻撃。街の路地裏でホームレスを殺した時の攻撃は手をムチにして素早く打ち込んだ攻撃だったということをラーバルは理解した。
ロイドは魔術を持っていた。その能力は体の好きな部分をムチにすることのできる魔術だった。
「お前、こんなのに負けたのか?」
「恥ずかしながら。」
勝ちを確信した2人は談笑を始めた。
誰がどう見てもエクサーの負けだった。エクサーは倒れながら傷を治してはいるが、最初に比べて治りは圧倒的に遅く、限界の一歩手前だった。自分の心臓の音が小さくなっていることをエクサーは感じていた。このままいけば意識を失う。そうなればいよいよどうしようもなくなる。そうならないように意識を繋ぎ止めた。
「最後にお前が決めろ。」
「でも、もうこれ以上は、」
「は?もうちょっといけるだろ、どう見ても。」
ラーバルにとって予想外の一言だった。
ラーバルから見てエクサーはもう死一歩手前だった。これ以上攻撃すれば本当に死んでしまう。生捕りができなくなってしまう。
「いやいや、あれ以上は死んじゃいますって。」
殺すことが目的ではない。という意味を含ませロイドに言った。
すると、ロイドの顔色が急に変わり、ラーバルの後頭部を掴み勢いよく地面に打ちつけた。
ラーバルは鼻血を出した。
「お前、何甘めぇこと言ってんだ?できるんだよ。俺ができるって言ったんだから。それともなんだ言葉がわからねぇか?」
ロイドは反抗したラーバルにキレていた。そして何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も、ラーバルの顔面を地面に打ちつけた。地面と骨のぶつかる鈍い音が何度も部屋に響いた。
ラーバルの顔面はもうグチャグチャだった。顔面のあらゆる場所から血が溢れ出て、打ちつけた場所には血の水溜まりができていた。ラーバルは途中から痛みを感じていなかった。
ロイドは血まみれのラーバルを無理やり立たせ、エクサーの方に向かせた。
「やれ、その代わり加減しろ。もし殺したら、わかってるな?」
ラーバルはもう前が見えていなかった。加減もできる気がしなかった。ただ魔法を撃つことしかできなかった。つまり魔法を打てば、エクサーは死に、自分も死ぬことだけを確信していた。
ラーバルは見えていないが、ロイドは満面の笑みを浮かべていた。
ロイドは思った。自分の浅はかな気持ちが今の現実であり、素直に負けを認めていれば、平和だったのだろうと。しかし、もう何もかも遅かった。後悔などもう意味がなかった。
エクサーの意識も、もう底に着きそうだった。
消えゆく意識の中でA2から渡された魔石を思い出した。もう今のこの状況で戦況を変えられるのはこれだけだった。ゆっくりと残る力でポケット中での袋包みをあけ、魔石を握った。
しかしちょっと握っただけでは、魔石は壊れなかった。それでも握った。全力で、強く。
パリンッ
魔石が割れた。
エクサーの意識は底についた。
ーーーーー
ドックンッ
エクサーの心臓は脈を打ちっていた。だが、それも少しずつ、少しずつ小さくなっていった。
ドックンッ
その時、一際大きな脈を打った。
ーーーーー
ロイドはいきなり恐怖した。
その恐怖はどこからともなく現れた。しかし、それがなんなのか分からなかった。まるで恐怖というものだけが急に一人歩きしてきたかと思うほど、それがどこからきているのか分からなかった。
恐怖はどんどん、どんどん近づいてきているように感じた。もう目に前にいるかのような。
ロイドは気づいた。この恐怖はエクサーから感じているのだと。
すると、エクサーがゆっくりと立ち上がった。それも関節を曲がらない方に曲げながら、グニャグニャと。
そして、エクサーは上を向き、顔面の穴という穴から黒い液体を上に吐いた。黒い液体は止まることを知らず、永遠と吐き出され、それと同時に、多くの悲鳴、断末魔が聞こえ出した。
ロイドは思わず、耳を塞いだ。聞くに耐えぬ声、1秒でも聴いていればどうにかなってしまうほどだった。
黒い液体はエクサーを飲み込んだ。
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!」
一際大きな、悲鳴纏し絶叫。エクサーの黒目が割れた。
悲鳴が消え、黒の液体の中から出てきたのは、顔の左半分以外全身が黒く、右腕が黒く何十倍にも大きく肥大したエクサーだった。しかしそれは見える顔半分だけがエクサーなだけで、エクサーと呼べる者では到底なかった。
ーー終ーー