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DeViL 悪魔生転物語  作者: オクラ
 7章 『次なる王』 ー大魔界の異常ー
158/209

 152 出力値


 地獄・バステカン城


 エクサーは自身が制御できるギリギリまで魔力出力を上げる。その結果、体に現れたものは翼と尾。加えて張っていた筋肉が光沢を持った黒く硬い皮膚に、無理やり圧縮され、よりスタイリッシュな体つきになっていた。

 これほどの負荷を受けているためか、黒い髪の毛のところどころが白い髪の毛が入り混じっている。


 「やればぁできるじゃねぇか。いいねぇ。」


 フルシアンテはこの様子に少しばかり興奮しているようす。

 だが一方のエクサーは激痛に苛まれていた。本来、膨張しているはずの筋肉を硬い皮膚下に無理やり抑えこんでいるせいか、圧迫によって骨がボキボキに折れている。生憎それが、全自動(フルオート)の回復魔法によって、ほとんど無限に再生を繰り返し、また折れるこのループを繰り返しているため、指一本でも動かしたくない状態だった。


 「見たところ、出力を数値化すると半分よりちょい上…55%ってところか?いいんじゃねの、こっから…もっと上げなきゃだからなぁ!!!」


 フルシアンテは一切の予備動作が認識できない速度で、いきなりエクサーの懐に潜り込むと勢いよく腹をぶん殴った。

 エクサーは勢いよく吹っ飛び、地面に転がった。


 「〜〜ってぇなぁ。」


 エクサーの硬い皮膚は流石にフルシアンテの拳にも痛みを感じさせた。


 (動かなきゃ…)


 エクサーは心中で体に言い聞かせているものの体が痛すぎて動けない。体がこれ以上の痛みを感じさせまいと痛みに怖気付いているのだ。


 フルシアンテはポケットに手を突っ込んでエクサーの方に歩いてきた。


 「はぁ…体が追いついてないらしいな…じゃあ早く適応しろ。魔力を練って適応しろ。痛みに耐えられる体になれ。成長期(クソガキ)なら成熟したやつよりは簡単だろ?優しく5数えてやる。立て。5…4…3…」


 刻一刻と進むカウントダウン。だが、エクサーは思った以上に早く立ち上がった。


 「間に合ったか…適応という名の成長。一見、自然の原理に逆らったようにも見えるが、これは人間にはできない、魔力を持った者の特権だから心配するな。」


 エクサーは今までに取ったことのない構えを取り、一瞬でフルシアンテと距離を詰めた。だが、加えようとした攻撃はフルシアンテに止められた。


 「予備動作が大きすぎる。それじゃあ読まれるぞ。」


 フルシアンテはエクサーを蹴り飛ばす。そのエクサーに向かって『インフェルノ』と『ボルト』を掛け合わせた魔法の球体を勢いよく握りつぶし、右手に纏った。それをそのままエクサーに追いついて、叩き込もうとした。エクサーはそれを察知すると、右手に魔力を大量に流し、右手同士がぶつかり合った。魔力同士の大きな衝突によって火花が大きく散り合う。


 「それでいい。魔力は魔法の源。それ自体の操作は難しいが、魔力を扱えれば魔法の何倍もの力だ。お前がこれから戦う奴らは魔力で押し切ってくるぞ。」


 エクサーは足に痛みを覚えた。下を見ると返しのついた影のようなものがエクサーの足に刺さっていて、動けなくなっていた。


 「さぁ、どうする?このままだとやられ…」


 エクサーはこれを超高出力の魔力放出で簡単に解いてしまった。フルシアンテはバク転をしてエクサーと距離を取る。


 「いい出力だ。上がったな。」


 ーーー現在のエクサーの魔力出力・約65パーセント(+10%UP)


 適応とはすごいものだ。先まで破壊と再生を繰り返していた骨が、完全とは言わないものの耐えられるところまで来ていた。


 バリバリバリッ!!!


 するとエクサーの周りにバリリと音を鳴らす小さい黒紫の稲妻が現れ始めた。


 「…!?」


 フルシアンテはこれに驚いた。

 この小さな黒い稲妻は漏れ出した魔力が形を変えたものであり、これを発生させるのには先ほどよりも高い魔力出力を出さなくてはならない。つまり、エクサーはここで65%程度だった魔力出力をさらに上げたことになる。


 (コイツ…死にてぇのかぁ…!?)


 だが、ちょっと上げたというわけじゃない。フルシアンテが驚くほど急激に上昇させたのだ。


 ーーー現在のエクサーの魔力出力・約80%(+15%)


 いきなりこれほどの上昇。いくら適応したエクサーとは言え、このレベルまでいきなり上げるのは、明らかに体が追いついていない。これでは(エクサー)が耐えきれない。


 ーーー現在のエクサーの魔力出力・約85%(+5%)


 これ以上、上げないほうがいいことはエクサーもわかっていた。だが、この凄まじいほどの出力まで無理やり到達させた理由はもちろんあった。


 黒紫の稲妻はエクサーの周囲を抉り、おまけに嵐を予感させる衝撃波もおまけで引っ提げてきた。


 〜〜〜〜〜


 「まさか…君の方から来るとは…それも無理やり。」

 「まぁね。なかなか君が会ってくれないからこうするしかないかなって。」


 何も無い真っ白の空間。

 そこに座っている影と堂々とあぐらをかくエクサー。


 これこそがエクサーの狙い。

 エクサーが爆発的な魔力出力まで到達した理由は無理やり悪魔を進行させ、もう一人の自分(ドッペルゲンガー)に会うことだった。


 「本当は君が弱った瞬間に会おうと思ってたんだけど…君の方から来るのは想定外だったな。」

 「会ってくれないほうが悪いでしょ。」


 今日のエクサーの態度は大きかった。何やら自身がありげだった。だが、もう1人の自分(ドッペルゲンガー)はこれが気に食わなかった。仮にもただの人間であるエクサーが力のある自分に大きな態度を取ることにムカついていた。


 「何しに来たんだい?主導権でも渡してくれるかい?」

 「いや…話を付けに来た!!」


 エクサーの堂々たる宣言。

 もう1人の自分(ドッペルゲンガー)はこれにさらに怒りを示す。その証拠にもう1人の自分(ドッペルゲンガー)を構成する影が一瞬、燃え上がった炎のように大きくなった。


 ーー終ーー


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