表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
DeViL 悪魔生転物語  作者: オクラ
 7章 『次なる王』 ー大魔界の異常ー
157/210

 151 弱点


 地獄・クリスト城(庭園)


 「ってことで、魔力操作の大御所に来てもらいました!E,M頼んだよ。」

 「えぇ!丸投げッスか!相変わらず人使いが荒いッスねぇ。」


 ここはクリスト城の庭。

 そこにA2、エクサー、E,M、それについて来たI,Bが集まっていた。


 「いやいや、かなり適任だと思っているよ。エクサーはまだまだ子供。だから、魔力操作に関しては甘いんだ。これは昔からのエクサーの弱点だしね。まぁ、元々は人間。魔力に触れて生活している時間の方が短いから仕方がないといえば仕方がないけどね。」

 「でもなんで俺なんすか?魔力操作ならベーちゃんでもよかったじゃないッスか?」

 「単なる魔力操作の話なら別の誰かでも良かったんだが、今回E,Mに頼んだのは精密操作の部類に入るからだ。」

 「あぁ〜そういうことッスか。」

 「君の魔術『操骨』では操作する骨一本一本に魔力を流して操作する。物体を形成するのであれば。なおのこと骨一本一本を気にかけて操作する必要がある。こんなことできるのは地獄にはそうそういない。ということで精密操作のプロフェッショナルに頼んだわけ。」

 「わかったッス!!」


 仲良さそうに喋るE,MとA2。I,Bは庭に置かれた大岩の上に座り、何やら髪を風に乗せボーッとしている。エクサーはと言うと、もう1人の自分(ドッペルゲンガー)と喋ったあの記憶がまだ心に釘を刺しているようで、気がかりな状態になっていた。

 でも、このモヤモヤを晴らす方法が1つしかないことも分かっていた。それはもう一度、もう1人の自分(ドッペルゲンガー)と対話をすることだった。

 

 危険ではある。

 もしかすると、もう1人の自分(ドッペルゲンガー)の言っていたように主導権が完全に無効に移る可能性もある。というかその可能性は次会った時の方がよっぽど高い。

 だが、これと同時になんとかできるような気もしていた。これが赤の他人ということであれば、苦労はするだろうし、無理な可能性も大いにある。しかし、これはそうではない。自分と自分の対話なのだ。少なからず共感し合う点も他人よりも遥かにある。必ず落ち度があるはずなのだ。

 だから、エクサーはもう一度、悪魔進行化(あの状態)になる必要がある。そこで、白黒はっきりさせることを決めた。


 エクサーは深呼吸をすると、キリッとした目でE,Mと向かい合った。


 「おっ!やる気ッスね!とりあえず、戦いながら教えるんでビシバシ行くっすよ!!」


 E,Mはこれにワクワクして、少しだけ見下ろすようにエクサーを見た。


 「お願いします。」

 「まずは、全身に余すことなく魔力を回してみてくださいッス。」


 エクサーは目を瞑り言われた通りに魔力を全身に流した。体がじんわりと温かくなっていった。


 「できた…」

 「じゃあ、今の状態をキープして戦うッス。俺も負けないようにするんで安心して胸に飛び込んできてもらって問題ないッス!」

 「分かった。」


 エクサーは強く踏み込んで距離を詰めるとE,Mに攻撃を始めた。


 ーーーーー


 「お隣いいかな?」

 「…どうぞ…」


 A2は2人を見ながらボーッとして岩の上に座るI,Bの横に立った。


 「…エクサーに何か釘でも打った?」

 「?意味がわからないな。何かの比喩かな?」

 「そう…感覚的にエクサーの動きが、私たちが散歩に行った前と後で変わった。あれは感情に左右されてる気がする。」

 「分かるのかい?」

 「…予想は予想でしかない。でも事実動きに滑らかさがないのは事実。」

 「私が何かしたわけではない。ただ…エクサーは今、自分を理解しようとしている。羽化しようとしている蝶はとても敏感なんだ。今のエクサーはそれと同じ。下手に触らないほうがいいのさ。」


 そう言うとA2はワープホールからアイスキャンディーを2つ取り出すと1つをI,Bにあげた。


 「…ありがとう。」


 そうして2人は戦うエクサーとE,Mを見てアイスキャンディーを仲良く食べた。


 「ところで…」

 「ん?」

 「あなたがエクサーに肩入れする理由って何?」

 

 A2は笑った。


 「ッハハ!そんなもの私に必要だからさ!」

 「どう言う意味?」

 「時が来れば分かる。その時のお楽しみだ。」

 「…あなたって本当にわからない。」


 ーーーーー


 E,Mがエクサーとの蹴り合いを制し、蹴り飛ばした。エクサーは体をクルッと回して着地をしてすぐさま、構えをとった。


 「いいッスねぇ、安定してるッス。」


 E,Mはエクサーを褒めた。そのぐらい飲み込みが早かった。

 だが、エクサーはこれに嬉しがる様子はなく、それどころか真剣な顔をしていた。これを集中と取ることもできるが、エクサーが集中している中身は決してE,Mとの戦いに向けられたものではなかった。

 エクサーは自信を悪魔進行化(あの状態)に戻す瞬間を伺っていた。回数が少ないとは言え、経験は蓄積されている。後はその扉をこじ開けるのみ。


 エクサーは全身に隈なく魔力を流すことを忘れないようにして、一気に魔力を放出。悪魔進行化(あの時)の感覚を呼び起こし、一歩一歩とそれに近づける。


 「はぁっ!!」


 エクサーを中心として巨大な魔力の柱が天高く上り、空を覆っていた雲を消し飛ばした。

 エクサーは右手を開閉したり、腕や足を見て自身の状態を確認した。


 「流石ッスね!魔力を十分に流した状態で安定してその状態を維持、完璧ッス!」

 

 E,Mは魔力操作がミルミル上達し、変身まで行ったエクサーを拍手しながら褒めた。


 「じゃあ、俺も本気で行くッスよ!」


 E,Mは四股を踏むように大きく右足を地面に叩きつけた。すると、地面からわらわらと出てくる骨。それが竜巻に揉み込まれた瓦礫の暴れると、E,Mの体を巻く骨の龍へと変化した。


 「エクサー、俺に追いついて来れないと再起不能まで追い込んじゃうッスからね。魔力出力を上げるッス!」


 E,Mは体に身体強化および防御魔法をかけると、サーフボードに乗る容量で骨の龍に乗り、エクサーに向かって行った。


 「ふぅ。」


 エクサーは向かってくるE,Mを前に目をつぶって息を捨て、大きく息を拾った。そして勢いよくE,Mと衝突するのだった。


 ーーーーー


 「なんで、まだ続けるの?エクサーの魔力操作はできたでしょ?」

 「まぁ見てなよ。そのうち粗が出てくる。」


 A2とI,Bの2人は6本目のアイスキャンディーを食べて2人の戦いを見た。

 

 ーーーーー


 (足りない。)


 エクサーは力を使い出したE,Mを相手するのに苦労していた。悪魔進行化して、更なるパワーを得てしても感じざるを得ない縮まらない距離を感じてしまう。それに魔力操作も油断をすれば感情に流され疎かになってしまう。E,Mに対する注意と魔力操作に対する注意、これらが均等になるように思考の天秤を使うのは大変に難しいことだった。


 エクサーは魔力出力を上げた。体はより悪魔的な姿へと移行した。


 「ほらよっ!!!」


 E,Mは骨の龍の尻尾を掴み、それを鞭のようにしてエクサーは弾き飛ばした。だが、先ほどのエクサーとは違ってかなり打たれづらいようで、想定よりも威力を殺されてしまった。


 「やるッスねぇ!じゃあ次は数を増やして思考を妨げちゃうッス!」


 E,Mが手を前に出すと骨の龍は空中でピタッと動きを止めた。


 「分解…再構築!!!!」


 E,Mは骨の龍をバラバラに崩すと、丁寧に丁寧に小さな骨同士を細かくくっつけ、無数の骨の魚を作った。


 「ちっとばかり出力あげないと厳しいかもしれないッスよ。」


 そんなことはエクサーもわかっていた。だから、数段飛ばしで出力を上げようとしたその時。いきなり、体の自由が鈍くなったのだ。

 動きはする。だが、これ以上出力を上げると暴走する可能性がある。


 エクサーは咄嗟の判断で魔力出力を日常生活程度まで下げてしまった。そして、悪魔進行化が解除されたエクサーに向かってくる骨の魚はエクサーの体を食い破って、通過していった。


 ーーーこれが悪魔進行化の弱点だった。


 ーーーーー


 時は現代。フルシアンテとエクサーの戦闘に戻る。


 地獄・バステカン城


 悪魔進行化の弱点は、長期戦におけるボルテージの上昇や感情の起伏を起点とする魔力出力の爆発的な増加による暴走。しかも、なぜか、その際にもう1人の自分(ドッペルゲンガー)が出てこない。つまりは完全に意識を置き去りにした暴走になってしまうのだ。


 「いいぜぇ、そのまま、そのまま出力を上げて来いよ人間上がりの坊や。たとえ暴走しても負ける気なんてしないからよぉ。」


 しかし、エクサーは渋った。それが迷惑になるという優しさの下。


 「上げねぇならよぉ…上げねぇと死ぬ状況を作らねぇとなぁぁぁ!!!!!!」


 フルシアンテはエクサーを軽々とボコボコにぶん殴った。自身の制御できる悪魔進行化による肉体強化が入っていても、それを最も(いと)も容易くボコボコにできる力をフルシアンテは持っていたのだ。


 エクサーは地面に倒れ込んだ。


 「お前の前にいるのはよぉ、五芒星(ペンタグラム)の1人だぜ?A2とラズロは緩いかもしれんが、俺はそうじゃあねぇ、飽きたらぶっ殺す。いいな?」


 この言葉には冗談の一切無い重みが備わっていた。


 そして、エクサーは自分が制御できるだけのフルスロットルで魔力を流し、限界ギリギリの悪魔進行化を作り上げた。


 「そう、それでいい!!」


 ーー終ーー


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ